死せる孔明、主の力を知る
【これまでのあらすじ】
猫の姿になって異世界に転生した、
三国志の諸葛亮 孔明。
ある日、
飼い主の劉備が孔明をつれて、
碁会所で対局していると、
生意気なガキが現れ、
『つまらない碁』と、皆を馬鹿にし始める。
問答の末、
劉備はガキとの対局へ。
やがて終局が近づき、
主はつぶやいた。
「君の2目勝ちだね」
と・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
「はぁ!?」
「ニャ!?」
これにはガキだけでなく、
膝に乗っていた私も驚いた。
(馬鹿な・・・)
まだ対局は終わっていない。
少なくとも終局まで、
まだ五十手以上残されているはずだ。
なのに・・・、
(主はそこまでの道を・・目算で導き出したと言うのか・・・!?)
まわりの観戦者たちからも、
どよめきの声が上がっている。
「・・ハッタリかましやがって・・・」
動揺を隠すかのように、
ガキは乱暴に黒石を打つ。
間髪入れず、
主が白石を打つ。
「くっ・・・」
やや長考の後、
ガキが石を置くように打つ。
間髪入れず、
主が打つ。
長考の後、
ガキが置くように打つ。
主が打つ。
そのまま【ヨセ】は続き・・、
354手で終局となった。
【白地】が35目、
そして、
【黒地】は36目だった。
黒の・・ガキの1目勝ちだ・・・。
「辛苦了」
「・・・了」
と、
対局後のあいさつをしたかと思うと、
「あ~・・、
1目間違えたかぁ・・・」
そう言って、
主は息をついて、
だらしなく姿勢をくずした。
その様を見た周りの観戦者たちも、
緊張が解けたように口を開き始めた。
「あ~、
惜っしい~!」
「ほんと、
あと1目で正解だったのに~」
「いや~、
それでもすごいよ。
ほとんど数ぴったりだぜ?」
そして、
「まあ、
さすがに最後まで完璧に読むなんて無理だよな」
「はは・・だな」
という、
結論で締めくくられた。
(違う・・・)
私は心の中で、
彼らの言葉を否定した。
(主が目算を誤ったのではない・・・。
間違えたのは・・・)
私は、
目の前のガキを見つめた。
対局に勝ったにもかかわらず、
その顔は悔しそうに盤を見ている。
そう・・、
間違えたのは主ではなくガキだったのだ。
主の膝の上で見ていた私にも分かった。
終局前、
残り14手となった時、
ガキは【ヨセ】の手順を誤ったのだ。
(違う・・、
そこはまず右下を・・・)
そこで黒は1目分 損をした。
それさえなければ、
【黒地】は主が言った通り37目となり、
黒の2目勝ちだったのだ。
ガキにも、
それが分かったのだろう。
(だから、
ああも悔しそうに・・・)
主の『1目間違えた』という言葉が、
ガキには どういう意味に聴こえたのやら・・・。
すると、
主は膝にいた私を左手で抱え、
立ちあがった。
「ありがとう。
楽しかったよ!」
そう言って、
笑顔でガキに手を差し出した。
「なっ・・・」
「ニャ・・・」
ガキは一瞬嚙みつきかけたが、
目の前の手と、
そして主の顔を見比べると、
「・・・・・・、
おう・・・」
と、
仏頂面で握手に応じた。
「ちっ、
計画がパアか・・・」
「え、何?」
「うるせえな、
何でもねえよ」
だが、
猫の私にははっきり聴こえた。
(計画・・・?)
その時、
対局を観戦していた者たちからも、
パチパチと拍手が聴こえ始める。
「あ~、
見てるこっちも緊張した!」
「ほんと、
見ごたえある対局だったぜ!」
「いや~、
いいもの見せてもらったよ!
劉備に坊主も!」
「『劉備』・・あんたの名前か」
そう、
ガキが主に訊ねる。
「うん、
劉備 玄徳」
主も、
笑顔で自己紹介する。
「劉備ね・・・。
相手にだけ名乗らせるのは何だから、
ま、
一応こっちも名乗っておくぜ」
そう言って、
ガキは自分の名前を明かした。
「俺は張飛。
黄巾党の張飛 翼徳だ」
その言葉に、
『にゃん・・だと・・・』
私は思わず聞き返していた・・・。
〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
【あとがき】
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