第六節 テストとタイムと、新たな仲間
「もうすぐ……中間テストだね」
昼休み、校舎の2階廊下。窓際に並ぶ4人の姿があった。クラスは別々でも、こうして少しの時間を見つけて自然に集まるのが、もう日常になっていた。
「ほんと、緊張する……。中学校のテストって、小学校と全然違うんでしょ?」
ハルの声には、不安がにじんでいた。
「うちのクラスもみんな焦ってるよ。先輩たちは『最初が肝心』って言ってるけど、何から手をつけたらいいか……」ユキが肩をすくめる。
「ハルは、どの教科が得意なの?」さちが尋ねる。
「うーん、国語と社会の歴史かな? でも、理科の計算はちょっと……」
「それなら、理科は私が得意かも。地理も好きだったし」とさちが答えると、
「私は数学と理科。暗記より考えるほうが得意」とユキが静かに言う。
「英語なら任せて! でも……国語はまだ難しい……」リンが胸を張りつつも、表情を曇らせた。
4人は顔を見合わせ、つい笑ってしまう。
「じゃあさ、今度の休みに勉強会しようよ」とハルが提案する。
「いいね!」「やろう!」「助かる〜!」と、声が重なった。
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その週末、4人はハルとユキの家に集まった。
教科書とノートを広げ、ホワイトボードに問題を書き合いながら、お互いに教え合う。得意な教科を担当し合うことで、苦手分野を少しずつ克服していった。
疲れたらスクワットや体幹トレーニングでリフレッシュ。短い運動で頭を切り替え、また机に向かう。
「体も頭も鍛えられてる気がする……」とさちが呟くと、
「このやり方、意外とアリだね」とユキが笑った。
「勉強、ちょっと楽しくなってきた」とリン。
「ひとりだったら、こんなふうには思えなかったよね」とハルもうなずいた。
不安だったテストへの気持ちが、少しずつ自信に変わっていった。
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そして、テスト当日。
4人はそれぞれの教室で席に着き、試験開始の合図を待っていた。
(みんなで頑張ったこと、思い出そう)
合図とともに問題用紙を開き、鉛筆を走らせる。わからない問題もある。でも、誰かと話した記憶が、どこかで力になっていた。
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テストを終えた放課後、4人は水泳部の練習へ向かっていた。
「数学、思ったよりできたかも!」
「社会はちょっと微妙だけど、地理の問題は当たった!」
「英単語、ユキの覚え方でバッチリだった!」
「やっぱり、みんなでやったおかげだね」
声を弾ませながら、プールサイドへ歩いていく。
顧問の西園寺先生と部長の瑞希が話す声が聞こえ、部内には引き締まった空気が漂っていた。
「5月末の市総体に向けて、今日から本格的に追い込みをかけていくよ。タイムもこまめに測っていくからね」と瑞希が告げると、部員たちの表情が一気に真剣になる。
「三年にとっては最後の大会。気を抜くなよ」と西園寺先生のひと声で、全体が一層引き締まった。
その日、上級生たちは2レーンでタイム測定、ハル・ユキ・さちは3レーンで順番に泳ぎ、リンは4レーンで黙々とフォームの練習に取り組んでいた。
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練習後、体操服に着替えた4人は、いつものようにプール裏のスペースで自主トレを始めた。
そこへ、背後から声がかかる。
「あのっ……!」
4人が振り返ると、そこには同じ学年の女子部員――高瀬まひろが立っていた。
「どうしたの?」とさちが優しく声をかける。
「……あの、前からずっと見てたんです。みなさんが練習してるの、本当にすごくて……。リンさんと同じレーンで泳いでるんですけど、憧れてて……でも声をかけられなくて」
まひろは、少し照れくさそうに言った。
「だったら、一緒にやってみない?」ハルが手を差し出す。
「これ、私たちの“トレノ”。どんな練習をしたか、毎日記録してるんだよ」とユキがノートを見せると、
「……すごい。私も、こんなふうに頑張ってみたいです」
「なら、決まりだね!」さちがにっこり笑う。
「Welcome、チーム・トレノへ!」とリンが声を重ねた。
その日、「絆のトレーニングノート」の最後のページには、新しい仲間の名前と、新たな目標が書き加えられていた。




