第26話 深夜のお話会 秘密の恋話
前回から続く真下家での宴会話です。
物語が進んでいなくてすみません。
盛り上がりを見せたバーベーキューは室内に場所を移し、夜の部に突入する。しかし、その前に
「シュウとセイはもう寝る時間だよ」
「「えぇー」」
「えぇーじゃない。ほら、はみがきは?」
「「したー」」
「OK。トイレは?」
「「したー」」
「よしっ!じゃあ、寝ようか。悪いけどシュウたち寝かせてくるから好きに寛いどいて。尊君なら色々使い方分かるよね」
「大丈夫です。ありがとうございます」
触手を完全に子供扱いしている亘の対応と見たこともない不思議な物に溢れる室内、もはやどこに驚けばいいのか分からず勇者たちは固まる。そんな中で先程まで亘の子供自慢を聞いていた尊だけはさして驚く事もなく、かつての生活用品類を懐かしんでいた。
しばらくして戻ってきた亘と尊から聞く『日本』の高い生活水準の話に、特に賢者ニルギルと魔導師キームンは関心を示す。知的好奇心を大いに刺激したようだ。
勇者たちは王族としても選ばれたメンバーとしても魔王を倒し、世界を平穏にしたいと熱く語り。
神子尊はかつての生活や旅してきて見てきたこの世界観の話が少々。結局全部『アッサムさんと~』『アッサムさんに~』に着地してしまう。尊以外のメンバーは独り身なのでその話になる度殺気立つ。
亘も、手違いでこちらに来た所からなんやかんやで家族になった話をし皆から励ましを受ける。
尊の惚気に触発され、話は次第に恋愛話に移る。
「私はずばり強さ!この防衛最前線のフェニングにおいて強さは必要不可欠だし。私より強いという事がとりあえず最低ラインかな」
勇者ルフナが先陣きってタイプを述べるが、勇者の戦闘力以上が最低条件ってそれってどんな鬼畜。
「やっぱり私たちも女子ですし、強い男性に守られたい願望ってありますよね」
賢者ニルギルが無茶な条件に賛同する。
「私は、そうですね・・・肉体的強さもそうですが、精神的にも強い人がいいですね」
「精神的に?」
「それでいてたまにふと優しさがあるバランスのとれた方がいいですわ。支え合いたいのです」
「あっ、まともな恋愛観」
「そう!体を痛めつけられるだけではダメなのです!蔑まれ罵られたいのです!その間にたまに優しさを挟むさじ加減が絶妙な方と添い遂げたい。でも、そもそも賢者の私に精神的に上に立とうとする方がなかなかみえなくて・・・はぁ、『賢者である私にこのような!』という夢のような体験はいつ出来るのかしら」
「ただのドM!?」
2番手ニルギルが憂いを帯びた目を伏せる。髪を耳にかける仕草と相まって色気を醸し出している。
「厳しい中に優しさがあるのは理想だな」
剣士ウバが分かっているのかいないのか、端的にまとめる。そうだけどそうじゃない感。『支え合う』というのも言い換えればただの『属性への需要と供給の一致』だ。
この時点で亘は『このメンバーヤバいかも』と察知する。
尊は一向に話に入らない。ずっと俯いている。
「私はもう心に決めた人がいるから、彼以外と添い遂げる気はない」
「え?どんな人なんですか?」
「あっ、ダメだワタル!それを聞いたら」
「聞いてくれ、あの方はとても強く聡明で優しい方なんだ。それに驕ることも偉ぶることもなく民からの人望も厚い。常に謙虚で国の為に努力を惜しまない素晴らしい方だ。彼は私の目標でもあり、彼の役に立つことならばなんでもして差し上げたい。そんな完璧なのに、たまに可愛らしい失敗をする事もあってな。以前にも・・・・・
・・・・・何度か堪える事が出来ず想いを伝えたが、夫婦として見ることは出来ないと振られてばかりだ」
「ダメですわ、ワタルさん。一度語りだすと本当に長いんですのよ、ウバの想い人語りは」
「二度と聞きません。ごめんなさい。でも、ここまで聞いたら誰なのかも気になるね」
「兄上だ」
「え?」
「お慕いしているのは私の実の兄上だ。小さい時から一緒にいるのだから大丈夫だろうと言っても、妹としてしか見られないと振られてしまう」
「え?大丈夫じゃないでしょ?兄妹でしょ?ダメでしょ?」
「それは父上にも兄上にも言われたが、なぜダメなんだ?お互い幼少からいるから知らない事もないし、食の好みも生活習慣も知っている。それに、自分で言うのもなんだが、私は国一番の剣の使い手でもあり民からの人望も兄には及ばないがそれなりにあると自負している。それに国で一番兄上を慕っているのは私だという自信もあるし絶対服従も誓っているから謀反を起こす事もない。これ以上ない優良物件だと思うのだが」
本気の分かっていないきょとん顔も向けるウバに、こんなのに負けているのかとコウは項垂れている。
「いつも無表情なウバだけど、お兄さんの事を語る時だけは乙女の顔よね」
魔導師キームンがどうでもいい点に着目して褒める。他メンバーも話が長いことだけは突っ込むがそもそもの近親愛はスルーしている。
「私は、その、恥ずかしいけど・・・王子様みたいな方が理想なの」
モジモジしながら最後のキームンが理想を語りだす。
「王子って、ここに来るまで出会ったんじゃないの?」
忘れていたが、ここにいるメンバーは王族なのだ。そう見えないが王女様なのだ。本来なら亘のこのような話し方は不敬にみられるが人の目がないこの森でくらい対等に扱って欲しいと彼女たちたっての要望だ。コウだけは無理と言って態度を変えない。
「本当の王子って事じゃなくて、私の中で『理想の王子様像』があってね。まず、銀髪長髪のミステリアス系イケメンなの。普段は無口で何を考えているか分からないクールキャラなんだけど、私といる時だけは饒舌になるギャップがいいのよ!実は甘い物好きとか最高よね!そしてそれを隠しているのよ!!甘味を口にした時に少し崩れる表情がいいのよね!」
次第に話に熱が入り、興奮気味で理想を語る設定厨のキームン。ついには出会い方にまで細かい設定が入っていく。
一通り話を聞いて、亘は思う。『こいつらダメだ。絶対結婚できないやつだ』と。美少女に囲まれながらも恋愛フラグが尊に立たなかった訳も察知した。
そしてここまで一切話に入ってこない尊は、始終俯いて石を触っている。
覗き込んでみれば、石には寝室で寝ている彼の婚約者アッサムの姿が。
「盗撮じゃないか!ダメだろ!」
「違うよ!見守っているだけだよ!!」
「ダメだ。このパーティーダメだ。常識を誰一人もっていない。不安しかない。逆に魔族側が心配になってきた」
「何を言うかワタル!私たちはこれでも王族だ。教養は身に着けている」
「そうですわ。私も賢者として知識量では誰にも負けない自信があります」
「ダメだ。常識の意味をはき違えている。美人で身分もあってそれぞれ秀でた能力もあるから、神様が他とバランスを取るために中身をいじったんだなきっと」
その後も外ではなかなか言いづらい恋話を強制的に聞かされ続けた亘は、美女への希望を全て失った。
亘の好きな女性のタイプ(改正版)
旧:小柄で可愛いくて色白巨乳の優しい女の子
現:常識のある人




