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絆のトレーニングノート After Six:走り出す未来  作者: たまに何かを書く人
第1章 新しい始まり

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8/21

第七節 市総体と、それぞれの胸の灯火

5月下旬。部活動の練習は、市総体を目前にいよいよ仕上げの段階へと入っていた。


市の総合体育大会――通称「市総体」では、3年生たちがそれぞれの得意な個人種目でエントリーしている。バタフライ、背泳ぎ、自由形、そしてリレー種目。部内では、連日のようにタイム測定と最後の調整が行われていた。


プールサイドに緊張感が漂うなか、部長の瑞希が記録表を手に、部員たちを前に口を開く。


「今年の市総体、個人種目は各自で決定済み。メドレーリレーのメンバーは、これまでのタイムを総合的に判断して決めました」


静寂が落ちる。呼ばれる名前に、誰もが息を呑んで耳を澄ませた。


「出場は、私と3年の先輩2人、それから2年の先輩1人。そして――補欠に、白水ハル、白水ユキ」


一瞬の沈黙のあと、2人はすぐに顔を引き締め、声を揃えた。


「はいっ!」


その声には、悔しさも誇らしさも混ざった決意が込められていた。


───


練習後。5人はいつものプールサイド奥のスペースで、補強と柔軟トレーニングに励んでいた。夕暮れの光が差し込む中、それぞれが黙々と身体を動かしている。


「今日の先輩たち、すごかったね……。泳ぎがまるで芸術だった」まひろが静かに呟く。


「でも、まひろもすごいよ? 筋力もついてきてるし、フォームも安定してきた」とさちが微笑む。


「うん、二の腕とか、かなり締まってるよ」ユキがそっとまひろの腕を見て言った。


まひろは少し照れながら、自分のお腹に手を当てる。

体操服越しでも、地道に重ねてきた努力の輪郭が、ほんのりと感じられた。


「でも……まだ体力ないし、自信もあんまりないし……」


「それでも頑張ってることがすごいんだよ」とリンが力強く言う。


まひろは小さく頷いた。


「ありがと……わたし、がんばるね」


───


そして、話題はハルとユキの「補欠」への選出に移る。


「名前が挙がっただけでもすごいよ!」とさち。


「でも……正直、ちょっと複雑。中途半端みたいで悔しい」とハルがつぶやく。


「それだけ近づけてるってこと。あと一歩なんだよ」とユキが静かに言った。


「その一歩を、5人で乗り越えよう」リンが右手を差し出す。


4人の手が次々と重なった。まひろも少し遅れて、そっと手を添える。


───


市総体当日。


市内の中学校が集う大会会場。プールに響く歓声とスタートのホイッスル。選手たちは一斉に水面を割り、力強いストロークで前へ進む。


女子水泳部の先輩たちも、華麗に、そして正確に泳ぎ切っていく。さちたちはスタンドから、その様子を固唾を呑んで見つめていた。


「わたしたちも……いつか、あの舞台に立つんだ」


───


午後のメドレーリレー。出場選手たちがスタート位置に並ぶ。円陣の中、補欠であるハルとユキも輪に加わっていた。


「これまでやってきたこと、信じよう。絶対に県大会へ行くよ」


瑞希の言葉に、「おーっ!」と声が重なる。


解散の直後、瑞希がふと戻り、2人の前で立ち止まった。


「よく見ておいて。次は、あなたたちの番だから」


その言葉に、2人はまっすぐ頷いた。


「はいっ!」


───


決勝レース。第一泳者が飛び込み、チームは勢いよく走り出す。


力強く水をかくフォーム、緻密なバトンワーク。ゴールタッチの瞬間、掲示板に優勝のタイムが映し出され、会場中が歓声に包まれた。


「……すごい、本当に……!」とハルが呟く。


「行こう、私たちも。全国へ」ユキの声は静かに、だが確かに響いた。


───


夕暮れ。帰り道の5人は制服姿で歩きながら、それぞれの胸に新たな目標を抱いていた。


「ほんとに、すごかったよね……」とさち。


「私も、来年は必ず出たい」まひろが力強く言う。


「明日からまた、特訓だね!」とハルが拳を上げる。


「……明日は休みだけどね」ユキが笑いを誘い、皆が和やかに笑い合った。


彼女たちの歩みは、確かに次の舞台へと進んでいた。


挿絵(By みてみん)

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