表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

シズクという名の少女(或いは幼女)について

申し訳ありません結局4日後になってしまいましたし、二ツ目の事件にも行きませんでしたね。申し訳ない。


いつもと同じく、誤字脱字等ありましたら指摘していただけると幸いです。

俺がポインセチア探偵事務所に帰宅したのは日没のほんの少し前のことだった。俺が応接室(今の所暇な所員の溜まり場という印象しかないが)に入るとそれに気付いた遊心(ゆうしん)先輩が俺に声をかける。

「おかえり。帰ってきたら所長室まで来てくれって八千代(やちよ)が言っていたよ。」

「そうなんですか。ありがとうございます。今から向かいますかね…」

俺は所長室に向かう。ちょっとくらい休みたい気持ちが無かったと言えば嘘になるが、遅れたと思われたり休んでいる内に忘れるのはもっと嫌だった。あと四季雫(シキ シズク)-あの不思議な少女から伝言も受けているのだし。

所長室に入ると姐さんは軽く着崩した格好で本を読んでいた。かなり失礼なことではあるが本を読むタイプの人には見えなかったからかなり新鮮だ。姐さんは入ってきたのが俺なのに気づきこちらに向き直る。

「どうだった?まあ、簡単だったろ?」

「そう…ですね。でも、聞きたいことが…」

姐さんはわかってるとでも言うように頷き俺の発言を静止し続ける。

(シズク)のことだろう。ああいう特異な例の異能者がいるってことを示したくて行かせたんだから説明はちゃんとするさ。」

そこで姐さんは一泊つき、コーヒーを一口飲んで口を開く。

「彼女は、特殊な人格障害を患っていてな。記憶こそ通常だが人格が幼児期以降発達していない。あと、それに付随して身体の発達も不完全だ。」

「人格が幼少期のまま…」

「ああ。異能が世に知れる発端となった首都近郊のテロ、その際に発生した巨大な樹木。彼女はそれを間近で見た1人だ。異能を持たない人間に強い精神的圧迫を与える効果があった、というのが研究機関が出した結論だ。それを見た時彼女は戸籍によると5歳。それを間近で見た人間の9割近くが自殺していることを考えると逆に幼いのは幸運だったかもしれないな。確固たる自我ができていなかったから。ということなのかもしれない。」

「なる…ほど?」

「その後消息不明になるもこの街の再開発中に異能者が偶然発見されてそれが彼女だったという話だ。初めて接触したのが私だからな。彼女はこちらに懐いているし…あたしにとっても印象に残ってる。」

「そう…だったんですね。」

俺はわからなかった。彼女は確かに幸せに生きてきたわけではないだろう。今まで生きて来れたのだって、自殺レベルの影響を免れたのだって、不幸中の幸いであることは確かだが、それは不幸であることが前提になっている。でも、直接見た限り彼女が現状を憂いているとか、不幸であると思っているとか、そういう風に見えなかったから。だから俺は彼女に対しどう思っていいのかわからなかった。

「まあ、という訳だ。何か、他に聞きたいことはあるか?勿論このことじゃなくてもだ。」

若干しんみりした場の空気を解そうとしたのか姐さんが話を区切ろうとした。そこで俺はまだ姐さんに言っていないことがあることを思い出した。忘れていたわけではないが、思い出したというのが正確な表現に近くなってしまうのが悔しい。

(シズク)ちゃん(さん?)…が、姐さんに、『私のことを覚えてるか』って。」

姐さんが一瞬ほお、とでも言うような表情をする。その後笑顔になり

「ははっ。そんなこと言ってたのか。じゃあ次はあたしが会いに行ってやらないとな。」

伝えてくれてありがとうな、という言葉を背に受けて俺は所長室から退出する。(シズク)という少女のこと、何故かまた咲いていた俺の左腕のこと、それを自分の部屋で考えたかった。自分の部屋に戻る前に一度応接室を経由した。何か飲み物が欲しかったからよったが、そこで遊心(ゆうしん)先輩に晩飯があと30分ほどでできると聞く。どうやら夜は基本的に彼が作っているらしい。

