死せる孔明、新たな家族と の~んびり過ごす
【これまでのあらすじ】
「来世は平穏に碁を打ちたい」
三国志の諸葛亮 孔明、
猫の姿になって異世界に転生。
そんなネコ―メイを拾ったのは、
碁の打てる二人暮らしの兄妹だった。
妹の名は芙蓉。
そして兄の名は、
劉備 玄徳・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「ニャ~」
もちろん私とて、
常に主である劉備様の仕事場に付いていっているわけではない。
家で、
妹君の芙蓉殿と過ごす日もある。
(だって・・・そうしないと妹君が、
『お兄ちゃんばかり ずるい・・・』
と、言うから・・・)
――一日のはじまり、
朝一番早いのは妹君だ。
毎朝欠かさず、
主や私のために、
美味しい朝餉を用意してくれる。
(まだ幼いのに立派な女子よ・・・)
ねぎらいの気持ちをこめて、
台所に立つその脚に顔を すり寄せる。
「ニャ~」
「はいはい、
もう少し待っててね」
『そうじゃ にゃいって・・・』
そして日中、
主が仕事で出かけている時間、
妹君は家事にいそしんでいる。
掃除、
洗濯、
家計の管理、
食材の買い出しに、
仕込み等々・・・。
その合間に、
猫である私をかまったりする。
身体をなでてきたり、
書き物の最中 膝に乗せたり、
腹に顔を埋めてきたり・・・。
「ニャ~・・・」
「よしよし。
気持ちいいですか~?」
「フニャ~・・・」
――昼をだいぶ過ぎた頃に、
主が仕事から戻ってくる。
「ただいま~」
「お帰り、
お兄ちゃん。
お疲れ様」
「ニャ~」
帰ってきた主は、
浴室で行水をしたあと、
普段着に着替えてくる。
妹君は台所で茶をいれる。
そこからは二人、
家でのんびりと過ごす。
昼間の出来事を話したり、
本を読んだり・・・、
そして、碁を打ったり・・・。
たまに近所の子供たちが、
「劉備お兄ちゃん、
囲碁を教えて~!」
などと、
やってきたり・・・。
「ああ、いらっしゃい」
仕事で疲れているだろうに、
いつも主は笑顔で迎える。
「芙蓉お姉ちゃん、
こんにちは~!」
「こんにちは!」
「こんにちは。
ちゃんと挨拶できて偉いねぇ」
妹君もだ。
「えへへ~・・・」
「お姉ちゃんも打って~」
「うん、
じゃ打とうか」
そうして、
皆で碁盤を囲んで、
囲碁に興ずる。
こういうのを【まったり】と言うのだろうか。
「フニャ~・・・」
ゴロゴロ・・・
――やがて日は暮れ、
外では烏の鳴き声が聞こえ始める。
「劉備お兄ちゃん、
芙蓉お姉ちゃん、
またね~!」
「またね~!」
「うん、またね」
「気を付けて帰ってね~」
子供たちを見送ったあと、
「そろそろ、
ご飯の支度するね」
「ああ、
ありがとう」
「ニャ~」
そんなやり取りのあと、
妹君は台所へと向かう。
この街はずれにも、
日中には野菜売りや肉売り、
魚売りなどが外を通るのだ。
夜の食事は、
その新鮮な食材を使った料理が、
机と私の皿に乗る。
その夜は、
米飯に野菜の酢漬け。
そして、
葱や生姜と共に蒸した、
大きな魚が主菜に出た。
「うわ、
美味しそう・・・!」
「ニャ~・・・!」
【メガネ】ごしに目を輝かせる主。
私も思わず よだれが・・・。
妹君は嬉しそうに、
「ふふ・・・、
今日は季節の魚が安く買えたの」
と言って、
主のあとに席につく。
「いただきます」」
「ニャ~」
私の魚は、
葱や生姜を使わない蒸しただけのものだが、
美味い事に変わりはなかった・・・。
「ごちそうさま」
「ニャ~」
「はい」
主と私の言葉に、
笑みで返す妹君。
机の食器を片付けた後、
「じゃ、
打とうか」
「うん」
「ニャ~」
と、
今度は碁盤を持ってくる。
そして、
一局打つ。
「お願いします」」
「ニャ~」
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
対局のあと、
浴室で身体を洗う二人。
もちろん一緒にではない、
念のため・・・。
朝が早いこの家は、
当然寝るのも早い。
そして寝る時は靴を脱ぎ、
土間と段差のある板の間に【布団】を敷く。
二枚の【布団】を横に並べて、
二人は床につく。
フッと灯りを消すと、
窓越しの月明かりがやけにまぶしく感じる。
「おやすみ、
お兄ちゃん コーメイちゃん」
「おやすみ~・・・」
「フニャ~・・・」
――こうして、
主たちと私の一日が終わる。
争いもない。
危機もない。
いさかいや嫌がらせもない。
ただ、
平穏だけがある。
そんな一日の繰り返し・・。
そう、
この時はまだ・・・。
〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
【あとがき】
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
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