01:死闘の予感 ①
第二部「大冒険武闘大会編」第1章1話目、スタートです。
――暗い謁見の間、その玉座の前。
「――わかっておろうな」
独特な様式の重厚な…だが決して華美ではない、むしろそこまで手が込んでいない地味目な玉座に座る王は、暗い炎の様な熱情を瞳に湛え、目の前に揃う6人の若者達を見据えている。
玉座に置かれた王の左手は岩のように固く変形している。
「お前達の使命は…」
王は動く方の右手をゆっくりと掲げ、若者達の方へ向ける。
「大冒険王国の……」
ここで一息、間をあけると、若者達をゆっくりと見渡す。
そして……
「――滅亡!!!」
と一言。
…暗い謁見の間に低く響く声で彼等に命じる言葉は…あまりにも恐ろしい内容。
その言葉に動じることなく命じられた彼らは静かに跪き恭順を示す。
……果たして…大冒険王国の滅亡を願う彼等は何処の国の何者達なのか……!?
「さあ、行くぞ!!」
パシッ!と左の拳を右手で力強く受けると、弾んだ声で黒髪の少女が声を上げる。
先程、玉座の前に跪き神妙な顔で王からの言葉賜っていた若者達の一人だ。
「ダイナー達にゃ負けらんないからね! 王をさっさと殺っちまうぞ!!!」
その左の拳を掲げ、後ろに続く仲間達を振り返る。
紺色の混じるバサバサの黒髪を肩辺りで適当に切り揃えた、自分の身なりにかなり無頓着なその少女は、濃い…一見すると黒くも見える深い青い瞳を今、キラキラと輝かせている。
王から直々に賜った勅命に、かなりテンションが上がっているようだ。
嬉しさが滲み出るその表情には、彼女の素直さが現れている。
「そうですね」
その後ろにいる二人のうち、頭を綺麗に剃り上げた異様にガタイのいい男がにこやかに応える。
「王家を潰すには、王を殺すにかぎりますからね」
にこやかに…丁寧な言葉だが、言っている事は物騒である。
しかし決して悪辣な表情ではない。
ガタイだけでなく顔付きもイカついのだが、表情はむしろ柔和な優しい雰囲気である。
酷薄そうに見える小さい瞳もよく見ると碧く落ち着いたように凪いでいる。
「そうそう♡ いーこと言うわね、ミディ♡」
ガタイのいい男…ミディの言葉に機嫌よく笑う少女。
「やっぱ『将を射んとすればまず将を射よ』ってね」
「…レイア、それちょっと違うぞ」
自慢気に胸を張り怪しいことわざを堂々と唱える少女に、もう一人の男…前髪の長い鋭い目つきの細身の男があきれたように速攻ツッコむ。
「何だとぉっ!? ケチつける気かっ! ウェルダン!!!」
レイアと呼ばれた少女は瞬間湯沸かし器のように声を荒げる。
「オレは本当のコトを言ってんだよ」
ウェルダンと呼ばれた方の男もその声にさらに呆れたようにつぶやく。
ため息をつきながら軽く首を振ると、彼の長い前髪が呆れたような表情を半分隠す。
薄い茶色の…角度によってはかなり薄い金にも見える髪と暗い濃い紫の瞳の姿は、うつむき加減になるとまるで影のように周囲に埋没する。
確かに派手な容姿ではないが、埋没する程地味な訳でもない。鼻が高いとか前髪が長いとかパッと見の結構な特徴もある。
それなのにそんな風に周囲に溶け込んでしまうのは、意識してそう見せている…のだろうか。
「なにーっ」
だが、レイアはウェルダンが埋没する事を許さなかった。
さっきまでのテンションの高さのまま、その感情の方向が怒り側に向いたのか、ウェルダンに対し大声で怒鳴り散らす。
それに対しウェルダンも顔をしかめてますます呆れ返ったようにため息をこぼす。
「まぁまぁ、二人とも…」
ミディがギャアギャアもめる二人をなだめている。
「おやおや…にぎやかだね」
そんな3人の後ろから柔らかい男の声がかかる。
「……ダイナー…」
優しい響きの声なのに、声をかけられたレイアは思いっきり顔をしかめる。
「もう出撃かい? さぞや素晴らしい策を思いついたみたいだね」
目の前には白い長い魔導士用のローブを着た長身の男が立っていた。
彼…ダイナーと呼ばれた男も、先程玉座の前で王からの勅命を受けていた一人である。
癖のないサラサラな長めの金髪も煌びやかで、少し垂れ気味ではあるがスッキリと切れ長の青い瞳も美しく、ぱっと見、かなり華やかな美形だ。
