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第12話 悔しい!!!

帝国暦1400年12月


―ジャポーネ領ウマアリ温泉―


「アオイはん。少し手合わせしてくれへん。」

コトネのその言葉を私は待ってた。

以前、コトネと戦ったのは25年前。

その時は私が辛勝した。しかし、その後コトネは魔法のことをほっぽり出して剣ばかり鍛えていた。その成果がどれだけのものか、ぜひ見させてもらいたいと私はうすうす思っていたのだ。

私は振り返りコトネに言った。

「コトネ。前戦った時よりも剣の腕は上達したか。」

「もちろんや。あの時とは何もかも違うで。」コトネの自信に溢れた声が聞こえてくる。

「その勝負受けよう。ルールは魔法禁止、相手が重傷を負わない程度にすること。以上。要は前と一緒。これで良いか。」

「それでええで。それじゃあ、少し場所を移そっか。」

私達はコトネの後ろに付いていった。少し歩いたら背の短い草が一面に広がる野原に着いた。

ここが手合わせの会場のようだ…。


「アオイはん。一つ言っといたるけど、前と同じやとは思わんほうがええで。この日の為に、アオイはんに勝つために今まで死ぬ気で努力してきたんや。絶対に負けへんで!」

これは相当自信があるようだ…。

前回は偶然、私の一撃が当たったから良いものの、今回は前よりも私の実力は下がっているのに対してコトネのあの自信…。確実に実力が上がっている。これは下手したら…。とはいえ、まだ戦ってもいない。コトネの実力も正確には分からない。憶測で物事を判断してはいけない。思い込みは人を勝たせることもあるし、負けさせてしまうこともある…。前は勝ったんだ。今回もきっと勝つ。そう思わなければ…。

私は側にいたアイに審判を頼んだ。

そしてコトネから渡された木刀を握る。

相手はコトネ。

国内でも有数の剣の実力者。

油断はできない。

「それでは、よ〜い始め」

アイの声が響き渡る。

その瞬間、コトネが普通の者なら実態を見ることは不可能な速さで距離を詰めてきて私の背後にまわった。そして、物凄い速さの突きを食らわせてきた。

「危ない…!」

私は身体を捻り間一髪で躱す。

「さすがやな、アオイはん。この攻撃を躱すなんてな。けど次からはそうはいかへんで!」直後、頭上からまるで雷のような勢いの木刀が落ちてくる。

「あーもう、速すぎるのよ。」

ゴツン…重く、鈍い物が激突する音がする。

「アオイはん、分かってんねんで。ウチの攻撃追いつけてないやろ。降参すれば?」

「確か私はコトネの速さに追いつけていない。けど、アイのいる前で降参なんて、師匠としての威厳がなくなる。降参なんてしない。それに、私には数千年で培った技術がある。見えなくても、感覚で止められる。」

「へー。それじゃあ、受け止めてみいや!」

ゴツン、ゴツン、ゴツン…。とんでもない速度で木刀同士がぶつかり合い、とても木刀からは出るわけのない音が響く。

劣勢…だった。毎回ギリギリで受け止める。このままだといつか押し切られる…。

焦りが押し寄せてくる。

落ち着け…。感だ。ただ自分の感覚だけを信じろ。目を閉じて…、感じろ…。感じ取れ!風の音、わずかな空気の歪み、コトネの呼吸、すべてから感じ取るんだ。

ハッ!

ゴツン!ミシミシミシ…。木刀に互いの互いの全力が集まる。

これは、力勝負になる。そう思った瞬間だった。ツルン。気づいたら私の刀はコトネの刀から滑り落ちていた。

そして、コツン。

頭に木刀が当たる。

負けたのか?。

負けたんだ…。

「よっしゃあ。アオイはんに勝ったんや!よし…!

それにしてもアオイはん凄かったやん。私の攻撃を受け止める事ができる人間がいるなんて驚きやで。誇ってええと思う。」

「………」

「おおーい。アオイはん?」

うっ…うわ〜〜〜〜〜ん。うわ〜〜〜〜ん。

悔しい、悔しい、悔しい!負けるとは分かっていても、悔しい…。それに、怖い…。

「ちょっ、そんな泣くほど悔しかったん?」

「悔しいに決まってるじゃん!前まで勝っていたのに、負けるなんて、悔しい、悔しい、悔しいよ〜。うわ〜〜〜〜ん!」

「コトネ様…。」

「アイ〜。」

「アオイ様って泣くんですね。」

「アイ〜〜〜。そんなの泣くに決まってるだろ〜。」

私はアイの胸元に顔を埋めた。

「ちょっ!何してるんですか!」

「これくらい、良いだろ〜。それよりも、慰めて〜。慰めてくれないとずっと、この体勢してるからね。」

「ええ〜!そんなの酷いですよ。離れてくださいよ。」

「嫌だ〜〜〜!」

慰めないと意地でも離れないことが分かったのかむ〜〜〜〜と悩んだ後、はー。と溜め息をして「はいはい。アオイ様もすごかったですよ。」と言った。

「本当?」

私はアイの胸元から顔を出した。

「本当ですよ。あんなの私だったら一発でアウトですよ。だから、あんな攻撃を防げていたアオイ様ってすごいんですよ。」

「えへへ〜。そうかな…。」

「そうですよ。アオイ様はすごいんです。だから、私の胸元からさっさと離れてくれませんか?」

「…、なんか嫌。」

「なんか嫌じゃないんですよ!慰めたら離れてくれる約束だったでしょ!離れてください!」

「や〜だ、や〜だ。アイの胸元が気持ちいのが悪いんだ!」

「そんな暴論知りません!早く離れてください!む〜〜〜!」

離そうとするアイとそれを阻止する私とのバトルが始まった。

数分後…

「ほら、二人とも、馬鹿な事してないで温泉行くで。」

「馬鹿!?」

「馬鹿!?」

「誰が馬鹿ですって!?」

「被せてくるな!」

「被せてこないでください!」

む〜〜〜〜!

ふん!

そんなこんなで、温泉に入った私達は話に花を咲かせていた。

「そういえばお二人はどこで出会われたんですか?」

アイが幸せそうな声で聞いてきた。

「うちらが最初に話したのって確か、うちが5賢者の採用試験受けに行った時やったよな。」

「あぁ、その時だ。私が面接官でコトネが受験生だった。あの時は驚いた。何しろお前、周りが全員レーヌ語で話している中で一人だけジャポーネ語で面接を受けにきたから他の面接官達何を言っているのか全く理解できていなくて危うく0点になる所だった。結果的に私が通訳をすることでなんとか0点は防げた。けど、余計なお世話だった。お前、15歳のくせして実技は満点だったからどのみち合格していた。」

「私、実技満点やったん。初めて知ったわ。」「その後も賞金首を捕まえたり、国王の護衛をしたりして今の関係が続いている訳。まあ、私がここ20年位は引きこもっていたからその間はコトネと会っていなかったけど…。」「そろそろ、お風呂から上がろうか」

私達は脱衣場で服を着ていた。その時だった。ゴロゴロゴロという地響きがどこからか鳴り、鳴り終わったかと思えばバッシャーンと浴槽から水が何かに押し出され、一気に漏れ出した。急いで浴槽に戻るとそこにはこの旅館一つ分はある大きな龍がいた。

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