経過観察
異能についての簡単な説明が含まれている話です。さらに詳しい詳細などは後々不自然でない形で描写していければと思います。なにぶん初心者なもので、この話にも、誤字脱字等ありましたら指摘していただけると幸いです。
「君個人の異能について触れるよりも先に、改めて異能についての知識の再認識をしておいた方がいいだろう。メンドくさいが、それも一応の義務なのでな。」
鬼崎八千代はそう言いながら膝の上で腕を組む。彼女なりの交渉術なのだろうか、視線は常に俺の目をまっすぐ向いている。交渉術だとしたら大成功だろう。普通に怖いから。
「異能とは一般的に法則性の超越と呼ばれる個人が保有する異常な能力の総称で…と、何だかんだ言ってもあまり意味は無いな。お前は育の幼馴染なのだろう。なら異能がどのような物なのかは少なからず目にする機会があったはずだ。」
俺は肯定の意を込めて頷く。急に話が自分に飛んだことに驚いたのか育のリンゴを皮を向いていた手の軌道が一瞬狂い、その跡に沿って赤色の血が育の手に滲む。血が病院の白いシーツに落ちようとした瞬間、巻き戻しのように血が手に吸い込まれる。薄く切れた肉が繋がり、皮が閉じる。それが育の異能だ。
「思わぬデモンストレーションになったな。まあ、続けよう。」
話を続ける。
「説明事項の二ツ目だ。異能が発言するのは10歳まで、と言う原則があった。まあ最も、お前によってその原則に『一部例外を除く』と書き加えなければいけないようだがな。」
鬼崎八千代がフッと笑う。元凶である俺はそれにどう反応すればいいのかわからない。
「また、後天的な異能の発現者は異能者との共同生活において、本人の異能が人間に対して致命的な危害を加える物では無いか、また、自身でそれを制御できるかの経過観察がつけられる必要がある。これが通常のルールだ。しかしお前の場合は例外的でな。この経過観察は通常は約半年だが…お前の場合は無期限になる。付け加えると、親や家族等との対面的な接触も許可されない。」
俺はこの辺りになってようやく「もしかしてかなり大事なのでは!?」と思い始めた。しかしまあ仕方のないことなのだろうか。今までも流されるまま生きてきたのだし、今更そんな生き方に後悔すると言っても遅い。いつだって決断しなければ他人の思惑通りに動くしかないと言うものだ。
「勿論、その間の住居は探偵事務所で用意する。身分も、探偵事務所所属になる。一応数少ない国家公認の異能者団体なんでな。こういう時には便利だ。」
鬼崎八千代は膝の上で組んだ手を直し、軽く伸びをしながら言う。
「まあ、説明事項はこれで全部だ。言っておくがこれは決定事項。変えることは出来ない。」
伸びをしながら言う部分ではないだろ…、と思ったが、幸い俺はそこまで頭が回らない訳ではなかったらしい。思ったことを口に出す事もなかった。いや、正確に言うなら口に出せるほど思っていたこともなかった。こんな状況だと言うのに自分はまだ受け身で生きて行きたいらしい。
そしてちょうど育がリンゴを切り分け終わったらしくさらに入れた状態で俺と鬼崎さんに渡そうとした時、他ならぬ鬼崎さん自身が立ち上がり口を開く。空気が重くなったような気がした。まるで透明な手で押さえつけられているように。
「アタシ達…ポインセチア探偵事務所は確かにくる者拒まずだ…。でも、流されるだけの奴に居場所を与えられるほど、余裕は無い。覚悟はしておくべきだろうな。」
「医者の話だと特に後遺症もないようだ。明日退院。これも決定事項だ。ポインセチア探偵事務所には…ここから育に案内してもらえ。」
俺は「わかりました。」その言葉しか言う事ができなかった。彼女から発せられる圧力に、見透かされている事に恐怖していた。しかし、一度流された以上、もうそれに逆らうことは出来ない。俺は鬼崎八千代-彼女の言う通りに、覚悟を覚悟を決めるしかなさそうだった。
どうでしたでしょうか。後2〜3話かけて主人公の異能が描写されて行く形になると思います。次の話は探偵事務所のメンバーとの顔合わせと初任務がメインになるかな、と思います。次回も見ていただければ私が狂喜乱舞します。




