03.5:閑話・姫の小さな願い
今回は、新章…に入る前の閑話になります。
国中の大熱気の中、とうとう武闘大会が始まった。
巨大なコロシアムを隔てる巨大な壁――A・B二つのブロックに分けるその稼働式壁を収納するさらに巨大な戸袋のような建造物…その先の一段高く造られた上位者用のスペースに、実況者と共にこの国の最高位である王とその末娘であるエリザベス王女が座についている。
さすがに高い位置に造られただけあり、その場所からはAフロックもBブロックもとても良く見える。
実況にも解説にも非常に向いた場所である。
とはいえ、あくまで全体を見やすいように王族に配慮された位置であるだけで、わざわざその上位者に解説として働かせようとしているわけではない。
実況者に『解説者』と紹介されたが、王族の二人はそれほど武芸に詳しいわけではないのだから。
王や王女が戦いの感想を軽く口にするだけでも周囲はさらに盛り上がる…そのための『解説者』の立ち位置なのだ。
ましてやエリザベス王女はほとんど外に出るコトもない、ものすごい箱入り王女である。
冒険者達の戦いというモノを実際に見るのも初めてなのだから。
(この方達が…冒険者…)
様々な格好をした様々な種族・年齢・性別の多数の人々がオープニングセレモニーの最中、コロシアムから控室に向かっていく。
セレモニー終了直後にAブロック第1試合が始まるからだ。
その去って行くたくさんの冒険者達を目を輝かせてエリザベスは見ている。
透けるような長く淡い色の輝く金髪に透明感のある水色の大きな瞳…今日は珍しく外に出るので軽く化粧を施しているため多少大人びて見えるが、その表情はまだあどけなさが浮かんでいる。――まるで完成された芸術品のような完璧な姿の王女様だ。
荒々しい武闘大会にもその大会に出場する粗野な参加者達にもとてもそぐわない存在感なのだが、彼女は前のめりでその冒険者達の姿を目で追っている。
実は…エリザベスは『冒険者』というモノに崇拝に近い憧れを持っている。
今回のこの武闘大会を王族として上覧するのは国王とその末娘であるエリザベス王女だけである。
エリザベスには実は年の離れた3人の兄達がいる。
だが、彼等は現在冒険に出ており城にはいない。だから二人だけなのである。
この大冒険王国では王家のしきたりで、次期国王になり得る存在である王子達は必ず冒険者として経験を積むことになっている。
大冒険王国自体が、冒険者から成りあがった英雄が興国したと言われているからだ。
そのためのしきたり…それをエリザベスはとても羨ましく思っている。
自分もいつか…大人になったら冒険者として旅立ちたい。…小さな頃は本気でそう思っていた。
しかし、父王はエリザベスに対してだけは、決して許可を出してはくれなかった。
今すぐではない、もっと大きくなってからでも…と願ったが、首を縦には振らなかった。
それどころか、城から外に出るコトすらほとんど許されていない。箱入りにもほどがあるレベルで。
まだ子供だからとか女だからとか王族だからとか…言い訳じみた言葉でいろいろ言われるが、納得できる理由は全く聞かされていない。
確かにエリザベスは15歳だ。社交界デビューはしているが、まだまだ未成年、子供と言えよう。
…だが、自分と同年代でもすでに冒険者として戦っている者達は数多くいる。自分よりもずっと小さい子供でもまれにいるくらいだ。
兄達だって王族だけど冒険しているのだから、自分も冒険者になってもいいはずなのに…本当に納得できないとエリザベスは心にモヤモヤをためていく。
冒険どころか、何故か外出もままならない日々…。
だから…エリザベスは、危険があっても自身の心のまま自由に動き回る『冒険者』という存在にとても憧れている。
そんな『冒険者』に憧れる王女に側近達は、
「姫様…冒険者なんていかがわしい者も多いのですよ」
…と苦言を呈する。
外の世界を知らないエリザベスは実際の『冒険者』を間近で見るコトはほとんどない。
だから、どれだけ危険なのか…信用ならない『冒険者』という者達が数多くいるコトを知らないからそんな風に憧れるのだと側近達は解釈している。
実際エリザベスが間近で見たことのある冒険者は、王に直接謁見出来る程有名な勇者であるアルフレッドとその仲間達くらいだ。
王どころか、貴族と相対することが出来る冒険者すらほぼ皆無なのだから。
(確かにあの勇者様は、若いのに温和な態度で、とても優しそうだもの…)
彼の様な冒険者ばかりではないとエリザベスにだってわかっている。
だが冒険者と言われて、勇者アルフレッドくらいしか思い当たらないエリザベスにとって、どうしても彼が『冒険者』の基準になってしまうのは仕方がない事である。そう言う意味では冒険についても冒険者についても甘い見通ししかないとも言える。
そんなエリザベスは確かに世間知らずと言われても仕方ないのかもしれない。
だが、世間を教えてもらえないのだから知らないのもしょうがないのではないか。
…確かに、勇者様はともかく、その仲間達は父王をも言い負かす程に口も達者で一筋縄ではいかぬ人間に見えるので、『冒険者』と言う者が良い人ばかりではないという意見も多少はエリザベスもうなずけるが。
そんな『冒険』と言うモノに憧れていたエリザベスは今日、その冒険者達が集まり戦う武闘大会のゲストとしてここにいる。
楽しみで楽しみで、いつもの表向きの取り繕った微笑みの中で、飛び跳ねたいほどのワクワク気分で試合を見ている。
最初に出てきた勇者達のパーティは、危なげなく勝ち進む。
(すごいわ! 勇者様が出てくるまでもなく、あの戦士様一人で強そうな複数の相手を全て制するなんて…!!)
