番外編 授業参観
番外編第1弾
本編では、ブクマ、感想等ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。
亘はスーツに身を包み、何度目かの魔族国に単身で足を踏み入れる。
今日はシュウの授業参観日だ。
そしてこの『授業参観』は亘の立案でもあった。
それは数ヶ月前、入学式が終わった1週間後のクラス毎に行われた保護者懇談会で父母会役員に選出される所まで話は遡る。
~数ヶ月前・保護者懇談会にて~
今日は一人で訪れた魔族学校高等部。周りを魔族に囲まれた亘は、息を殺して目立たない事で切り抜けようとしていた。ところが、
「では、満場一致でこのクラスからの役員はマシタさんお願いしますね」
「・・・はい?」
下半身が蛇の魔族である担任が、長い舌をシュロシュロ動かしながら笑顔で残酷な判決を下す。
黒板には圧倒的支持数を得た亘の名が書かれている。多数決の原理。
「任期は1年です。よろしくお願いしますね」
「え?先生?」
「シュウ君入試トップなんでしょ?すごいね!そんなシュウ君ママなら大丈夫よ!」
「え?ちょっと待って」
「後でどんな教育してきたのか教えて!」
「あっ、私も聞きたいわ!」
「え?」
人間の亘に対して周りはかなり友好的で、拍子抜けした亘だったが、その嬉しさを上回り困惑が心を占める。
『父母会』
各クラスから選出された保護者で結成された組織。目的は教師と生徒の架け橋となり、快適な学校生活の補助。内容は生徒の登下校の安全の為に通学路に立ったり、イベントの立案等広範囲だ。
説明を受けた亘は懇談会終了後、父母会新メンバーと旧メンバーの引継会に参加した。そして、
「では、今期父母会の会長は満場一致で1-Aマシタさんに決定しました」
あれ?
黒板には圧倒的支持数を得た亘の名が書いてある。多数決の原理。
「え?」
「1年で会長なんて凄いわ!」
「でも、歴代最高点を出したシュウ君のママなら大丈夫よ!これからよろしくね!」
「え?」
「「「お願いしまーす!!」」」
「え?」
シュウが凄いから、俺への期待もすごい・・・
周りからの期待の目で見つめられ、基本イエスマンの亘に断れる訳もなく会長に就任。
その後、通学路旗当番や父母会会議の進行、校内清掃の手伝い等忙しい日々を過ごす。
そして何度目かの父母会にて、議題に上がった『学校行事改革』で意見を求められた亘が提案したのが『授業参観』だった。
日本では馴染みのある学校行事も、世界が変われば斬新な発想として受け、見事採用となり準備期間や告知を経てこの度開催の運びとなった。
自分発案のこのイベントが成功するかどうか不安で、授業開始よりもだいぶ早い時間に学校に来てしまう。
見学する授業は個人技発表という事で、校庭集合だった。亘が校庭に行けば父母会役員のメンバーが数人固まっておしゃべりしていた。
「ワタルおはよう!」
亘に気づいた一人のママが話し掛ける。亘はその輪に入り緊張と不安で早く来すぎてしまったと告げると笑いが起きた。
「分かるよ!初めての試みだしね。不安になるよね」
「私はうちの子がちゃんと授業を受けれるかが不安だわ~」
「それね。朝『授業ちゃんと受けなかったら丸焼きだからね!』って言っといた」
「丸焼き・・・」
各クラス日程をずらして行う授業参観。発案者という事もあり、シュウのクラスが授業参観第一回目に選ばれた。想像着かない内容を見ておきたいと、事前確認の為に役員メンバーは来たと言う。
子供たちも緊張しているようで、今朝はいつもとテンションが違ったとメンバーたちは楽しげに話す。その他、他愛ない話をしているうちに、クラスの保護者たちも集まり遂に授業開始のチャイムが鳴る。
「今日は、皆の親御さんたちが来ていて緊張していると思うけど授業に集中するようにね。緊張では私も負けてないけど平静でしょ。ほら、マインダーさん前を向く!」
「すみませーん」
コウモリ羽を持つ女の子が、来ている母親を気にしてチラチラ後ろを見ていたのを注意を受ける。その子の母親は恥ずかしげにしていた。
そのやりとり見て亘は『あぁ~、授業参観ってこんな感じだったわ』と昔を思い出す。
シュウはどうかなと、確認してみれば緊張で浮わつく周囲を冷めた目で見ていた。
うちの子ドライ過ぎ
「それじゃあ、出席番号順で始めるよ!」
「「「はい!!」」」
先生が笛を鳴らすと同時に、並んでいた生徒が上空に飛び立つ。
そして、頭上で旋回しながら手から出した火の玉を乱射する。
「んん!?」
「おぉ~!!」となる周囲と違い、突然始まった大迫力エアバトルに困惑する亘。周りとの温度差がすごい。
その後も口から光線を出す子や、地響きレベルの咆哮をあげる聴覚攻撃の子、姿を消す子と個性豊かなパフォーマンスが続く。
俺が知ってる授業参観じゃない
その迫力に始終圧され気味の亘と違い、周囲は大盛り上がりの様子なので、とりあえずは授業参観は成功のようだ。
そして最後、シュウの番がやってきた。
亘はもちろん、周囲もどんな技が繰り広げられるのかと緊張している。
「最後、マシタシュウ!」
「はい」
前に出たシュウは即座に巨大化すると、触手を頭上に絡ませ始めた。絡まった触手は、中心に集約されていき次第に太い2つの触手に変形した。
そうすると、触手の先にあった口の膨らみも比例して次第に巨大化していく。全員が静かにシュウのトランスフォームを見守る。
どんどん膨らむ2つの口の形状は蕾のようだ。
そして、ついに蕾が花開く。幾重にも花弁を重ねた桃色の可愛らしい花と、水色の涼やかな印象を受ける花はそれは見事な満開で見るものを魅了した。
しかし、その花の中心部分が開いた事でその場は騒然となる。花の中心に口があるのだ。その形状はシュウの触手の先そのものだった。
知ってる。こういう花知ってる
食虫植物だろ?そうなんだろ?
インパクト抜群のフォルムに変型を遂げたシュウに、先生含めて周囲は呆然と見つめているが、当の本人シュウはドヤ顔で亘を見ている。
「シュウすごいじゃん!いつの間にそんなの習得してたんだよ!」
「へへへ。秘技『ダストボックス』!赤い方が燃えるゴミで、青い方が燃えないゴミ!」
「実用的!」
用途はどうかと思うが、シュウが日々成長している姿を直接見ることが出来て、今回の授業参観は正解だったなと亘は感動した。後日、学校からのおたよりにも授業参観の反響が大きかった為、今後も続けたいと記載されていた。
「私のとこは薬学授業で、途中で毒素噴出ハプニングあって面白かったわ~」
「私のとこは魔獣調教だったの。うちの子ったら優しすぎるのか、魔獣に逆になめられてたわ」
俺が知ってる授業内容じゃない




