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第21話 教会問題 パワーで解決編

「もう、もう、その辺にしておこう2人とも!ストップ!ストーーーーーーーーップ!!!」


 亘の10回目の静止の声でやっと2人の暴走が止まる。

 

 ぶち抜かれた天井からまだ高い位置にある太陽が見える。

 吹き飛ばされた壁や椅子。粉砕されたステンドグラスの窓。へし折られた十字架。亘が監禁されていた場所、教会は今や廃墟のようだ。

 

破壊神の2人を見て、中央にいる祭服を着た人々や冒険者風の人々は土下座し許しを乞い、痩せこけ身汚い奴隷たちは涙を流し手を合わせ感謝の言葉を述べている。




☆★☆★☆★


 監禁されていた地下牢から上がってきた亘たちは、その途中で狭い牢に入れられてる奴隷たちをみつける。そのまま見捨てる事も出来ず、結果全員を救出する流れになった。意図せず大所帯での脱走だ。

 

 そのまま階段最上階まで驀進し、扉を開けると教会入口を背に聖職者や柄の悪そうな冒険者のような人々が武器を手に待ち構えていた。


「あっ、見たことある風景だなぁとは思ってたけど・・・ここ、俺がいた教会だ」

「え?ここが??」

 

 周りを見渡して「納得納得」とスッキリした顔でセイが呟く。



「俺、教会に捕まってたのか・・・今まで気づいてなかったのによく俺がここにいるって分かったな?」

「母様の匂いを辿って」

「『こっちこっち』って声が聞こえたから」

「お、おぉ。そっか」


そっかじゃないだろ俺!!

匂いって・・・え?俺臭い?臭いの!?

それならちゃんと言ってシュウ!

あと、セイ声って何!?ホラーかよ!!なんでそんな普通にしてられるの!?夜トイレ行けなくなっちゃうから!

只でさえトイレ外にあるから嫌なのに・・・


「母様の場所教えてくれた声が、さっきから『4時からの相〇再放送間に合わなくなっちゃう!早くして!!』ってうるさいから早く帰ろう」

「あっ、なんか一気に怖くなくなったわ。帰るか」

「「うん」」


「おい!!この状況でなんで簡単に帰れると思えるんだよ!!」

「あっ。忘れてた」

「まだいたんだ?早く帰ればいいのに」


 無視され上に適当にあしらわれた敵陣の怒りは相当で、その怒りのまま亘たちに向けて銃を発砲してきた。シュウを見てもなお攻撃してくる度胸だけは立派だが、それが自分たちの首を絞めている事にまだ気づいていない。


「今、何した??母様に向かって何した??」


 発砲された鉛を握りつぶしながらセイが静かに問いかける。


「許さない許さない許さない」


 ブツブツと呟きながらシュウは巨大化して教会の天井や窓を壊していく。それを見たセイも椅子やら壁を勢いよく壊していく。


 突如として始まった大技攻撃に、先ほどまでの勢いはどこへやら我先にと入口に向かって逃げ出す敵陣。その進行を妨げたのは、シュウが吐き出した粘液まみれで気絶している男だ。彼は、監禁されていた亘に尋問していた男だ。収納場所に困ったのでシュウが一時保管していた。


「逃げるなら・・・食う」


「「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」」」


 シュウはそんな事しないのだが、脅し文句としての効果は抜群だったようでその一言で相手は動きを止めた。そこからの攻撃は一方的なもので、冒頭の場面に繋がるのだった。


☆★☆★☆★


「危ないだろ!こんなに人がいるんだから当たったらどうするんだ!それに、向こうは武器もってるんだぞ??煽ったりして・・・2人が怪我したらどうするんだよ。本当に、危ない事は止めてよ」

「「ごめんなさい」」

 次第に声が小さくなりながら亘が2人を窘めていると、ほぼ全壊して見通しのよくなった先に騎士団一行が来るのが見えた。


 亘はシュウに耳打ちしてその場にいる全員に何の影響もない体液を飛ばしてもらい、そのままシュウとセイと一緒に祭壇に上がる。


「我々の事を口外できない呪いをかけた!今回の事は・・・やべっ!もう来た!!」

「母様、こっち!!」


 この街で平穏に暮らすための口止めにはったりを言っただけだが、全員無言で頷いているので大丈夫だろう。

 先頭のダリンジーが見える。このまま留まっていては今度は騎士団に討伐されてしまうので三十六計逃げるに如かず。シュウに抱え込まれ、セイと共に開けた天井から逃げ出す真下家。逃げながら見下ろすと、教会に踏み込んだ騎士団がその場にいる聖職者&冒険者一団を拘束しているのが見えた。彼がなんとかしてくれるだろう。傍にいるコウは泣きながらこちらを見上げている。訳は聞かないでおこう。






 その日の夜


 亘が拉致されてからの監禁、そして脱走までなんと1時間足らずのスピード解決だった。

 その為、セイに聞こえる声の持ち主の希望叶い、余裕で〇棒放送に間に合う早めの帰宅となった亘たちはゆっくりと夕食を取っていた。そこに興奮したコウが飛び込んでくる。


「感動致しましたシュウ様!!立ち去る時の神々しさ!!悪を征して名乗らない無欲さ!!素晴らしい主に仕えられるなんて私はなんて幸せ者なのでしょうか!!!本当に、私は・・・うっ、ううぅ」

「あっそ」

 

 仕舞には男泣きし出したコウに対して、シュウはどこまでも塩対応だ。

 事の顛末を話すコウは、所々でシュウの活躍を思い出しては感動して泣くので無駄に時間がかかってしまったが、根気強く聞き出す。


 そもそも、なぜ亘が拉致対象になったのかと言えば、表向き『勇者一行が来る前の森調査』真の理由『節約の1週間買い溜めした食料を運ぶ為』コウ、亘、セイが森に定期的に入っているにも関わらず毎回無事な理由を聞き出す為だった。教会側は亘がコウの従者と勘違いしており、最年少鬼教官の異名があるセイよりも簡単そうだからという理由で拉致対象が亘になったそうだ。


 亘たちが去った後、これまでコツコツ集めていた証拠と人身売買の奴隷たちという証人を武器にアッサムが教会団体の解体と癒着している上層部の一掃に乗り出し、騎士団だけでなく国中枢は今大混乱しているという。


 国全体が混乱している一因にいる亘だが、彼の心配は拉致事件後全く傍を離れようとしない息子たちの親離れを促す事だった。

 亘自身は、よく分からないまま全てが終了しているので全く気にしていないのだが、突然母親が消えた事が2人は相当恐怖だったようだ。

 セイは、教会に対して奴隷時代は確かに辛かったが今が最高に幸せだから亘を拉致した事の方が許せないと憤っている。


 親離れを願いながら、亘は両サイドから抱き締められて川の字で寝る現状がずっと続けばいいのにとも思うのだった。






 

 


 

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