第9話 神に好かれし娘
帝国暦1400年11月
―ジャポーネ領アマーサキ コトネの家―
「アイ、少し付いてきてくれないか。お前に見せたい人がいる。」
「もう少しで日が昇ってきます。それからでも良いのでは?」
「いや、それではいけないんだ。日が昇っていないうちでなければ…。」
アイを説得し、とある場所に向かった。
「アオイ様。ここは?」
「ここは神社と言って、ジャポーネで信仰されている神が祀られている場所だ。帝国だと、教会にあたる施設だ」
「なるほど…。ところで、なんでこんな早い時間からこんなところに来たんですか。」
「だから言っただろう。会わせたい人がいると。ちょっとそこで待っていろ」
私は準備を始めた。地面に大きな五角形を描き、事前に持ってきていたお供え物を五角形の前に置く。
「よし、これで準備はできた。後は呼ぶだけだ。アイ、今から起こる事は他言無用で頼む。」
「それは分かりましたが今から何か起こるんですか」
「まぁ、黙って見ておけ。今から行うことは神を呼び出し、一つ願いを聞いてもらう。」
「神を呼び出す!?そんな事、可能なんですか?」
「可能なんだよ。良いから黙ってろ。儀式の邪魔だ…。」
精神を集中させる。横ではアイが驚いた顔で何か言っているようだが完全に集中した私には聞こえない。
「神よ、大いなる神よ、我の前にその神聖なるお姿をお見せくださいませ」
その言葉が終わったと同時に、漆黒の闇に包まれていた空に一つの神々しい光が差してきた。その光が完全に地に着き、その光の中から神が姿を現した。黒髪で目が大きく、どんな男でも一瞬で虜にしてしまいそうな美の神が。
「神、アイノハラノミコト(愛ノ原ノ尊)様よ。はるばる天界から我が求めに応じ、お越しいただいたこと感謝いたします。」
「アオイ、あなたに会うのは何年ぶりだろでしょうか。私はあなたに会いたいとずっと思っていましたよ。あなたにまた会えたこと嬉しく思います。」
「ありがたき幸せにございます。神は、以前会った時よりも美しくなっているようで驚きました。」
少し照れくさそうな顔をする。
「私は神なんだから、いくら年が経とうが顔は変わらないわ。けど、そういうちょっとした気遣いができる人、私は好きよ。
さて、本題に話を戻そうかしら。私をここに呼んだ理由は何なの。」
「あなたをここに呼んだ理由は、神に誓いたいことがあるからにございます。」
「へぇ~。私に誓いたいことが…。分かっていると思いますが、神に一度誓ったことは撤回できません。それにその誓いを破った場合、それ相応の罰が下ることもあります。それに神に誓ったところでな〜んのも恩恵もありません。ただあなたが損を被るだけです。それでもあなたは私に誓うというのですか?」
「はい、それでも誓いたい事があるんです。」「フフフ。アオイのそういうところ、私は好きよ。さぁ、言ってみなさい。誓いの言葉を。」
空が少し赤色になり、月が下がり、太陽が顔を出そうとしていた…。