「あんま時間ねえかもな」そんなことを呟きながら階段を登った。そしてその独り言の通り、特に何かが思いついたり、考えが整理されることもなく晩飯の時間が来てしまった。

「頂きます。」7人の声が食堂に響く。食卓のマナーということなのかそれとも別の理由があるのか、あまり喋ることないまま食事は終わった(少し意外ではあった)。かくいう俺も、先程までの思考が頭の中で継続中だったので喋ることは無かった。

食後、俺はまた部屋に籠ることにした。応接室で談笑でもしたりしても良かったのだが、らしくもなく、今日ずっと考えていたことになる自分の異能について、もっと考えたいと思ったのだ。

しかし、これまで考えていて何も分からなかったというのに急にわかるようになる道理などない。俺は考えて、何かして、考えて、を繰り返すハメとなっていた。何故自分は今日に限ってこんな答えの出ないことを考え続けているのだろう。とうとうそんなことにまで思考が及んできて俺は自分自身でも何を考えているのかよく分からなくなっていた。

そんな時、唐突に扉がノックされ、俺は思考から現実へと戻される。誰だろう。

「はーい。どうぞー」

「失礼しまーすっと」

(いく)が部屋に入ってくる。俺は動揺した。ここは男子部屋の階なので必然、男子の先輩の誰かだろうと思っていたのだ。俺を動揺させる要素をもう一つ探すなら彼女がおそらく風呂上がりであろうことだ。パジャマを着ているし、髪に濡れかけの艶がある。俺はなんとか動揺を隠そうとしながら話しかけることにする。

「あ、…ああ。d、どうしてこの階に…?」

全然隠せていなかったと思うが、あえて気づかないふりをしてくれたのかそれとも生来の鈍感さ故か(俺は後者であると思いたい)(いく)は特にそれを揶揄うこともなく話をする。

