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初の通常業務

ご機嫌いかがでしたか?前話からかなり間が空いてしまいました。申し訳ありません。今後はきっと3〜4日おきになる気もします。筆舌尽くしがたいくらいに申し訳ない。いつものように誤字脱字等ありましたら指摘していただけると幸いでございます。

結局その日寝られたのは夜の四時…もうおそらく早朝と呼ぶ時間になってからだった。

幼馴染は顔が良いってのはわかってはいたが破壊力がここまでとは思わなかった。でも、ただそれだけではないんだろう。やはり俺は人から褒められるのに慣れていないのではなかろうか。褒められ慣れるというのも微妙な話だけれど、俺は寝る直前までそんなことを考えていた気がする。

窓から陽が差し込んでいた。今は何時だろうか。午後になっていたらまずいだろうが…。俺は洗面所に向かう。部屋の内装はアパートのような感じなのでトイレと洗面所は全部屋にある。風呂は3回(女子部屋の階)と4回(男子部屋の階)に一つずつだが。

顔を洗う、枕元で充電していた携帯を手に取り(ちなみに9時過ぎだった)、朝飯を食いに食卓に行く。いつものルーティン…食卓はどこなのだろう。とりあえず俺はルーティンを変更して先に着替えることにする。応接室に誰かしら居たら食事はどこでするのか聞けるんだが…そんなことを考えながら階段を降りていると3階との境目の部分で姐さんと遭遇した。昨日と同じ服装…なんなら俺との初対面、つまり一昨日とも服装が同じだ。もしかしてこの派手なスーツを幾つも持っているのだろうか。

「おう、奇遇だな。」姐さんがこちらに向かい片手を上げる。

「ええ。おはようございます。ところで…」

「食卓の場所か?」

「なんでわかったんですか!?」

「ああ、いや、昨日そこだけ教えてなかったからな。外食したから」

「それで…どこなんですか?」

「2階だよ。共用スペースだからな。みんな好きなタイミグで使うから。ああ、後言っとくが、朝飯は自分で用意するスタイルだからな。基本的な食材は一通り買い揃えてあるし今ならまだ炊飯器の中に米が残ってはいるだろうがな。」

「そうだったんですか…!」俺は料理が苦手だ。褒められたことでもないが。

「お前、料理苦手だろ?まだ学生だし炊事の経験少なそうだし」

「まあ…はい。」素直に認める。こんなとこで意地張っても何にもならないことくらいは俺でも理解していた。

「まあそのうちできるようになるさ。あたしも始めはできなかったからな。」

「そうですかね。そうなったら良いですが…」

「まあそんなに心配することもねえだろうな。」

既に2階には着いた。しかし姐さんは降りて行こうとする。これから仕事なのだろうか。

「外に用事ですか?」

「ああ、そんな大したもんでもねえがな。あと、昼過ぎに所長室に来い。通常業務も覚えてもらわなきゃならないからな。」

そう言い残して姐さんは言ってしまった。通常業務がどんなものなのかは気にはなったが今は先に朝飯を食べたかった。


朝飯を食べ終わった後(白米と目玉焼きというシンプルな朝食。普通に美味かった)、俺は部屋に戻った。

しかし戻ったは良いものの、何をして昼過ぎまで時間を過ごすか…。そのことを考えるのに20分ほど費やしてしまった後、俺はついに思いついた。自分の異能の把握をしなければ。あの謎の肉塊を拘束した時には確かに異能を使っていた。でもあの時は一種の自己喪失状態だった。

俺は自分の上着を脱ぎ左腕を見下ろす。肩の付け根あたりから肉体から直接根が這い出し肘の少し前あたりで絡まり立体的になり、先端には蕾のようなものもある。普通に考えたら随分痛そうだが特にそんなこともない。ただ左腕を動きやすくするためには服を切らなければならないことが少し不便だろうか。切らなくても日常生活には支障はなさそうではあるが。あの時は腕の植物が伸びてたし蕾も咲いていた。俺はポーズを取ってみたり水をかけてみたり一通り試したが特に効果はなさそうだった。血でもかけてみようかと一瞬思ったがやめておく。

さてどうしたものだろうか。そこからまた悩み十数分、俺は諦めた。

諦めて服を着て勉強やら課題やらをやることにした。勉強は好きではない。それでもやらねばならぬものだ。

そしてそこからの時間は数学の問題にすいこまれて行くことになった。

午前11時45分。対数関数に苦戦していたらいつのまにかそんな時間になっていた。姐さんとの約束は昼過ぎ…そういえば正確な時間を聞いていない。まあでも昼一番くらいには所長室に向かうのが良いだろう。なら早く昼飯を作った方がいいかもしれない。しかし何を作るか…そう考えながら2階に降りて棚を見てみるとインスタントラーメンもちゃんとあった。俺はそれを食べることにした。野菜炒めとか何かを一緒に作った方がいいのかもしれないが、その時はそんなことを気にしてはいなかった。

