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死せる孔明、街を歩く

【これまでのあらすじ】


「来世はのんびり碁が打ちたい・・・!」


 猫になって異世界に転生した、

【三国志】の諸葛亮《しょかつりょう》 孔明《こうめい》。


 ある日、

 主人である少年 劉備《りゅうび》は張飛《ちょうひ》との対局後、

 妹の芙蓉《ふよう》と旅行に行く予定を立てる。


 当日、

 馬車にて美しい女子と同道。


 そして、

 彼女が名乗った その名は・・・



 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●



「私は関羽(かんう)。

 関羽(かんう) 長生(ちょうせい)」


『何(にゃに)ぃーっ!?』


 黒髪の女子(おなご)が名乗った瞬間、

 私は碁会所(ごかいじょ)の時よりも驚いた。


 前の世での我が主 劉備(りゅうび)様。


 そして彼には、

 かつて義兄弟の契(ちぎ)りを結んだという、

 二人の部下がいた。


(張飛(ちょうひ)・・そして、

 関羽(かんう)・・・)


 こちらの世で、

 同じ劉備(りゅうび)という名の主(あるじ)と出逢い、

 また先日、

 碁会所(ごかいじょ)に張飛(ちょうひ)と名乗るガキが現れた。


(そして今度は・・・)


 関羽(かんう)という・・女子(おなご)!!


(あの長く立派なヒゲをたくわえていた関羽(かんう)が・・、

 でかくて ごつい中年(おっさん)の関羽が・・・)


 ――などという、

 私の葛藤(かっとう)をよそに、

 劉備様と妹君(いもうとぎみ)の芙蓉(ふよう)殿は、

 その関羽(かんう)と名乗った女子(おなご)と、

 軽く別れの挨拶をしている。


「ではな、

 劉備(りゅうび)殿に芙蓉(ふよう)殿。

 ――孔明(こうめい)もな」


「フニャ・・・」


 言われて私も手を・・いや、

 前足を上げて応えた。


「じゃあね、

 関羽!」


「またいつか!」


 劉備様と芙蓉(ふよう)殿の声に、

 関羽も鮮(あざ)やかな黒髪をなびかせ、

 背を向けたまま手を振った。


 やがて、

 その姿は街の雑踏へと消えていく・・・。


「ニャ~・・・」


 これで、

 終わりなのだろうか。


(劉備(りゅうび)様と関羽の関係は・・・)


 やはり、

 前の世とは違うのか・・・?


「良いの、お兄ちゃん?

 これで お別れで・・・」


「う~ん・・・」


 芙蓉(ふよう)殿の問いに、

 首をかしげる劉備(りゅうび)様。


「何か・・また逢いそうな気がするんだよね、

 あのコとは」


「何それ?

 分からない」


「フニャ・・・」


 再会の予感・・・。


 それも、

 前の世での関係がなせる業(わざ)だろうか。


「お兄ちゃんが それでいいなら、

 いいけど・・・」


「そう?

 じゃ、行こうか」


「うん」


「ニャ~」


 切り替えて、

 私たちは街の中へと進んでいった。


 石造りの大通り。


 人あり、

 店あり、

 露店あり。


「あ!

 お兄ちゃん、あそこの露店(おみせ)!

 あれって・・もしかして糖果(アメ)?」


「ああ、

 あれは糖葫蘆(トマトアメ)だね。

 甘く煮た櫻桃番茄(ミニトマト)を串に刺して、

 外側を糖果(アメ)で固めてあるんだ」


「番茄(トマト)を?

 へえ~♪」


「ニャ~・・・」


 なるほど・・、

 串にはそれぞれ5つの櫻桃番茄(ミニトマト)が刺さっている。


「――おじさん、

 1本ください」


「はいよ!」


 興味津々な芙蓉(ふよう)殿の様子を見て、

 劉備(りゅうび)様は糖果(アメ)の串を購入する。


「はい、芙蓉(ふよう)」


「ありがとう!」


「ニャ~」


 本当に嬉しそうだ。


 やはり どの世でも、

 女子(おなご)というものは甘いものに目がないと言う事か・・・。


(普段は食べられないものだしニャ・・・)


「んっ・・、

 美味しい・・・!」


 パリパリと、

 小気味よい音を立てながら、

 糖果(アメ)を かみ砕く芙蓉(ふよう)殿。


 そして、


「お兄ちゃん、はい」


「ん、ありがと」

 と、

 串から直接口で受け取る劉備(りゅうび)様。


「ん・・美味しいね」


「でしょ?

 あ、

 あのお店も美味しそう!」


「ええと・・、

 もしかしたら豆花(トウファ)かな」


「豆・・花?

