死せる孔明、異世界にて初対局
【これまでのあらすじ】
三国志の諸葛亮 孔明、
一匹の猫として異世界に転生する。
そんな『ネコーメイ』を拾ったのは、二人の兄妹。
そして、
兄のほうは何故か、孔明の猫語が理解できる・・・。
そんな彼が孔明に言った。
「一局打とうか」と・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
少年が机の上に、
碁盤と、そして、それぞれ黒と白の碁石が入った碁笥を置いた。
それを見た私は、
少なからず驚いた。
(私の知る碁盤とは、
若干の違いがあるな・・・)
石を打つ箇所が少し多い・・・。
前の世では、
縦横17×17の十七路盤で打っていたが、
これは19×19の・・・十九路盤・・・)
早い話、
石を打つ箇所が289から、
361に増えているのだ。
そして、
碁石も見慣れない形をしていた。
(石が、丸い・・・)
前の世では四角だった。
だが・・・、
(確かに、
丸いほうが向きを気にせず打てる・・・か。
いや・・・)
「じゃ、始めようか」
と、
向かいに座る少年が言った。
「君の石も僕が打つから、
どこに打つか言ってくれる?」
(そうだ・・・)
この猫の身体では、
碁は出来ても、
碁石を打つ事はできない・・・。
「ちょっと待って、お兄ちゃん」
と、
猫の私を腕に抱えている少女が言った。
「このコの石は わたしが打つよ。
どこに打つかだけ教えてくれる?」
「そうだね。
――じゃ、請多多指教」
「請多多指教」
そう言って頭を下げ、
対局の挨拶をする兄妹。
必然、
妹の胸に抱かれている私も、
一緒に下げる事になる。
そのやり取りの中で、
私は思い直した。
(一度は死んだ私が、
こうして再び生を受け、
平穏に碁が出来るのだ。
それだけでも感謝するべきだろう・・・)
と・・・。
――私が黒石・・・、
すなわち先番だ。
まっさらな盤上を見て、
また前の世との対局の違いに驚いた。
(置石をせず、
何もない碁盤に打ち合うのか・・・)
そう、
前の世での碁は、
対局開始時にあらかじめ、
お互いの石を盤上の決められた位置に置いてから打っていた。
だが、
今はその置石がない。
(これは、
より自由で奥が深い対局となるな・・・)
段々と、私は楽しくなってきた。
(よし、始めよう!)
新しい生での初対局を・・・!
「ニャ~」
私は少年に、
石を打つ箇所を伝えた。
左から十六番目、
上から四つ目・・・。
「16の四だって」
「はい。
えっと、16の・・・」
パチッ、
と少女の華奢な指先から打たれた黒石が、
盤上に小気味良い音を鳴らす。
猫である私の言葉を少年が訳し、
それを受けて、
少女が言われた箇所に碁石を打つ。
少女を通じて、
抱えられている私にも石を打つその感覚が伝わるようで、
何とも心地よい。
パチッ。
「ニャ~」
「16の十六」
パチッ。
・・・パチッ。
やがて、
余計な言葉はなくなり、
部屋には私の声と少年の指示・・・、
そして、
盤上に打たれる碁石の音だけが静かに続いた・・・。
――半刻ほど経っただろうか。
私と少年の・・・いや、
私たち三人の対局は終了した。
私の完敗だった。
「辛苦了」」
「ニャ~」
対局終わりの挨拶を交わすと、
少年がフーッと姿勢を崩して言った。
「驚いた・・・。
猫なのに、ちゃんと対局になったよ」
「すごいね、ネコちゃん」
少女も、
抱えていた私を机の上に乗せて言った。
私の前に、対局後の碁盤がある。
今の私の眼には、
それが一つの世界のように見える。
黒石で出来た黒の大地・・・。
白石で出来た白の海・・・。
(神と、
この兄妹のおかげか・・・)
私は改めて、
二人に向かって言った。
『少年に少女よ、
感謝する。
私は孔明。
諸葛亮 孔明と申す』
それを聴いた少女のほうはキョトンとした。
「お兄ちゃん、
ネコちゃん今何て言ったの?」
「自己紹介したんだよ。
『ボクの名前は孔明♪』だって」
少年が訳して聞かせる。
「孔明ちゃん・・・。
わたしは芙蓉。
よろしくね」
そう言って、
私のアゴをさする少女 芙蓉。
「フニャ~・・・」
ゴロゴロ・・・。
それを見た少年のほうは、
満足そうに言った。
「良かった、
このまま居ついてくれそうだね。
うちは僕と芙蓉の二人暮らしだから、
遠慮なく過ごしてね。
あ、でも厠だけは覚えてほしいな」
「ニャ~」
「うん、そうだね。
あ、あと僕は劉備 玄徳ね。
さてと、まずは木箱に砂を用意して・・・」
『――にゃんですと?』
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【あとがき】
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
「碁の説明部分をもう少し詳しく・・・」等のご意見ご感想、
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