「とねえ、蜂須賀(はっちー)が、男子風呂、最後だって伝えてくれって。自分で言えばいいのにね。野球やってるからってテレビに齧りついちゃってさ。」

俺が返事をする前に(いく)はこの部屋で疑問に思うことでもあったのか俺を見つめ首を傾げて言う。

「ところでさあ、(れん)、なんで上半身、下着だけなの…。」

「あっ…!え…」忘れていた。俺の異能、左腕の植物について色々試すために服を脱いでいた。失態だ。

「それは、その…ほら、左腕、な、何か試せることないかと思ってっ」

(いく)は興味深いと思ったのか、あわあわ、なんて擬音が浮かんでいそうな俺に対して疑問を連ねる。

「どんなこと試したの?出来てないこととかは?」

その態度に俺も少し冷静になった気がする。応答が普通になっていく。

「肥料をかけてみたり、水、熱湯、光…そのあたりかな。試せてないこと…の方が多いけどそれはモノがないからだし…強いて言えば血、かな。」

「ふうん、血ねえ。なんで反応するかもって?」

「昨日、自然と使えてた時、血っぽい…鉄錆みたいな匂いがした気がするんだ。今日咲いた時は全然違うから検討はずれかとも思ったけど。」

「なるほどねえ…」

そう言って(いく)は考え込む振りをする。幼馴染であるからわかる。このわざとらしい表情とポーズは初めから何か思いついてる時だ。

「それじゃあ、私の血を一滴かけてみるってどう?」

「何を言って…!?」

「私なら、血が流れたってそこまで問題ないでしょ?どう?」

(いく)は笑っていた。高揚が混じったような笑い。

「でもそれは流石に…」

「良いじゃん別に、当事者が良いって言ってるんだよ?ね?」

俺は折れた。こうなってる時は人の話なんて聞いてくれない。

「わかったわかった。じゃあカッターナイフでも…」

俺がそう言って切れるものを探そうとすると

「問題ないよ〜。ほらっ!」

(いく)がそう言ってポケットからカッターナイフを取り出した。しかも刃が大きいやつ。

「なんでそんなもんもって…まあ良いか…どうぞ。」

俺は聞いても答えてはくれないだろうと思って左腕を差し出す。

その瞬間、(いく)はなんの躊躇いもなく手首に刃を滑らせた。皮膚の外からでも血管が見えるところに。

血が俺の左腕の蔦にかかる。

頭痛がした。頭が痛い。左腕が熱い。鉄錆に似た匂いがどこからか香る。サクッ、ザクッそんな音がする。

俺の腕の蔦が伸びていた。途中から蔦というよりかは枝のようにしっかりとした造りになり、色も茶になる。花が、咲いていた。動脈血のような鮮やかな色。枝が脈動するように震える。

そしてその枝の先端には(いく)が突き刺さっていた。腹部、ちょうど肺の下あたりに枝が刺さっている。

俺を襲った頭痛はあっという間に引いていき、俺は自分の左腕、その植物によって串刺しになった(いく)を直視することとなる。

「っーー」絶句した。言葉を失った。何故こんなことになった。まさか急にこんな反応をするとは、そんな意味のない思考がとめどなく起きては消えてを繰り返す。

俺にとっては悠久に思える数秒が過ぎたその時

「っう〜。びっくりしたあ!中々クるねこれ!」

その声で俺は正気に戻る。そうだ。俺の誇る幼馴染は不死身だった。

「良かった…!んとに良かった!」

そう言って近づこうとするがいまだに刺さっている枝のせいで距離ができて近づけないことに俺は気づく。やはりまだ正気ではないかもしれない。

「待ってろ、すぐに外す方法を考え…」

俺が言い終わる前に(いく)は体を捻って強引に抜け出す。その時に繊維が千切れたり、皮膚が裂けたりする音が聞こえたが、(いく)は痛がる様子がない。いや、痛がってはいるのだが、それ以上に強い恍惚と高揚を感じているように見える。強いていうなら持久走を完走した時のような…?

(いく)が抜けた瞬間、腕は急速に縮まり、元の蔦に戻る。その過程で血飛沫が広がったが、床に着く前に(いく)の身体の傷口に吸い込まれる。

「大丈夫だったか…?」

その言葉に恍惚を保っていた(いく)が慌てて表情を戻す。

「ああ…うん。びっくりしたけど、中々キたし、悪くなかったよ?」

「いや、それは…なんか変な反応だな。」

軽口…?を終え俺は改めて続ける。

「このことは…姐さんに報告しないとな。お前が不死身だから良かったけど…俺の異能は思ったより危険なんだろうな。」

その言葉に焦ったように(いく)は言い返す。

「いや、さっきのは、私!そう、私が悪かったから!あんたは何も気にしなくても!ね?別に言う必要もないじゃない?」

「そう言うわけにはいかないだろ。それにこれは俺のせ…」

「じゃあ、じゃあさ!私からそれとなく伝えとくよ!?ね!あ、そうだ。前言った買い物の件、チャラにするから、それでどう!?」

何故(いく)が慌てるのか。俺はそれが分からなかったが、勢いに押されて頷いてしまう。

(いく)も言い終わった後、自分の勢いが若干おかしいことに思い当たったのか何も言わなくなって気まずそうに部屋をでようと立ち上がったが、部屋を出る前に振り向いて俺の左腕を指差す。

「あの…またこんども、それ…いや、違う、明日、改めて話、しよう。それまで姐さんには言わないでくれる…?」

それはすがるようでも、期待しているようでもあった。俺は何か言おうとしたが、この場合加害者になる俺が何か言えるはずもない。

その後しばらくして、思い出したように風呂に入って寝ることにしたが、昨日と似たような似ていなようなモヤモヤを抱え寝ることとなった。

如何でしたか。次の話は話し合いと二ツ目の事件かな…?という感じです。私の筆記力不足でいつも書くのが遅くなってしまいます。申し訳ないです。それでも…次の話まで待っていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