孔明、書店でBLを知る
【これまでのあらすじ】
「来世はのんびり碁が打ちたい・・・!」
猫になって異世界に転生した、
【三国志】の諸葛亮 孔明。
街の碁会所で、
主の劉備と共に、
すっかり時間を忘れて対局に夢中になり・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「遅~い・・・」
外で待ちくたびれていたのだろう、
芙蓉殿は、
開口一番 そう言った。
「ごめんなさい・・・」
「ニャ~・・・」
劉備様も私も、
素直に謝る。
ついつい、
碁会所での対局に熱中して・・、
気づいた時には集合時間をとっくに過ぎていたのだ・・・。
「もお・・、
せっかく家族で街まで来たのに・・・」
「ごめん。
お詫びに好きなの買ってあげるから」
そう言って、
劉備様は通りの先に見える店を示した。
(衣服の店か。
店前にもハイカラな服が並んで・・・)
「いいの?」
「もちろん。
赤でも黒でも紫でも・・、
好きな裤子を選んでよ」
「・・裤子?」
「え?
だって、
下着を買いに来たんでしょ?
大きさが合わないからって・・・」
「っっ・・、
お兄ちゃんの馬鹿ぁっ!!!!!」
――結局、
芙蓉殿の機嫌を取るため、
劉備様は さらに、
3着もの服を買う事になった。
ちなみに、
下着のほうは無難な色と柄のものだった・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「あの~・・芙蓉・・・」
大量の荷物を抱えながら、
劉備様は言った。
「何?」
「最後に、
書店に寄ってもいいかな・・・?」
おっかなびっくり、
尋ねる。
だが、
芙蓉殿は意外にも、
「うん、いいよ」
と、
笑って許してくださった・・・。
「ニャ~・・・」
「(うん・・、
機嫌も直ったみたいだ・・・。
あ~よかった~・・・)」
と、
私たちは胸をなでおろした。
(それにしても、
【書店】か・・・。
書物の売買を行う専門の店とは・・・)
前の世では、
なかったもの・・、
これは楽しみだ。
「いらっしゃい」
(ほうほう、
これはこれは・・・)
店には書物の棚が並び、
各種様々な書が並んでいる。
「あ、
この小説。
続きが出てたんだ」
と、
芙蓉殿が嬉しそうに、
書を手に取っている。
「ニャ?」
「ほら、
コーメイちゃん。
面白いんだよ、
この小説のお話。
しかも、
値段は銅銭1枚」
そう言って、
パラパラと書の中身を見せてくれた。
『にゃるほど・・・』
(【小説】とは、
架空の物語を収めた書か)
比類なき知性により、
私は瞬時に理解した。
(それにしても・・・)
【恋愛】・・【すれ違い】・・・【男同士】・・・。
「ニャ~・・・」
少々、
読み手を選ぶ物語のようだ・・・。
「わ・・、
そんな体制で・・・。
・・え、
そんなものまで入れるの・・・!?」
・・・楽しそうに書棚をあさっている。
どうやら、
彼女のほうは、
放っておいても問題ないようだ。
――一方、
劉備様のほうは、
店内を一通り回って、
「あれ・・・?」
と、
不思議そうな顔をしている。
「・・・すみません、
囲碁の本を見たいんですけど」
「え・・囲碁?」
「はい、
できれば最新の棋譜が載ったものを」
「棋譜ねえ・・・」
劉備様の言葉に、
店の親仁は怪訝な顔をした。
「棋譜・・って、
棋士のだよね・・・?」
「ええ、
もちろん」
「まあ・・、
あるにはあるけど・・・」
そう言って、
親仁は店の奥に行き、
数冊の書を抱えて戻ってきた。
棋譜だけでなく、
『詰碁』だの『手筋』だのと、
表紙に書かれた書まである。
「囲碁の本は、
店頭には出していないんだよ」
「ありがとうございます」
礼を言った劉備様は、
さっそく一冊受け取って、
内容を確認する。
「え・・・?」
不審げな顔で、
頁をめくっていく・・・。
「・・・・・・」
「ニャ~?」
「いや・・、
何でもないよ、
孔明」
そんな劉備様の様子を見て、
親仁が言った。
「他の客も言っていたよ。
『こんな碁を打つ者が、
棋士を名乗っているのか』、
ってね」
「え・・・」
「俺には、
見ても分からないけれど・・・。
やっぱりそんなにひどいのかい?」
「はい・・・」
「そうかい・・・。
ちなみに、
そいつの値段は、
銅銭30枚だよ」
「・・・高いですね」
苦笑いを浮かべる劉備様。
銅銭30枚と言えば、
先ほどまでいた碁会所の席料、
その15倍にもなる。
「ニャ~」
「孔明も見てみる?」
劉備様はしゃがんで、
私の前で頁を開いて見せた。
「・・・・・・!
ニャ~・・・」
「うん、
芙蓉の裤子が、
50枚は買えるかな・・・」
そう言って、
劉備様は、
棋譜の書を親仁に返す。
「こっちの詰碁の本は、
いくらですか?」
「ああ、
そっちは銅銭2枚だよ」
「・・・!
普通の値段ですね」
「そっちの本は、
個人の道場から出ているものだからね」
「ああ・・・」
親仁の言葉に、
劉備様は何やら得心がいったようだ。
「ちなみに、
囲碁の書を店頭に出さないのはね、
そうすると、
税を取られまうからさ。
置いておくだけでね・・・」
「・・・・・・」
「ニャ~・・・」
どうやら、
こちらの世の囲碁稼業は、
想像以上に複雑なようだ。
――結局、
私たちは5冊の本を買って、
書店をあとにした。
【詰碁】と【手筋】の本を1冊ずつ。
残りの3冊は、
芙蓉殿が選んだ【小説】だった・・・。
〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
【あとがき】
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
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