 何それ?」


「豆乳を柔らかく固めたものだよ。

 豆腐と違って、

 糖浆(シロップ)をかけて食べるんだ。

 甘味(かんみ)だけど健康的で、

 美容にもいいとか・・」


「っ食べたい!!」


「はい・・・」


『何(にゃん)ともかんとも・・・』


 いやはや、

 平和だな~・・と、

 私は2人を見上げながら あくびをした。




 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●



「あ・・・」


 しばらく通りを歩いたところで、

 劉備(りゅうび)様が足を止めた。


 見れば『碁会所(ごかいじょ)』と看板が掲げられた建物がある。


(【碁会所】・・・)


 そう、

 囲碁(いご)好きたちが集まり、

 自由に碁を打っていく寄合所(よりあいじょ)。


 のはずなのだが・・・。


『劉備(りゅうび)様。

 看板に『席料(せきりょう)銅銭2枚』とありますが・・・』


「ああ、

 ここは街の施設とかじゃなくて、

 商売としてやっている碁会所みたいだね」


『商売・・・』


 そういうのもあるのか・・・。


「でも、

 有料って事は、

 それだけ強い碁打(ごう)ちが集まるって事だよ」


『にゃるほど・・・』


「それに、

 ほら、看板に・・・」


『え?』


 言われて見てみると、

 席料の記載以外にも、

 何か書いてある。


『毎週 陽(よう)の日、

 棋士(きし)の指導碁(しどうご)あり』。


【棋士】と言えば確か・・・。


「そう、

 囲碁(いご)を打つ事を仕事にしている人達。

 僕たち碁打ちにとっては、

 憧れの存在だよ」


『おおっ!』


 その棋士から、

 指導を受けられるのか!


 おまけに今日は、

 その棋士のいるという陽の日だ!


「ニャ~!」


「だよね?

 気になるよね?」


 などとやっていると、


「2人(・)とも・・・?」

 と、

【ジト目】で抗議してくる芙蓉(ふよう)殿。


「今日は行楽(こうらく)で来ているんでしょ?」


「はい・・・」


「ニ・・ニャ~・・・」


 猫の身体に心を引っ張られているのか、

 どうもかなわない。


 劉備(りゅうび)様とともに、

 反省の態度を示す私・・・。


 それを見た芙蓉(ふよう)殿は、

 少しして、


「もう・・ちょっとだけだからね」

 と、

 言ってくれたので、

 劉備様も目を輝かせた。


「いいの?」


「わたし、

 そこのお店で、

 月餅(げっぺい)を食べて待っているから」


『何(にゃん)ぼほど食うねん!』


 思わずツッコんでしまった・・・。


「ありがとう!

 じゃ、

 一(いっ)刻(こく)ほどで出てくるから。

 ――孔明(こうめい)、行こう!」


「ニャ!」


「またあとでね~」


 芙蓉(ふよう)殿に手を振られながら、

 私は劉備(りゅうび)様と共に、

 碁会所(ごかいじょ)の戸をくぐった。


 パチッ、パチッと、

 早くも奥から碁石(ごいし)を打つ音が聴こえてくる。


 玄関を通り中へと入ると、

 奥行きのある部屋が待っていた。


 白塗りの壁に黒塗りの縁(ふち)の・・・。


 そんな部屋に規則正しく並べられた机には、

 20台近くの碁盤が置かれ、

 碁打ちたちが真剣な表情で対局を繰り広げている。


 碁石(いし)の打ち方も皆、

 堂(どう)に入っているではないか。


(これは期待できそうだ)


 ――それにしても、

 はて・・・。


「ニャ~」


「うん、お店の人は・・・」


 私たちは、

 入り口横にある受付台(カウンター)へと目をやる。


 ・・・誰もいない。


 店の者・・【席亭(せきてい)】はどこに?


「ニャ~」


「うん、そうだね。

 ――あの~、すみません。

 お店の人は・・・」

 と、

 劉備様が言いかけたとたん、


「待ってください!

 指導料が倍って、

 どういう事ですか!?」

 と、

 声が上がった。


「当然ではないかね?

 私は先月昇段したのだから。

 だから、

 指導料も倍もらわねばな」


 見れば、

 店の奥で2人の男が言い争っているようだ。


 周りも対局の手を止めて ざわつきだす。。


(ひょっとして、

 席亭と棋士か?)


 比類なき知性を持つ私は、

 会話の内容からそう判断した。


 何やら一波乱ありそうな雰囲気だ・・・。


 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇



【あとがき】

  

 ここまでお読み頂き、ありがとうございます!


 よろしければ参考までに、

 コメント欄で好きな三国志キャラやカップリング・・もとい、

 コンビなど、

 お教えいただけましたら嬉しいです。


 この物語が気に入っていただけましたら、

 ぜひ下にある『評価ボタン』や星を、

 さらにハマっていただけましたら、

 ブックマークとともに続きもよろしくお願いします・・・!

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