感動で打ち震えるエリザベスの目の前に、他のパーティも続々出場してくる。
(まあ…ドラゴン!? 始めて見ましたわ! あんなに巨大な生き物ですの!?)
(あのドラゴンに対するパーティはエルフの剣士と…子供と変な人形みたいな物が仲間なの? 戦えるのかしら!?)
ドラゴンと変なパーティの試合は、何故かその変な方のパーティが勝利した。
理由はわからないが、ドラゴンが暴走したようだ。それももしかしたらあの変なパーティの仕業なのかもしれないとエリザベスは予想する。
(え? 魔法使いなのに魔法を使わなくてもあんなに強いの? 魔法を使わなくてもあれだけの強さが必要なのね)
魔法使いと言う者は線が細くて頭脳派なイメージがあったのだが…肉弾戦で戦う巨体の魔法使いを見て、エリザベスは自分の世間知らずっぷりを反省した。
…が、誰もが予想だにしなかった試合展開であることに本人は気がついていない。そう言う意味ではやはり立派な世間知らずと言えよう。
(すごい! 魔法を一回出しただけで、一瞬で試合が終わるなんて…)
何故か仮面等で顔を隠したいかにも魔法使いのパーティは、瞬きする間もなく試合を終わらせる。
まさに魔法使いの戦い方という試合運びを見て、魔法使いになるにはやはりこれほどの力が必要なのか…と納得するエリザベス。
どの試合も思いがけないバトル展開で、エリザベスの心は弾みっぱなしである。
まだまだどんどん知らない冒険者達が出てくる。
どのパーティが最後まで残るのか。父王に表彰される場にやって来るパーティは…一番近くで見ることが出来るパーティは果たして?
…多分、勇者様が導くパーティが圧倒的に強いだろう。彼等が表彰されるのだろうな…とエリザベスも思っている。
だが…勇者様達以外にもいろんな冒険者達がいる。
見たこともない種族?も、見たこともない力も…そんな見たことないたくさんの冒険者達が。
――どんな人も『冒険者』になれるのだ。
(なら私だって…兄様達のようにいつか冒険者にもなれるかもしれない。ううん…なってみせる!)
…そんな風な未来を願うエリザベスのワクワクは、まだまだ止まらない。
武闘大会が続く限り…いや、たとえ大会が終わっても、胸に広がる願いは膨らむ一方であった…。
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よかったらぜひ、のぞいてみてくださいませm(_ _)m
今回は、閑話・更新です。
…スミマセン。新章には入れませんでしたorz
そんなワケで今回は観覧している側…エリザベス王女のお話です。
完全に閑話ですw よかったらお楽しみください♪
次回こそは新章に入りたい!!…ですw 気長にお待ちくださいませm(_ _)m
あと…10月に入りましたね! 今月参加予定イベントは…
10/18(日)COMIC1☆29・「茶々組&初心の会」K11b(南3ホール)
…です!
ウマ娘とかトリッカルとかの新刊あります。もちろん、大冒険の新刊も! 参加される方、ぜひ遊びに来てくださいませ! よろしくです。
11月も申込済イベントがあります。ちょこちょこ参加しながらの更新になりますので、うっかり投稿忘れとかならないよう気を付けますw
ではでは。次回、無事更新できましたらまたお会いしましょう。
よろしくお願いしますm(_ _)m
あと…最後にお願いがw
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