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死せる孔明、新たな主と過ごす一日

【これまでのあらすじ】


「来世は平穏に碁《ご》を打ちたい」


 三国志《さんごくし》の諸葛亮《しょかつりょう》 孔明《こうめい》、

 猫の姿になって異世界に転生。


 そんなネコ―メイを拾ったのは、

 碁の打てる二人暮らしの兄妹だった。


 妹の名は芙蓉《ふよう》、

 そして兄の名は・・・


 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●



(今、この少年(こぞう)は何と言った・・・?)


 目の前で、猫である私のために、

 少女(いもうと)と共に家具の配置換えをしようとしている少年。


「僕の名前は劉備 玄徳(りゅうび げんとく)」


 確かに、彼はそう言った。


(劉備 玄徳(りゅうび げんとく)・・・、劉備様・・・)


 それは、

 前の世で私が仕えた主《あるじ》の名・・・。


 そして今、

 生まれ変わった こちらの世で、

 同姓同名同字(あざな)の人物と出逢った。


 しかも、

 彼は猫になった自分の言葉を解するという・・・。


(偶然・・と言うにはあまりにも・・・)

 そう思った。


 比類なき知性に加え、

 前の世では神仏を尊《とうと》び、

 占いや運勢を信じてきた私である。



(これは、運命なのではないか・・・?)




 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●



 かくして、

 私の新しい人生が始まった。


 少年(こぞう)と少女(むすめ)・・・もとい、

 主(あるじ)と妹君(いもうとぎみ)の両親は既に亡く、

 二人暮らしだそうだ。


 一歩外へと出て見れば、

 簡素な家が川伝いに並び、

 合間を縫うように木々の生えた土地。


 (平凡な街はずれ、

 といったところか・・・)


 早朝、

 日の出前にこの家の一日は始まる。


 台所から漂う朝餉《あさげ》の良いにおいが、

 主《あるじ》にとっては起きる合図だ。


「おはようお兄ちゃん。

 コーメイちゃんも」


「ん~・・・おはよう・・・」


「にゃ~・・・」


 主が浴室で顔を洗って身支度をしている間に、

 妹君《いもうとぎみ》が土間の机に、

 つくり終えた食事を並べる。


 朝は、

 たいてい汁物だ。


 良く煮えた野菜や わずかな鳥肉などの中に、

 小麦粉を練った餅(ピン)も入れた、

 腹持ちの良さそうな汤(スープ)が出る。


 猫である私には塩抜きのものが、

 土間の床に皿に盛られて置かれる。


「いただきます」」


「ニャ」


 私は皿に顔を近づけ犬食い・・・もとい、

 猫食いで ぴちゃぴちゃと食す。


(美味い・・・)


 前の世では、

 庶民には もったいないくらいの贅沢《ぜいたく》な食事だ・・・。



 ――食事のあと一息ついたところで、

 主《あるじ》は出かける。


「はい、お兄ちゃん。

 お弁当」


「ありがとう芙蓉(ふよう)。

 じゃ、いってきます」


「いってらっしゃい」


「フニャ~・・・」


 こうやって、

 妹君に見送られ仕事に出かける主。


 川沿いに並ぶ家々の前を通る道中、

 近隣の住人たちに声をかけられる事もある。


「よお、劉《りゅう》坊。

 お前もこれから仕事か?」


「ええ、おはようございます。

 お互い今日も一日、

 頑張りましょうね!」


「おう!

 今度、

 休みの日が合った時、

 じっくり打とうぜ」


「はい、ぜひ!」


 とか。


「おはよう、劉《りゅう》ちゃん。

 朝早くから偉いわねえ」


「おはようございます。

 おばさんこそ、

 朝早くからお疲れ様です」


「ええ、ええ。

 近いうち妹さんといらっしゃい。

 子供たちが、

 あなた達と打ちたがっているのよ」


 とか。



 それにしても、


 (皆、

 囲碁《いご》が好きなのだなぁ・・・)


 いや結構結構・・・。




 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 



 主の仕事は、

 樹々の手入れだ。


 早朝から昼すぎにかけて、

 近くの果樹園で働いているのだ。


 私も主についていって見たのだが、

 剪定《せんてい》した枝で出来た柵《さく》を越えた瞬間、


『ほう、これは見事な・・・』

 と、


 その先に広がる樹々の たたずまいに、

 思わず猫だましを・・もとい、

 柏手《かしわで》を打ちかけた。


「ニャ~」


 主はここの手入れを、

 園の持ち主から任されているそうだ。


 樹への水やり・肥料巻き、

 枝や実の選定、

 害虫の駆除、

 掃除等々・・・。


 実にまじめに、

 黙々と仕事に打ち込んでいる。


 作業には よく、

 前の世にはなかった道具が使われる。


 比類なき知性を持つ私としては、

 実に興味深いものだ。


(あれが枝を切る【ハサミ】というものか。

 なるほど、

 便利な道具よの。

 ただ、

 武器としては使いにくそうだが・・・)


 集中していると、

 陽が高くなるのも早い。


「ふ~っ・・・」


 真昼に差し掛かる頃、

 主はいったん作業の手を止め、

 妹君に渡された【ベントー】とやらの包みを開ける。


 中は塩ゆでした芋などの簡単な・・・もとい、

 食べやすい食事だ。


 私がそばでじっと見ていると、

 主は「ん?」とこちらへ顔を向け、


「孔明(こうめい)も食べる?」

 と、訊いてくる。


「ニャ」


「ひと口だけだよ。

 塩味が付いているから」


「ニャ~・・・」


 そうやって私は、

 主の手から直に食事を頂く。


 それを嬉しく感じるのは、

 猫の身体ゆえか・・・。



 ――芋を食べ終え、

 主《あるじ》は竹筒《たけづつ》の【スイトー】に入った水を飲むと、

「ふぅ・・・」と、一息つく。


 木漏《こも》れ日《び》さす樹々の下、

 心地よい そよ風を受けながら、


「フニャ~・・・」


「うん、

 いい風だね~・・・」


 などと、

 過ごす主と私。


 労働の時間にすら、

 こうして平穏な時間を設《もう》けられるとは・・・。


『にゃんと贅沢《ぜいたく》な・・・』

 と、

 思わずつぶやいてしまう。


 主は、

 周りの樹々を眺めながら、


「この果樹園はさ・・・」

 と、話し出す。


「果実を育てるだけじゃなくて、

 開花時期には宴席にも使われたりするんだ」


「ニャ・・・」


「うん、

 桃の樹がつ(・)ぼ(・)ん(・)で(・)きているね」


 見上げれば、

 ちらほらと淡い赤色の つぼみが見える。


 あれが一斉に咲き乱れたら・・、

 さぞかし華やかな事だろう・・・。


「宴席、やりたいね。

 桃の花が咲いたら」


「ニャ~」

 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇



【あとがき】


 ここまでお読み頂き、ありがとうございます!


「舞台設定をもう少し詳しく・・・」等のご意見ご感想、

 ならびに好きな三国志キャラなどお書きくださいましたら嬉しいです。


 できれば下にある『評価ボタン』や星、

 そして この先もお願いします・・・!

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― 新着の感想 ―
改行が多すぎて結構読みにくいこと以外は結構面白い 舞台がてっきり現代かと思ってたらそうじゃないっぽい……?
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