その後ろには長い艶やかな黒髪を片方に寄せて結わえ、蠱惑的な黒い大きな瞳をレイア達に向ける長身の美しい女がダイナーに寄り添うように立っている。
そしてもう一人…毛先がはねた硬そうな黒髪に布を無造作に頭に巻き付け、こぼれそうな大きな黒い瞳、そして珍しい浅黒い肌の幼い子供もちょこんと後ろについてきている。
「策なんか臆病者がするもんだ!!! あたし達は正々堂々戦って王の首を取ってくるまで!!!」
レイヤはダイナーのその言葉に拳を握ると力強く声を上げる。
その言葉にダイナー達は目を見張り一瞬固まる。
そして…
くっ…と思わず笑みをこぼすと、
「そっ…そいつはいい!!」
ははははは!と思いっきり爆笑。
その完全に馬鹿にした笑い方にレイアは、むかっ…と頭に血が上る。
「さすが武人様だ。…行動派だねぇ」
くくく…とこみ上げる笑いが止まらない様子でダイナーが言葉を続ける。
「あら、失礼よ。ダイナー」
くすくすと一緒に笑う黒髪美人。
「それじゃあ、まるでこのお嬢さんがおバカだって言ってるようなもんじゃない♡」
「おいおいフライ、それは言うまでもないだろ」
「あらやだ、そーだったわね♡ 私ったらわかりきった事を」
ダイナーと、フライと呼ばれた女性はレイアを完全にバカにした様子で会話を続けている。
ぎりぎりと歯ぎしりしながらそれを聞いていたレイアはとうとう…
「……き…きさまぁ!!!」
と怒りが爆発する。
室内で剣を振り回し、きーっと暴れるレイアを、ウェルダンが必死でおちつけーっ! と羽交い絞めにして止めている。
そんな様子を慌てる様子もなく見ながら、フッ…と鼻で嗤うと、
「困った人達だ」
とダイナーは眉をひそめながら皮肉に嗤う。
「そんな単純な頭で使命を果たせるのかい?」
ダイナーのその言葉に
「くっ…」
…と、レイアは言葉を詰まらせる。
「帝皇様もさぞ嘆かれることだろうよ」
そんなディナーの皮肉な言葉に勢いづいていたレイアもとうとう止まってしまう。
「人手さえあればねぇ…。帝皇様も君達みたいな者にこんな重要な事、頼まれなかったろうに」
ふーう…嘆かわしい…と、嫌味たっぷりに追い討ちをかけるダイナー。
「こ…このヤロォ~」
止まっていた身体が、今度は怒りでふるふると震え始め、もう今にも飛び掛りそうな状態になっているレイア。
その興奮したレイアの身体を全身で止めながら、
「――ならば」
とウェルダンが問う。
「お前達の作戦を聞かせてもらおうか。そう簡単に王に近づく手があるってか?」
ウェルダンのその言葉にニヤリと皮肉めいた嗤いを口元に浮かべると、ダイナーは足元の小さな幼子にすっと手を向け、
「グリル」
とその子の名を呼ぶ。
その呼び掛けに、既に準備していたらしい紙を、さっと前に掲げるグリル。
ひょいとその紙を取り上げたダイナーは、優雅な動きで手に持った紙をレイア達の目の前に示す。
「これだよ」
その紙には……
『第一回 大冒険武闘大会』
『君こそ勇者だ!』
『優勝賞金10万G!!!』
――そう大きく書かれていた。
※下の方 ↓ に、原作マンガや同人誌が読めるサイトや、Twitter(X)のリンク先が貼られています。
よかったらぜひ、のぞいてみてくださいませm(_ _)m
第二部「大冒険武闘大会編」第1章1話目です!
新キャラ登場からの、ちょっと不穏なスタートですが…この先いつものノリに戻りますのでw、今後もよろしくお願いしますm(_ _)m
…現在、相変わらず夏コミ原稿に追われてまして…次回の更新も来週になる予定です(^_^;)
夏コミ108の予定は…
8/15(土・1日目)「茶々組」「初心の会」東3ホール・ホ11ab
8/16(日・2日目)「ずぅこく商会」東7ホール・G44a ←自分達のサークルが落選したので相方の所に居候ですw
…良かったら、大冒険の新刊も含めいろいろ持って行きますので、ぜひ夏コミ、遊びに来てくださいませ♡
ではでは。次回…来週も無事更新できましたらまたお会いしましょう。
よろしくお願いしますm(_ _)m
あと…最後にお願いがw
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