そして12時を少し過ぎた頃、俺は所長室に向かった。当然ドアはノックする。ノックは回数によって意味があるらしいが俺はそれは覚えていない、が一回ノックするとすぐ反応があった。

「おう、入れ。」

恐る恐るドアを開ける。中々重厚感のあるガチャリ、という音がドアノブを捻るとした。

所長室と言うからにはハイテクな設備でも置いてあるのかと思ったが、内部は大量の書類整理用キャビネットで占められていた。

「ふっ、驚いたか。殆どこの事務所で受けて解決してきた案件の書類だ。」

「ええ…すごい量ですね」

「ああ、そうだろ。あたしの誇りだよ。これは」

姐さんはそう言いながらも手を動かす。幾つかある書類を一つのファイルに入れているようだ。

「それじゃあ通常業務のうち一つを説明しよう。」

「定期観察報告。体質、トラウマ、本人の意向、そう言ったもので我々のような異能者組織に所属していない異能者も一定数いる。そういった人達を訪問し無事を確認する。公的な機関で処方される者で本人に必要な物があるなら渡す。ま、それだけ。」

「思ったよりは簡単そう、ですね。」

「そうだな。荒事に繋がることも滅多にないし、そう言う意味では安全な業務だ。本来なら人員ごとに担当を割り振るんだが…。お前は新入りだからな。担当が居ない。だからあたしの今日行くべき担当から3人ピックアップした。お前に行ってもらうためにな。」

「なあに、顔を合わせて身分を名乗って最近調子どうですかって尋ねるだけの業務だ。一人を除いてな。これがその3人のデータ入ったファイル。個人情報入ってるから無くすなよ。あと職員証もちゃんと持ってけ。あと…3人目に渡してくれ。」

そう言って姐さんはファイルと錠剤が十数粒入った袋を俺に渡す。俺が一人を除いて、とはどういうことか尋ねる前に姐さんは机に向き直り書類整理を始めてしまった。俺は部屋を退出して外出の準備をするしかなかった。


3人中2人は終わった。異能者、物々しくて厨二な響きではあるけどみんな意外と、というのも失礼かもしれないが普通の人間だった。後1人の書類、それを見た時俺は違和感に襲われた。住所が裏路地である。しかも昨日行った場所付近だ。どういうことなのだろう。どんな人なのだろう。俺は仕事、ということを抜きにしても若干興味が湧いていた。

「どうせ昨日も来たし躊躇う必要もないよなっと」

俺は裏路地に入って書かれた区画まで進んでいく。しかし区画といっても明確な区分がされていない場所である。その付近に来たは良いものもどこに行けばいいのかわからない。

その時である。比較的近くから怒声、数秒遅れて殴打の音。明らかに喧嘩である。止めた方がいいのかもしれないが、俺に止められるとも思えないし…しかし結局俺はそちらに向かうことにした。俺は一応自治体から指定されている事務所の一員なのだ。何か手伝った方がいい気もする…、何ができるかはわからないけれど。そんな矛盾したような考えを展開させながら聞こえた方へ進んでいくと当の現場に遭遇した。

行われていたのは喧嘩…というにはあまりも一方的すぎるものだった。腰を抜かしている1人の浮浪者(かなりの高齢に見える)、殴打された跡がある倒れている数人の若者。そして1人の執事服を着た青髪の若者が素手で1人の若者を締め上げていた。

