第22話 教会問題 事後処理編
亘拉致事件の別側からのお話
それは昼過ぎ、一人の掃除夫がアッサムの執務室に駆け込んできた事から話が始まる。
『俺がトイレから出たらこれしかなくて・・・』
半泣きの彼はそう言って亘が置いていった物をアッサムに差し出し退室する。メロディーが流れる掌サイズの長方形の塊。亘が『時計』として使っていたものだ。
詰所以外の場所も探したが姿が見えない。ダリンジーと違い真面目な亘がさぼるとも思えず、事態を重くみたアッサムはすぐさま騎士団召集命令を出す。
「どういう事?」
亘行方不明の連絡を受け、セイと共に窓から執務室に入るなり怒りを微塵も抑えずに威圧感たっぷりにシュウが問う。
「分からない。一緒にいた者によれば数分個室に籠った間に忽然といなくなったそうだ。これは、その場に置いてあったやつだ」
アッサムは渡された塊をセイに差し出す。慣れた手つきでセイはスマホを操作し、メロディーを止める。やっと場違いな軽快な音楽が止み、その場に緊張感だけが走る。
「副団長が母様につけてたGPSは?」
「それが・・・全く反応しないんだよね。存在遮断の範囲魔法内にいるのかも」
「・・・セイ、僕たちだけでなんとかしよう」
「そうだね。その方が早い」
そう言い残し、来た窓から飛び降りようとする2人をダリンジーは必至で止まらせる。なぜって、極悪人面になっているセイたちをこのまま放っておけば確実に犯人たちは死ぬ。犯人たちだけならいいが(本当はよくない)、最悪街まで被害がいく可能性もある。この2人が怒りのまま暴れたら街どころか国すらなくなるかもしれないのだ。
「待って!お願いチャンスを!チャンスを下さい!!必ず期待に応えてママさん見つけるから!!」
「策は?」
「えっと、それは~・・・」
「兄さん行こう」
「待ってー!!見限るの早くない~!?」
役にたたないと秒で判断され打ちひしがれるダリンジー。こっちはこっちで打開策を練ろうと考えたセイの耳に誰かのささやきが聞こえると同時に、シュウもまた亘の匂いを感知した。
「誰?西側の丘の上ってどこ??」
「セイ、市場の方向から母様の匂いがする。行こう」
「え?」
突然誰もいない方向を見つめ問いかけだすセイと、亘の匂いを把握しているシュウに引きつつアッサムが聞けば、高性能探知機(亘特化型)のシュウと誰かの助言が降りてきたセイ曰く西市場を越えた丘の上にある建物にどうやら亘はいるらしい。その少ない情報と近年不穏な動きをする団体の活動拠点が一致する。
もしやと思案するアッサムの耳に『せめて正体だけは隠して行くんだよー!!!!』と叫ぶ部下の声は届いていない。
「・・・方向的に相手は教会関係者かもしれん。事は急だが、かねてから進めていた案件をってあれ?2人は??」
「もう行っちゃいましたよ~。誰も俺の話を聞いてくれないんだから全く。こんな雑に扱われるキャラじゃないのにー。大体」
「お前は今すぐ教会に向かってくれ。私はこれを機に癌を一掃する。向こうも簡単に賊に侵入を許した私の警備体制の甘さをつく準備をしている頃だからな、時間との勝負だ」
「・・・了解」
確かな確証はないものの、あのシュウが亘の匂いを間違えるとも思えず向かえば、崩れ果てた教会内で祈り捧げる人々と土下座態勢で懺悔する人々、そして一人粘液まみれで失神している者でカオスな状況だった。
あの人たちは一体何したんだ。
え?これ、俺が収拾つけるの?嘘でしょ??
コウさん『さすがシュウ様です』って、なんでお前泣いてるの?これも俺が面倒みるの?嘘でしょ?
『副団長・・・これは?』って俺に聞かないで。
ダリンジーは「はぁ~」と深いため息をついた後、教会幹部陣および加担していた冒険登録者たちの確保と奴隷保護に乗り出す。今日は確実に残業だ。
一方執務室に残っていたアッサムは、ダリンジーからの報告を受けた後教会と繋がっていた騎士団上層部および国中枢部幹部のリストとこれまで集めていた様々な事件の状況証拠書類を持って国王に報告。賊侵入をあっさり許したアッサムの警備体制を責め騎士団長の挿げ替えを訴える相手は逆に『賊侵入の手引主犯』として逮捕された。そこからさらに加担していた貴族たちも判明し、国全体での大騒ぎとなる。
そして、この事件の発端となる功労者真下家は軍部責任者総入替や爵位取り上げの貴族たちが出る騒ぎの中、今日も平和に過ごしている。
「昨日は兄さんが観たいのみたじゃん!!今日は俺!!」
「それ1話完結だから今日観なくてもいいじゃん!こっちは今日解決編なんだからコ〇ン観るの!!」
「ずるいよー!!!!うわぁぁぁぁぁん!!!母様~!!」
「あっ!母様に言うのひどいよ!」
「こらー!!!仲良く観れないならテレビは今日はなし!!!!外で遊んでこい!!」
「「えぇぇぇぇぇぇ!?ごめんなさい!」」




