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なぜ、こんなに笑われなくてはならないのか……。
自分を指差して大爆笑する仲間たちを見て、フィオナは引きつった笑みを浮かべながら拳を握り締めた。あまりにも強く握りしめているせいで、爪が手のひらに食い込んでいるのがわかる。
どうしてこんなことになっているのか、怒りで沸騰しそうになる頭を必死に抑えつけて、冷静に状況を整理した。
最初は、カードゲームに誘われただけだったはずだ。本当は禁止されていることなのだが、昔から団長に隠れてこそこそとお金を賭けてカードゲームをする風習があるという話は聞いていた。実際に、それを教えてくれたのが先輩の騎士だったので、フィオナを含む同期たちはそれを真似てカードゲームを始めた。
ここまでは問題ない。しかし、問題は次だ。
入団した当初から、賭け事が嫌いなフィオナはそういう誘いが来ても一切を断っていた。そんなものは好きな者たちがやればいい。そして、怒られる時は自分の知らないところで怒られてて欲しい。そう思っていたのに、今回は何も賭けないで純粋にお前とカードゲームを楽しみたいだけだ、と言われると断りにくくて付き合うことにした。
カードゲームに興じている間に、なぜか一番成績が悪かった者は女装する、という話になり、それならやめさせてもらうと言ったら、どうしても参加してくれと拝み倒され、だったら悪い成績にならなければいいと思って続けていたら、こっちの手札が見透かされているかのように次々と負けが嵩み、気づけば仲間内で一番成績が悪い状態になっていた。
どうしてこうなった、と唖然としていると、はい、と満面の笑みで渡された女装道具を見て確信した。自分の背丈にちょうど良いドレスに、自分の髪と同じ色をしたウィッグ。これを見れば、いくら鈍いフィオナでも気づかないはずがない。
してやったり、とにっこりと笑う仲間たちを睨みつけていると、約束は約束だよな? と言われて、納得はいかなかったものの、ゲームに参加を決めたのは間違いなく自分の意志だし、ここで彼らと対立するつもりもない。
それでもなんとか自分を納得させ、バレませんように、と思いながら着替えて戻れば、この大爆笑である。「やっぱり似合うと思ったんだよ!」と言う言葉が聞こえた瞬間に、自分が負け続けた理由を悟った。
「……イカサマしたな?」
拳を握り締めて、怒りを滲ませる声でつぶやくと、仲間たちが大爆笑しながら「してない、してない」と言うが、この様子を見る限り、最初からフィオナの負けは決まっていたらしい。
気づかない自分も自分だ。すっかり、彼らに騙されてしまった。
「でも、初めて見た時から、お前は絶対に女の格好が似合うはずだと思ってたんだよ」
負けは負けだし、イカサマを見抜けなかったこっちにも非はあると思って大人しく淡い色のドレスと黒いウィッグを別室で着て戻ってきたのだが、こんなに笑われるとは思わなかった。
——似合うもなにも、私は女なんだけどな……
弟の代わりに騎士団に入団して二ヶ月が経ったが、幸いなことに周囲には女であることは気づかれずにすんでいる。本来の格好をしたらバレるかもと危惧したが、この反応を見る限り、フィオナの本当の性別に気づいている者はいないようだ。
けれど、性別どおりの格好をして大爆笑されるのは、仕方ないのだが納得いかない。
「もう! 笑うなよ! もう二度と、お前たちとはカードゲームしないからな!」
そう叫んでも、笑い続ける仲間たちは嫌いにはなれない。みんながみんな、気のいい奴らばかりで、本当に貴族の跡取りなのかと疑ってしまうような性格をしている。今回の入団生には問題児は皆無だな、と騎士団の上層部が言っていたらしい。
確かにそうかもしれないが、基本的にイタズラなどが大好きな奴らばかりだ。今回は、フィオナがその標的になってしまった。
目に涙を浮かべながら笑う仲間たちは、互いに一仕事やり遂げたかのように肩を叩き合っている。




