番外編 移り行く季節~春~
この世界に飛ばされて初めて迎えた春。
冬を抜けて、心陽気になるこの季節が亘は憂鬱だった。
それが今年は・・・
「春!!心踊る始まりの季節!!きゃっほー!!!!!」
「母様」
「イェェェェェ!!もうマスクも眼鏡も目薬もテッシュもいらないぜー!!!!」
「母様」
「俺は無敵だーーーー!!!!」
「「・・・」」
盛大に浮かれまくっている母親を生暖かい目で見守るシュウとセイ。
春を迎えてからの亘は毎日テンションが無駄に高い。
毎年毎年亘はこの季節が憂鬱だった。
なぜなら、彼は『花粉症』に苦しめられていた。亘にとって春は目は充血&痒みに苦しみ、かみすぎて鼻の下は荒れ、マスクにテッシュに薬にと出費は重む苦労の季節なのだ。
それが世界を越えた今、何の苦しみもなく心から春を楽しむ事が出来るのだ!異世界最高!
これからは装備ゼロで出掛けても大丈夫!
花見だって怖くない!!!
春万歳!!!
今年からガンガン外出していく!!
意味もなく外に出て、一向に痒くならない目に感動した亘は天に向かってガッツポーズを決める。
「母様、この間からそのテンションどうしたの?」
「この季節に外出れるのが嬉しくてさ!花粉症ひどくていつも引きこもってたから」
「花粉症?」
「そう!目を丸洗いしたいくらい痒くなるし、鼻水はずっと出るし、くしゃみ止まんないし本当に辛いんだよ・・・でもその驚異がここでは、ない!!!」
「そんなに?」
「そんなに。どんなに防御しても突破してくるんだよな。凄まじい戦闘力だよ」
「そんなに!?」
「でもここではその花粉がないから大丈夫!今年からは花見だって怖くない!!!てな訳で、今から花見をやります!」
「花見?」
春の風物詩、桜は本来ならこの世界にはない。
しかし、亘には共にやってきた家がある。祖母の庭には、それは立派な一本桜があるのだ。
その下にシートを敷き、朝からコウと2人で頑張ったお重を並べる。
「ワタル!酒を持ってきたぞ」
「桜だ!立派ですね」
「アッサムさん、尊君!ようこそ」
「あれ~?ママさん、俺もいるんだけどー??セイ、お菓子持ってきたよ~」
「アッサムさん、タケルさんこっちこっち!」
「あれ~???」
「ワタルさん、今日は招待してくれてありがとうございます」
「ワタル。これ、ここに来る途中で狩った魔獣だ」
「あ、ありがとうございます」
「ピンクなんて珍しいわね!この木は何??」
続々と知り合いが集まり、肉に酒に美味しいご飯、そして珍しい地球の桜を堪能する宴が開催された。
久しぶりに見る桜を尊は懐かしげに見つめ、相変わらずのセイからの塩対応を楽しむダリンジー。
亘や尊から地球の桜文化を興味深く聞く、ニルギルとキームン。風情ある花見に酒が進むウバ。
初開催の花見は大いに盛り上がった。
この後、ニルギルとキームンは亘家の桜からの品種改良に成功し不可侵の森から桜が世界に広がっていく。桜の生息環境に特に適した魔族領では最も多く分布する。




