01:死闘の予感 ③
第二部「大冒険武闘大会編」第1章3話目、です。
「そう! 出てほしいのじゃ!!! お主達に!!」
…一方こちらも老人のドアップの大きな声から始まる。
重厚な布に彩られ沢山の従者達が並ぶ玉座の間で、豪勢な椅子に座りながらも身を乗り出し真剣な表情で目の前に跪く冒険者に声をかけるのは…この大冒険大陸の最高位にあたる、大冒険王国国王その人だ。
長い白髪に立派な白い髭をたくわえ、豪勢なマントをまとった威厳に満ちた王は、そこそこの老人なのだが、表情は若々しく快活だ。
冒険者達に直接謁見する様な気さくさもある。
「武闘大会…ですか?」
その王が直接謁見している冒険者達は…アルフレッドパーティの4人だ。
一応リーダーのアルフレッドの手には、王の従者から手渡された『武闘大会』のチラシがある。
「そうなんじゃ。他国の大会を見てのぉ。この国にもそういったものを定着させたいと思ったんじゃ!」
王は楽しそうに語っている。
はしゃいでいると言ってもいいくらいだ。
だが、そこで言葉を止めると、王は少し眉をしかめる。
「しかし…なかなか名の知れた者が集まらなくての…」
残念そうにそう続ける。
「コロシアム建設のため多額の借金までした! ぜひこれだけは成功させたいんじゃ!」
王の熱い心意気。
…この言い方だと『名の知れた者』として、アルフレッド達に参加して欲しいという要請なのだろう。
その話を聞きつつ「い…いつの間にコロシアムなんか…」…とチラシを見ながら小さくつぶやくアルフレッド。
しばらく王都の城下町から離れていたからか、そんな大掛かりな工事があったことすらも知らなかったのだ。
「――でも」
アリスがアルフレッドの手のチラシをひょいっと取り上げる。
まじまじとそのチラシをながめながら…
「借金しまくりのわりには優勝賞金額が10万Gなんて……」
とつぶやく。
10万Gは約一千万円程である。…なかなかの金額である。
「ずいぶん気前がいいんですね、王様?」
アリスのあけすけな問いに、アルフレッドが驚いて「ア、アリス…」と小さな声で止めようとする。
しかし、そんな不敬なアリスの態度に怒るわけもなく、逆に王はギクッと表情をこわばらせ顔色を変える。
「そ…それは…」
今まで滑らかに動いていた口が固まり、王の声が震える。
「お…おい、少しは口を慎めよ」
アルフレッドの言葉も、慌てていて小さく震えている。
「あら?」
…だがその周囲の表情に全く忖度せず、チラシを見ながらアリスが言葉を続ける。
「勝者予想のトトカルチョなんてのもあるのね♡」
ますます顔色が青ざめる王。
「いっ…いや…だからそれわぁ~」
「――王様♡」
不敬にも王の言葉を遮るようにアリスはにっこりと笑いながら…
「なぜ私達なんです?」
手にあるチラシをひらひらと振りながら「教えてくんなきゃ出ませんよ♡」と笑顔で脅す。
「ア…アリスっ!! 何て恐れ多い…」とアルフレッドも顔色を変えて止めるが、全くの無視である。
目の前の王は完全に青ざめ固まっている。
「じ…実は…」
青ざめ固まっていた処理落ちからようやく復活した王は、やっと理由を話し始める。
「コロシアム建設費用が思ったよりかさんでのぉ…。こうなったらトトカルチョで借金返済分や賞金分の元を取ろうと思いついたのじゃ」
渋い顔で王は語る。
「しかし…賭けに負けては何にもならん」
…確かに、元を取るために賭け事をして、その結果負けてしまっては全く意味がない。
「…それでお主達なんじゃよ」
「え?」
王の言葉にアルフレッドは首を傾げる。
話の流れが理解できず首を傾けるアルフレッドをそのままおいて、王は言葉を続ける。
「お主達はただでさえ強い。その若さで信じられぬ程の実力を持っておる」
王のその言葉に、そこまで自分達が認められているのかと驚きにさらに目を見張るアルフレッド。
「――特に事アリスに関しては、大金がかかった時にさらにその実力が倍増する事はすでに実証済!」
その、どう聞いても褒められているように思えない王の評価に、アリスがぴくりと反応し眉を思いっきりしかめる。
「アリスさえおれば、高額賞金につられて必ず勝てると思ったんじゃ!!」
王の言葉にアリスはいちいちぴくぴくぴくっと反応する。
だんだん顔のしかめ方もひどくなっていく。
しかし王はアリスの変化に気付かず、「そしてワシも勝つ♡」と取らぬ狸な言葉をいい笑顔で続けている。
…アリスはとうとう跪いていた姿勢からすくっと立ち上がる。
「よーくわかりましたわ。王様」
下を向いた顔は表情が伺えない。
