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第19話 いつも見ています

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願い致します

「ええっと・・・??師匠とは?いや、そもそもどちら様ですか?」


 突然の呼び名に固まる一同。一番に回復した亘が謎の人物に問う。


「申し訳ありません!自己紹介が遅れました!私、東のブロークン国より参りましたコウと申します。以後お見知りおき下さいませ」

「はぁ、えと・・・お、私はワタルと申し「存じております!」・・・え?」

 コウの自己紹介につられ、では自分もといいかけた亘を遮り、立ち上がったコウがなぜか亘たちの自己紹介を続ける。


「北のフェニング国騎士団詰所及び訓練場や宿舎の掃除夫ワタル様。最近は詰所内の食堂にて料理補助も担当されていらっしゃいますよね。同僚の方々他、騎士団隊員たちからも真面目で働き者と高評価です」

「え?俺って、そんな風に思ってもらってたんだ!ガッカリされないように明日からも頑張ろう!!」

「母様、高評価を嬉しがってる場合じゃないよ!なんでこいつこんなに母様に詳しいの!?」


 仕事ぶりを誉めてもらえて呑気に喜んでいる亘を横目に、セイはコウを威嚇したまま突っ込む。そんな突っ込みを華麗にスルーしたコウはさらに続ける。


「そのワタル様のご子息セイ様は、最年少で騎士団教官を勤める実力者!訓練内容は鬼畜ながらも見た目の麗しさと他を圧倒する強さでその人気爆上がりでございます!先日行われました騎士団内アンケート投票では見事『蔑んだ目で見つめられつつ踏んで欲しい人』堂々の1位でした!さすかでございます!」

「何その称号!?そんなキモい1位とかいらないし!」

「そうだよ!セイが1位になるのは絶対『その存在感もはや天使級No.1ラブ☆エンジェル』でしょ!」

「え?母様知ってたの!?俺初耳なんだけど?」

「残念ながらそちらは2位でした。1位は3年連続で総務部庶務課のマリーです」

「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「なんで母様がそんなに悔しがるの!?俺その称号もいらないよ!?」


 亘とセイの茶番劇に、もはや空気と化していた団長・副団長コンビは苦笑いする中、徐々にテンションが上がっていたコウはセイ、正しくはセイの後ろを見つめながら叫ぶ。


「そして、我が師匠シュウ様!その存在感!強さ!最強クラスでありながら家族想いの優しさも兼ね揃えているギャップ!!最高でございます!!一生ついていきます!」


「「「え??」」」


 突然出てきたシュウの話に驚き、真下家全員でコウを凝視する。思わずシュウもセイの背中から顔を出す。


「え?何で・・・シュウを?あっ、団長さんたちが??」


 姿を現したシュウに驚く所か積極的に距離を詰めるコウの反応に戸惑う亘だったが、アッサムたちが事前に説明していれば納得出来る事だった。しかし、返ってきた反応は


「いや、私たちからはまだ何も・・・ワタルたちの承諾を得ていないのに勝手に伝える事は出来ないだろ。だから、なぜ彼が知っているのか、正直今、すっごい驚いてる。え?この状況何?」


 亘たち同様、状況理解に苦しんでいるようだ。

 

「彼は以前行われた闘技戦での優勝者なんだが・・・その、先日国王と謁見した際に勇者同行を頑なに拒否されて、その理由が『自分はふさわしくない』の一点張りでな・・・では、コウ殿が思うあの大会の優勝者は誰かと聞くと決勝戦を途中退場した人だと言うから今回、ダリンジーと君らを呼んだんだが、そうか、彼が言うのはセイだったか・・・」

「それは違います!!私が思うのは師匠シュウ様です!あの大会で私はいかに自分のレベルが低いかを実感致しました!母国で『剣聖』の称号を得ることが出来ず、名声を得る最後のチャンスでこの国に来たのですが・・・」

