第11話 温まろう!
帝国暦1400年 12月
―ジャポーネ領アーサキ コトネの家―
「さぁ、温泉が私達を待ってるで!はよ、準備せぇよ」というコトネの楽しみを待ちきれない子どものような声が家に響き渡った。
10分後
私達は馬車に乗っていた。
「コトネ、これどこに向かってるんだ?」
「そんなもん、温泉に決まってるやないですか。」
当たり前だろみたいな顔をするコトネに私は苛立ちながら言う。
「それは分かってる。どこの温泉に向かっているのかを聞いている。」
「それ言ってもうたら面白くないやろ。それは着くまでのお楽しみやで。」
コトネがいたずらをした後の子どもの様な顔で言う。
「どうせコトネのことだからウマアリ温泉でしょ。」
コトネがはー。とため息をつき、残念そうな顔をする。
「なんでわかるん。アオイとウマアリ温泉行ったこと2回しかないのに。後、分かっても言わんのがこういう旅のお約束や。それなのになんで言ってまうん。つまらんな。」
上機嫌だったコトネの表情が一気に不機嫌になった。このままでは雰囲気が最悪になってしまう。何とかしなければ。と思っていたらアイが不思議そうな顔で聞いてきた。
「失礼ですがコトネ様。そのウマアリ温泉というのは一体どのような場所なのでしょうか。そもそも温泉とは何でしょうか。」
その質問に対して自身満々で「アイはん。温泉も知らへんの。しゃあないしこのコトネ様が説明したるわ。感謝しいや。まず温泉についてや。この辺りは火山が多くてな、その火山の熱で温められた水がこの辺りでは良く出るねん。それを温泉ちゅうねん。次にウマアリ温泉についてやったな。ウマアリ温泉はなジャポーネ三大温泉の一つでな、古くから国王とか貴族とかが気に入って入るくらい、良い温泉や。」
コトネがドヤ顔で言い終ったのを確認して補足する。
「補足する。ウマアリ温泉の歴史は深く、私が生まれた頃には既に発見されていた。つまり、4000年前には既に人々に知られていた。しかし、当時は温泉は貴重だったから王族以外は入れなかった。ウマアリ温泉に関する話は多いがその中から一つ挙げるとしたら、私が生まれる500年位前に3羽の傷ついたカラスが温泉に入っていた。そのカラスの傷は僅か数日で治っていた。という話を聞いたことがある。そのカラスはウマアリの3カラスと呼ばれているらしい。」
言い終わったところで馬車が温泉に着いた。馬車から降りて私は驚いた。
目の前にあるレーヌ城の2倍はあるであろう大きな建物に。
アイの方を見る。アイもあまりの大きさに驚いているようだ。そんな私達の姿を見てフッフッフッフッと笑い声をあげている女がいた。コトネだ。取りあえずコトネに聞いてみた。
「これは何だ。」
「アオイはん。そんなん聞かんでも分かるでしょ。温泉宿ですよ。」
「前に来た時はもっと小さかったはずだが…。」
「アオイはんのためにわざわざ大きくしたんやで。」
なんと無駄なことを…。
勝ち誇った顔をしたコトネをよそ目に私は「アイ、行くぞ。」と言い、温泉宿の中に入った。
後から急いで付いてくるコトネが愚痴を言ってくるが無視する。一応完全に無視だと可哀想なのでうん、うん、とは言っておく。
これ以上言っても無駄だと気づいたコトネがこんな事を言ってきた。
「アオイはん。少し手合わせしてくれへん。」
「………手合わせ?」