どう見ても不敬なそのアリスの行動と言葉に、王は怒るより先に、今更ながらに言い過ぎたことに気が付き、ぎょっと顔色を変える。
「いっ…いやっ…ワシは何もお主が金に汚い守銭奴じゃと言っとるわけじゃ…」
慌てふためき、余計な事をしっかり言ってしまっている王。
誰がどう聞いても『金に汚い守銭奴』と言ってるようなもんだ。
「――――やりましょう」
慌てる王の言葉を遮るように静かにそう発するアリスの口元は微かに笑みを含んでいる。
その様子に、言い訳に慌てていた王も「へ?」と目を丸くする。
「…武闘大会に参加しますわ」
そのアリスの言葉に、驚きに目を見張り、
「ア…アリス?」
と声をかけるアルフレッド。
だが、その声を完全に無視し、王に不敵な笑みを見せるアリス。
「――そして」
すっとアリスは右手を胸に当てる。
「必ず…勝ってみせます!!」
その胸に当てた手をぐっ!と握りしめる。
「おお♡」
王の声が喜色に弾む。
「ええ!!?」
そしてアルフレッドも同時に驚愕の声を上げる。
「そーか!! やってくれるか♡」
王は大喜びで、にこにこと超ご機嫌だ。先程までの迂闊な言葉でアリスを激怒させてしまい、どんなレベル報復を受けるのか…と戦々恐々と青ざめていた様子は何処へといった姿である。
しかし…そのアリスの大口に慌てたアルフレッドの方は必死で止める。
「ア…アリス!! そんな事言ってもし負けたらどーすんだ! 迷惑かける前に辞退を…」
「えーい、おだまり!!」
そのアルフレッドの言葉をアリスは容赦なくぶった切る。
ピッと親指で自らを指さすと、
「あたしはね、やると言ったらやるのよ!!」
と啖呵を切る。
「ガタガタ言わずに黙ってついてらっしゃい!!!」
王の面前とは思えない豪快な啖呵に、
「――は…はい……」
…と、小さく是と言う事しか出来ないパーティ代表者であるはずの勇者であった…。
――こうして…
「…手ェ抜いたわね、あの鍛冶屋…」
村から旅立ち、迷いつつ歩いているラルシオンは自分の着けている鎧の首元をさすりながらつぶやいている。
出立前に壊れた鎧を修復してもらえはしたのだが、見ると破損前にはあった首周りの全体のガードが減っている。
おそらく時間的なのか金額的なのか…そこら辺が足りなくてこの形になってしまったのだろう。
そんなぶつくさ文句を言いながら歩いているラルシオンを見ながらついてきているティムも祖父からもらった慣れない衣装を身にまとい、ちょっと眉を下げている。
…ちなみに人形は人形のまま何も考えていない様なぽやっとした顔で一緒に元気に歩いている。
鎧も直っているが…人形の鎧など、どうやって直したのか…不明である。
そんな彼等が迷わない様にぽてぽてと歩くのは森と砂漠の境目である。
森の中はいつもの彼等なら簡単に迷う。…地元のハズなのに。
だからと言って、見晴らしはいいが砂漠の中をさまようわけにはいかない。
砂漠の中に長時間いれば、命に係わる。…だから森と砂漠の境目を歩いているのだ。王都に向かって。
――その、人どころか命あるモノもいない砂漠の中を、音もなく怖ろしい速度で進む影の様な6人。
彼等もまた、王都を――城下町のコロシアムを目指している。
――こうして……
それぞれの思惑が渦巻く中…
今!!
第一回大冒険武闘大会の幕は切って落とされる!!!
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第二部「大冒険武闘大会編」第1章3話目です♪
今度はアルフレッドパーティの方のお話です。
ちょっとお茶目な王様とか出てきてますw
…現在、夏コミの漫画原稿〆切真っ只中でして…ここんとこ毎週更新忘れそうになってますorz
次回の更新なんて…もう夏コミ前日搬入中じゃないですか!!?
更新忘れないようにしなきゃ…orz …忘れなければ来週更新になる予定です(^_^;)
そんな来週の夏コミ108の予定は…
8/15(土・1日目)「茶々組」「初心の会」東3ホール・ホ11ab
8/16(日・2日目)「ずぅこく商会」東7ホール・G44a ←自分達のサークルが落選したので相方の所に居候ですw
大冒険の新刊は入稿しましたから、確実に出ます!!…多分w
他にもいろいろ持って行きますので、良かったらぜひ夏コミ、遊びに来てくださいませ♡
ではでは。次回…来週も無事更新できましたらまたお会いしましょう。
よろしくお願いしますm(_ _)m
あと…最後にお願いがw
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