死せる孔明、主とともにガキと向き合う
【これまでのあらすじ】
「来世はのんびり碁が打ちたい・・・!」
そんな願いと共に、
猫の姿になって異世界に転生した、
三国志の諸葛亮 孔明。
そんなネコ―メイを拾ったのは、
劉備と芙蓉の兄妹。
その劉備と孔明が、
碁会所で対局していると・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「よお」
碁会所にて、
主の劉備様と共に碁を打っていたら、
背後から声をかけられた。
しかも、
いきなり
『つまらねえ碁』
などと言われて・・・。
声のぬしは主と同い年か、
あるいは少しだけ年下に見える少年・・いや、
(ガキだな・・・)
若草のように放射状にのびた薄茶色の髪と吊り上がり気味の目は、
野性味すら感じさせる。
(いかにも鼻っ柱の強そうな・・・)
前の世でも、
【猛将】と呼ばれた者たちの雰囲気に似ている。
だが、
それ以上に気になるのは・・・。
(ガキの付けている腰帯の黄巾・・、
あれは・・、
あの色はまさか・・・)
「えっと・・、
君は?」
対局の手を止めて、
主が穏やかにガキに尋ねる。
だが、
ガキのほうはというと、
「誰だっていいだろ?
あ~あ、
ここはハズレだな」
などと部屋を見渡して ため息をつく。
それに対し眉をひそめたのは、
主と対局中の大人たちだった。
「おい坊主。
いきなり入ってきて、
その態度はなんだ」
「囲碁は礼儀を大事にするゲームだぞ。
打ちに来たなら、
それなりの礼儀をだな・・」
「はっ、
くだらねえ」
だがガキは、
彼らの注意を途中で切った。
「碁ってのは勝負だぜ。
勝負事ってのは、
まず強い事が一番大事だろ。
棋力がなきゃ、
碁の本当の面白さも味わえねえ」
「何ぃ・・・」
「屁理屈こねやがって・・・」
(【棋力】・・・、
囲碁の強さか・・・)
比類なき知性により、
私はそう判断した。
(確かに、
どんな分野でも、
その真髄を味わうためには、
そこに至るまでの力が必要・・・。
ガキの言う事にも一理あるが・・・)
――いや、
『それどころでは にゃい!』
ガキの言葉に、
部屋中の空気が悪くなってきている。
(このままでは碁会所が・・、
この平穏なる場が荒れてしまう・・・)
だが その時、
私を膝に乗せていた主が、
ガキに向かって、
「ここは、
そういう場所じゃないよ」
と言った。
「他の碁会所の事は分からない。
けど、
ここは目の色を変えて強さや勝敗を競う場所じゃない。
皆で集まって、
囲碁を打つ時間そのものを楽しむための場所なんだ」
「ニャッ!」
さすが我が主!
私の言いたいことを全部言ってくれた・・・!
だが、
それを聴いたガキは、
「はっ!」
と、
さも馬鹿にしたような顔をした。
「つまらねえ碁会所だな。
対局に負けても悔しくもないってか?」
「そうは言わないよ、
勝負なんだから。
ただ・・・」
「ただ・・何だよ?」
「ここでの勝負は【戦い】じゃない。
もっと気楽に お互いの腕を試し合うものだと思う。
――棋士達の対局とは違うよ」
(【棋士】?)
またもや私の知らない言葉が出た・・・。
だが、
それを聴いたガキは、
「お前らみたいな碁打ちがいるから・・・」
と、
何が勘にさわったのか、
怒りの感情を向けてきた。
主は気づいているのかどうか、
ガキに向かって穏やかに、
「とりあえず、
あとで一局打とうよ。
せっかく碁会所にいるんだから」
そう言って、
ガキに背を向け、
「お待たせしました。
さ、
続きをやりましょう」
と、
大人たちとの三面打ち、
そして私の【代理打ち】を再開した。
「お、おう、
そうだな」
「よ~し、
ここからだぜ~」
と、
大人たちもすぐに、
盤面に集中し始める。
もう誰も、
ガキのほうへ顔を向けない。
そして、
その様子をしばらく見ていたガキのほうは、
「チッ」
と、
舌打ちをしたあと、
奥で打っている者たちのほうへ行って、
「よお、
ちょっと肩慣らしに相手してくれよ」
と、声をかけている。
言われた者たちは、
不快そうに、
「何だこのガキ・・・」
「礼儀知らずな・・・」
「ケンカ売ってんのか・・・」
と、
眉を寄せたが、
「俺に勝ったら、
美人のネーチャンを紹介してやるぜ?」
というガキの言葉に、
「な、何!
本当か⁉」
「よし!
俺が相手してやる!」
「ちょっと待て!
俺が先だ!!」
などとやっている・・・。
「フニャ~・・・」
――そして、
半刻後・・・、
「多、多谢不吝赐教・・・」
「何だ、
この坊主・・・」
「強すぎだろ・・・」
何とガキは、
大人たち相手に四面打ちで全勝していた・・・。
――だが、
主と私も、
「辛苦了」」」」」
「ニャ~」
三面打ちと【代理打ち】で勝利したのだ!
「強くなったね、
孔明」
そう言って、
膝に乗った私の背をなでる主。
「フニャ~・・・」
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「さあ、
やろうぜ」
「うん」
いよいよ、
主とガキの対局だ。
まっさらな碁盤を挟み、
向かい合う二人。
そして、
その周りを囲む観戦者たち。
「教えてやるよ・・・」
ガキがギラついた目で、
主に言った。
「お前ら腑抜け共の雑魚っぷりをな・・・」
「そう・・・」
主はそうつぶやくと、
一度息を深く吸って、
ゆっくりと吐いた。
「たまにはいいかな・・、
こういうのも・・・」
そう言って、
わずかに口角を上げた。
そして、
「請多多指教」」
対局が始まった・・・。
〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
【あとがき】
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
よろしければコメント欄で、
ご意見ご感想、
ならびに好きな三国志キャラや名シーンなど、
お書きくださいましたら嬉しいです。
そしてぜひ、
下にある『評価ボタン』や星、
作品の続きもお願いします・・・!




