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13話 間話・その4
彼は、霧となって人々の領域へと入っていった。
人間らしい感情や感覚は川に剥ぎ取られ、彼にはもうほとんど残されていなかった。そういった意味では、彼、というより、それ、に近かった。
そして、それ、に唯一残されていたのは、奥歯が砕けるほどの、身悶えする怒り。
人々に悪いことをしようなどという意識はなかった。ただ、信頼や友情などといったものに対して、狂おしいほどの怒りをぶちまけたかった。
信頼、友情、そんなものはまやかしだ。力の限り引き裂き、踏みにじり、粉々にしてやる。
それは、体にみなぎるあまりの力に打ち震えていた。そして、何故そうしたいのかは考えもしなかった。考えようにも、もはや生前の記憶はなかった。
覚えているのは、川に入る前にまたしても裏切られ、挙句こんな結果になってしまったことだけ。
そして、それはちょうどいい標的の存在を感じ取った。
凄惨な微笑みを浮かべながら漂っていくその姿は、悪いキリコ、まさにそのものだった。