「ッt……!」締め上げている若者が声にならない悲鳴をあげる。

「あの!何が起きてるかわかりませんが辞めた方が…!」早口になっているのが自分でもわかる。こんな状況でもやはりあがり症は治らない。

執事服の若者が手を離す。地面に落下した方の若者はギリギリ気絶していないようだ。

「そこの誰かわからんにいちゃんが言ってるから離してやるがな、今度ここで見つけたら、いいな?」

見た目が男性にしては高い綺麗な声だった。しかしそこに込められる憎悪と威圧は計り知れない。

締め上げていた若者はまだうまく息ができないのか喘ぎながら逃げていく。地面に倒れていた若者達も気絶はしていなかったようで次々と続いて行く。

執事服の若者は浮浪者を起こしていた。

「俺がたまたま通らなかったらどうなってたことか…。とにかく無事でよかったよ。次は気を付けな。」

浮浪者は激しく頷いた。そして去る前に執事服の若者に何か握らせる。彼は困ったように差し戻そうとしたがそれをやめて受け取った。

浮浪者が去った後彼は改めて口を開く。

「お前、誰よ?見かけねえ面だし」

俺は慌てて職員証を出そうとする。その前に彼は袋の中を覗き込んだ。

「あそこの新人ね、(シズク)なら向こう側にいるぞ。自己紹介の時には『赤色のお姉ちゃんの知り合い』って言っとけ」そう言って彼は東側を指差す。

「あ、えっと…ありがとうございます。」

「感謝する必要はない。変わり…でもないが今度あんな奴らをブン殴ってるとこ見つけても何も言うな。例えこんな場所の住民だろうと、必死に生きてる奴を嘲笑して傷つける権利なんて誰も持ってないんだから。」

「でも、やりすぎるのは…」

「あれくらいしないと、いや、あれだけしてもバカにはわかんねえんだよ。」深い怒りのこもった声

俺はそれに何も言えなくなる。そのタイミングで彼は去ろうとする。引き止めようかとも思ったけれど俺はどうすることも出来なかった。

そこから東側にしばらく進んだところに大きめのワンピースを着た少女がいた。少女、と呼べるのかは分からない。年齢は俺よりも年上に見える。しかし纏っている雰囲気は大人びているものではなく、柔らかく、不安定な年端もいかない少女のものだ。俺は彼女の前まで移動する。彼女は蓋のついたゴミ箱の上で足をぶらぶらさせており、俺が近いても何も反応しない。俺は声をかける。

四季(シキ)さんですか?」幸いなことに答えは帰ってきた。

「うん。わたしがシズクだよ?知らないお兄ちゃんはなにしにここにきたの?」

見た目に反して喋り方はひどく幼い。まるでまだ幼児のようだ。あの青髪の彼が言ってたことを実践する。

「赤色のお姉ちゃんのお使いに来たんだ。お薬も持ってきたよ。」

「こんしゅうは赤色のおねえちゃんじゃないんだね。ざんねん。」

そう言いながらも彼女がきちんと薬の入った袋を受け取る。

「おにいちゃんのことは〜なんて呼べばいいの?」

彼女が聞いてくる。透き通った、色の薄い目で。俺は咄嗟には答えられなかった。

「お花、さいてる!」彼女が俺の左腕を指差す。そこの絡まった蔦からは淡い色の花が咲いていた。名前は知らない。心なしかいい匂いもする気がする。

「だから〜お花のおにいちゃん、!」

彼女は笑顔になる。俺はどんな反応をすればいいのか分からず固まってしまう。

「どうしたの?」その様子を不審に思ったのか彼女が聞く。

「い、いや。何でもないよ。それより、シズクちゃんは今、元気?」

「うん!とっても…元気だよ!」

「そうか…。それは何よ…お兄ちゃんも嬉しいよ」幼児と話す時の言葉遣いでいいのだろうか。今のところはうまく行っている気がする。その後もしばらく離した後、四季滴(シキ シズク)は唐突に外を指差した。

「ゆーやけだ。おにいちゃんはかえらないとダメ?」

「う〜ん。そうだね。帰らないといけないかな」流石に暗くなる前には帰りたい。

「なら…」彼女が何か言いかけて口をつぐみもう一度言い直す。

「なら、赤色のおねえちゃんに、シズクのこと、おぼえてるか、きいて。やくそく、ね。」

「うん。わかったよ。」

「ありがと!お花のおにいちゃんだいすき!」

彼女は唐突に俺に抱きつく。彼女の価値観が幼児的なままというのならただのスキンシップの一環なのだろうが。身体はほぼ同年代の女性なのだ。驚いた。かなり軽かったので倒れ込むことはなかったものの。どうすればいいのかわからない。抱き続けられればいいのだろうか。しかしそんなことを考えている間に彼女は抱きついた身体を離してしまう。少し残念な気もした。

彼女は手を振っていた。

俺は大人しく裏路地を出る。とりあえず今日の業務が終わったことを知らせねばならない。あとは、姐さんに向けた質問を覚えているうちにしなくては。そんなことを考えながらの帰路の中でいつの間にか左腕の花は蕾に戻っていた。

如何でしたか。次の話は、おそらく二つ目の事件かな。前書きで書いた通り3〜4日後になってしまうとは思いますが是非…。1人でも自分の書いたものを読んでくださるというのは嬉しいものですので。次話も読んでくだされば狂喜乱舞します。

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