「えっと、その話長くなりますか??俺まだ仕事があって・・・」


 アッサムの説明をぶち切り、過去を語りだすコウ。亘は露骨に帰りたい空気を出すがコウは華麗にスルーして話は止まらない。


「あの場にいた中で、師匠たちは間違いなく優勝出来るレベルでした。それなのにそれを簡単に他に譲られる器!かっこよすぎです!肩書きを欲する自分がとても小さく感じられ、そして誓ったのです。教えを乞うだけでなく私が従う主はこの方以外いらっしゃらないと!」

「え?僕いらない」

「Okですか!ありがとうございます!!」

「・・・母様~」

「あぁー・・・主とかは一旦置いといて、そもそもなんで俺らのことそんな詳しいの??会ったのはその闘技戦だけなんだよね??」


 話がかみ合わない事に苛立つシュウが世界を壊す前に、話の流れを変えようと最初から疑問に思っていた事を聞く亘。亘やセイはシュウの存在がバレないよう、名を呼ぶことも極力控えてここまで隠し通して来たので心底不思議だったのだ。


「何をおっしゃいますか!師匠の指導スタイルは『見て盗め』ですからね。闘技戦以来ずっと見ておりましたとも!!」

「ひぃぃぃぃぃぃ!!ここにもストーカーが!!!」

「待って!ママさん『も』って何!?俺は違うってずっと言ってるじゃん~!!!セイもちゃんと周りに否定してよね!」

「任せろ。聞かれたら『ただの少年好きだ』って言っとくわ」

「誤解が加速する!!」


 ストーキング発言を受けて、気付かなかった事に驚く真下家。特に探知能力を持っていて気付かなかったシュウは目に見えて凹んでいる。シュウの探知能力は悪意や攻撃意思に特化したものなので、好意の純度が高いコウのストーキングは見落としていたのだ。


「それに、常に主が過ごしやすい環境を整えておく。それが私の仕事でもありますからもちろんご自宅まで付いて行っております!師匠たちはとても謙虚な方々でなかなか用事を頼まれないので出来る事が限られているのが悲しいですが・・・今後ともよろしくお願いいたします!!何でもおっしゃって下さい!」

「え?待って、家?家まで来てるの???」

「はい!主に掃除や備品補充をしております!」

「母様、こいつはやばい。ストーカーを自覚していない。本気で危ないやつだ」

「ごめんね、母様。僕が気づかなかった為にこんな危ないのを近づけていたなんて・・・今、消すね」

「師匠の血肉に!??ありがとうございます!!これ以上ない誉でございます!!!」

「・・・母様」


 何事もポジティブな方向に勘違いするコウに、亘たちが脱力していると、それまで空気と化していた副団長ダリンジーが話の軌道修正を図る。


「まぁまぁ、ストーカー一人くらいいてもセイとシュウ様がいれば何の心配もないでしょ~。それより、俺思うんだけどコウ様がワタルさんたちの下僕になるのはむしろラッキーなんじゃない??」

「勝手に合鍵作って上がり込むストーカーが?危険しかないと思うんですけど・・・」

「まぁ、その辺の常識は今後身に付けていけばいいんじゃなかなー。俺が言うのは~勇者たちの動向がしれる立場にいるコウ様がこちらサイドにいるって点ね」

「はぁ」

「ワタルさんたちは地理に詳しくないから今、余裕こいてるけどー魔族領地に行くには、あの森を突っ切るしかないんだよ?大丈夫~?自宅バレするよ??」

「「「あっ」」」

「ね?まずいんでしょ??だからここで役にたつのが~」

「このストーカーね」

「そういう事~」

「そういう使い方もあるんだね。なら、おいストーカー」

「はい!師匠なんでしょうか!」

「勇者一行に同行して、僕たちの家を迂回したルートで進行してこい。帰ってきたら、」

「一人前と認めて下さるという事ですね。命に代えまして遂行致しますことここに誓います」


 再度、セイ(正しくはシュウに)の前に膝を折り頭を垂れる。シュウは『帰ったら関わるな』と伝えるつもりだったが、面倒臭くなり放棄した。


 こうして、打算と純粋な忠誠心が入り交じった主従関係がここに結ばれた。



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