孔明、棋院を知る
【これまでのあらすじ】
「来世はのんびり碁が打ちたい・・・!」
猫になって異世界に転生した、
【三国志】の諸葛亮 孔明。
主の劉備と共に、
棋士たちと関わるも、
その堕落ぶりに失望する・・・。
黄巾党の張飛に、
囲碁の革命に誘われた劉備だが、
その首を横に振って・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「ええっ!?
【碁盤税】!?」
「そうだ。
今後 碁盤を持つ家は、
その所持に税を納める義務が生ずる」
男の言葉に、
劉備様は あぜんとした。
台所で茶をいれていた芙蓉殿も、
不安そうに顔をのぞかせている。
「フニャ~・・・」
――男は、
税の取り立てに来た役人だった。
劉備様の説明によれば、
こうして定期的に、
各家を回っているらしい。
そして今回、
何の前触れもなく、
税が値上がりしたという。
【碁盤税】などという、
新たな税の導入によって・・・。
「・・文句は囲碁の棋院に言ってくれ。
これは、そっちから出た話なのだから・・・」
「棋院の・・・」
(【棋院】・・・)
おそらくは、
国が定めた、
囲碁の界隈を取りまとめる部門か・・・。
比類なき知性により、
私はそう あたりを付けた。
(しかし、
囲碁の部門が税にまで口を出してくるとは・・・)
とはいえ、
前の世ならばともかく、
猫となった今の私にはどうしようもない。
それは、
いち庶民である劉備様たちも同じだった。
「・・分かりました。
じゃ、これで・・・」
「確かに。
では、失礼します」
安くない額の税を払い、
役人を見送った。
「――はあ~・・・」
そして、
大きな ため息をついて机に突っ伏す。
「ニャ~・・・」
「大丈夫、お兄ちゃん?」
そう言って、
芙蓉殿は湯呑を置いた。
「ああ、ありがとう」
向かい合って、
静かに茶をすする兄妹。
だが、
その顔は決して平穏とは言えなかった。
「また、
囲碁の税が高くなったね・・・」
「ああ・・・。
碁盤を持っているだけで、
税を払わないといけないなんておかしいよ」
「ニャ~・・・」
どうやら、
今回だけでなく、
以前から税が上がっているらしい。
それも囲碁の・・・。
「お兄ちゃん、
わたしも何か働いて・・」
「大丈夫、
お金は僕が稼ぐから」
「でも・・・」
「家の事とか近所の用事、
ほとんど芙蓉に任せっきりなんだよ。
その上 働こうなんて無茶だよ」
「・・・・・・」
「僕はお金を稼ぐ仕事、
芙蓉は家の仕事、
だろう?」
「うん、分かった・・・」
『泣かせるぜ・・・』
麗しい兄妹愛に、
私の目頭も熱くなる・・・。
「どうしたの、コーメイちゃん?」
そう言って、
足元の私を抱え膝に乗せる芙蓉殿。
「よしよし」
「フニャ~・・・」
ゴロゴロ・・・。
背中に感じる芙蓉殿の指先から、
その不安な奥底を感じる・・・。
「でも、お兄ちゃん。
この先、
もっと税が上がったら・・・」
「うん・・・」
「あり得る・・よね?」
「ああ・・・。
最近の棋院は変だよ・・・」
「ニャ?」
「ああ、孔明。
棋院というのはね・・・」
劉備様は私に説明してくれた。
【棋院】。
それは、囲碁の普及や進歩を目的とした国の一部門。
国中の碁打ち達から、
棋士たり得る者を選びまとめ、
彼らの対局や仕事の管理を担うのが主な勤めという。
「ニャ~・・・」
「他にも、
囲碁の大会とかの行事や、
施設の運営もしたりするんだ」
大まかな事は分かった。
棋院とは、
囲碁の運営をつかさどる部門。
(つまり、
棋士と棋院は、
密接な因果関係にあるという事か・・・)
という事は・・・、
「ニャ~」
「え?
棋院が腐ってきているから、
棋士も駄目になっているって?
うん、そうかもね・・・」
私の言葉に、
何故か劉備様は、
苦しそうな表情になった。
「実はね、孔明・・・。
棋院には国の官吏だけでなく、
何人か年配の棋士も従事しているんだ」
「ニャ?」
「うん、
道場を弟子に譲って、
なかば引退している人たちがね」
なるほど、
確かにそういう専門の人物が属していたほうが、
官吏たちも助かるだろう。
「僕はね、
彼ら棋院直属の棋士が、
腐敗にかかわっているとは思いたくないんだ」
それは、
まだ碁打ちとして、
棋士を信じたいという事だろうか。
その気持ちは分からなくもないが・・・。
「ニャ~・・・」
「そうじゃない」
私の問いに、
劉備様は首を振る。
そして言った。
「棋院で働く棋士の一人は、
僕の師匠なんだ・・・」
〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
【あとがき】
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