番外編 家族旅行
だいぶ間が空いてしまって・・・すみません
突然の異世界召喚から始まったこの生活も気づけば100年。
慣れない世界で仕事に育児に駆け抜けた100年。
ここらでちょっと休憩したい
「では、真下家第360回目の家族会議始めます!」
「「はい!!」」
「えー、先日ついに100年勤めた職場を定年退職しまして、退職金もしっかりもらい、今我が家は・・・家計がかつてない程に潤っております!!」
「「よっしゃあぁぁぁぁ!!!」」
「なので!ここはゆっくり家族旅行はどうですか?」
「「賛成!!」」
真下家、世界旅行に行く。
帰宅未定の長期旅行を予定しているため、自宅管理を魔獣研究者で勇者の玄孫タニーに依頼した。タニーは、勝手知ったる他人の家の如く着任早々寛ぎ、さらには遊びに来た亘のママ友である魔族たちとの輪にもしれっと入り込みちゃっかり研究していたりと中々に尊の遺伝子を感じるマイペースな男だ。
この旅行においてやっておきたい事が亘にはあった。それは各国で眠る友人たちの墓参りだ。
ニルギルとキームンは嫁いだ魔族国に埋葬されているが、出身国にも立派な墓がある。友人たちへの近況報告もこの旅の大切な目的の一つだ。
まず目指すは西国オレジン。ニルギルの母国だ。
この100年で大きく変わった事の一つに移動手段がある。以前までは陸路を馬車で移動が主だったが、ニルギルとキームンが魔族国に嫁ぎ交友関係を築いた事で、移動に空路が加わった。
そんな訳で一行は今、最先端空の旅『飛行魔獣』に乗って優雅な空の旅を満喫している。
ランクによって料金が違う魔獣を選び、その背に設置されたドーム型客席に乗り込むスタイルが主流だ。真下家は少しでも交通費を浮かそうと客席がついていない玄人向けの魔獣直乗りタイプを選んだ。客席がない分軽いので移動が早くさらに安い。だがいかんせん操縦が難しい。
しかしそこは真下家、シュウが容易に魔獣を懐柔しさらには触手で居心地最高な客席も用意する。精霊に愛されるセイは風の精霊に頼み追い風で移動時間短縮を図る。
通常より半分の料金と3分の1の移動時間で無事、オレジンに到着する。
大賢者を育てたここオレジンには、世界一の蔵書量を誇る王立大図書館がある。四方を囲む本棚は圧巻で観光名所でもある。
「おぉぉぉー・・・こりゃまたすごいな。見渡す限り本だらけ」
「魔族の本もあるよ」
「あ、向こうに精霊関係がある。俺ちょっと読んできていい?」
「いいよ。俺は歴史のとこいるな。他にどんな召喚者とかいたのか気になる」
「じゃあ、僕は・・・ビジネス書のとこいるね」
それぞれが気になるジャンルに向かい、一旦別行動となる真下家。亘は自分や尊以外の召喚者が過去に存在したのかという好奇心で歴史書棚を見ていく。その中で見つけた『英雄列伝』。
読んだ結果、尊以外の召喚者らしき人物の記載はなかったが、
おぉー・・・尊君やニルギルさんたちの事がなんかいい感じに書いてある
いやいやいや、尊君はアッサムさんの為だけに頑張っただけで、この世界の発展はもはやおまけみたいなもんなんだけどな
いやいやいや、ニルギルさんが飛行経路確保したのは単身赴任した旦那さんに1秒でも早く会いたいだけだったのに
いやいやいや、キームンさんが通信技術を上げたのは常に旦那さんを監視する為だったんだけど
だいぶ脚色された友人たちの伝説を知ることは出来た。内情を知る関係者の一人亘は静かな館内で爆笑したいのを必死で堪える。
思わぬ収穫を得た亘はその後合流したシュウとセイと共に書店でこの本を購入した。良い買い物に心が踊る一行はそのテンションで墓参りに行き、懐かしい昔話を交えつつ脚色された活躍内容を報告する。
他、ニルギルの夫や娘たちの現状や、空路運営状況等を話終えると自宅からこの為に持ってきた盃を置き、酒をつぎ桜の花びらを浮かべる。
「せっかく持ってきたのに『英雄列伝』の衝撃が強すぎて危うく忘れるとこだった」
「小さい時は毎回おもちゃにされてたけど、今はあの時の花見が懐かしいよ」
「俺も毎回からかわれてたわ。童貞の純情をいじってくるんだもんな」
「鉄板の流れだったよね」
「最後は酔ったウバさんのワンマンライブな」
「あれが宴終了の合図だよね」
供えた花見酒と尽きぬ昔話。旅はまだ始まったばかり。
次はどこに行こうか




