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絆のトレーニングノート After Six:走り出す未来  作者: たまに何かを書く人
第4章 芽吹きの予感、光さす方へ

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第三節 気になる背中、揺れる気持ち

マラソン大会の余韻も冷めやらぬまま、季節は少しずつ進み、一月の終わりが近づいていた。


冬の朝。まだ空気は冷たいが、トレノの5人は変わらず並んで自転車通学を続けている。


「……ちょっと風がやわらかくなってきた?」


「うーん、言われてみればそんな気も……」


そんな会話を交わしながら、自転車を押して昇降口へ向かう。


さち、ハル、リン、まひろと続き、最後に昇降口に入ったユキは、下駄箱の中に何かが挟まっているのを見つけて足を止めた。


「……?」


小さく眉をひそめ、あたりをちらりと見渡す。手紙を何事もなかったかのように手に取ると、そっとカバンにしまった。


 


放課後。わずかに日が長くなってきたように感じるが、部活は下校時間に合わせて短縮メニュー。プールサイドのトレーニングスペースでは、筋トレとストレッチが行われていた。


「……ユキ、ストレッチの順番、ちょっと違ってない?」


「あ、ごめん。ちょっと考えごとしてて……」


さちが声をかけると、ユキは一瞬はっとして、少し照れたように笑った。


その様子を、近くにいたハル、まひろ、リンも見ていた。


(ユキ、今日……ちょっと上の空じゃない?)

(集中力が、いつもよりない気がする……)


 


──その夜、白水家。


双子の部屋には、それぞれの荷物が整然と並んでいた。ハルは髪を乾かしながら、ユキのベッドに腰を下ろしていた。


「ねえ、ユキ。今日……なんか調子悪かった?」


ユキはベッドに寝転がり、少しだけ目を開ける。けれど、すぐにいつもの涼しげな表情に戻る。


「ん? 別に。ちょっと考えごとしてただけ」


「そう……?」


「……いつも通りよ」


それ以上は何も言わず、また静かな時間が流れる。


(……やっぱり、なんか変だよね)


 


──翌日の放課後。


「じゃあ、また明日〜!」


帰りの挨拶が終わり、さちは自分の教室を出て、ユキのクラスの方へと歩いていた。


すると──廊下の端。教室の後ろ扉の影から、誰かがそっと中をのぞいている。


「……ハル?」


「シーッ!」


慌てて口元に指を立てるハル。


「昨日からさ、なんかユキの様子が変でさ。ちょっと気になって」


「気になって、って……探偵ごっこ?」


さちがあきれ気味に笑ったちょうどその時、まひろも廊下に出てきた。


「何してるんですか?」


「いや、ちょっとユキ観察会中……」


3人は気まずそうに顔を見合わせたあと、自分たちの教室に戻り、机を囲んで小さな作戦会議が始まる。


「どう思う? ユキ、なんか隠してる?」


「うーん……体調って感じじゃなさそうだし」


「もしかして……恋とか……?」


まひろのぽつりとした一言に、空気が変わる。


「そういえば、初詣のおみくじ……“恋愛運:思わぬ出会い”って書いてたっけ」


「まさか、あのユキが……恋!?」


「清楚系って、意外と人気あるんだよね〜」


「いやでも、私の方が……魅力あるって思ってたのに!」


「ハルの“恋”……つまり“春”は、まだ先ってことか……」


「……うまい!」


「やかましい!」


笑いが弾けるなか、どこか本気のまなざしも混じっていた。


 


──その夜、再び白水家。


夕食を終えて、ハルがシャワーから戻ると、部屋にはまだユキの姿はなかった。


ふと、ユキの机の上を見ると──教科書の間に挟まれた一枚の封筒が目に入る。


(……これって)


軽く周囲を確認して、ハルはそっと封筒を手に取った。


そこには、短くこう書かれていた。


「2月10日の放課後、体育館裏で待ってます」


(やっぱり……)


ハルは小さく息をのむと、封筒を元の場所に戻し、無言で自分のトレーニングマットを広げた。


「……よし、筋トレしよう……!」


いつもより少し強めに腹筋を始めたそのとき、ユキが部屋に入ってきた。


「……え? シャワー浴びたのに、またトレーニング?」


「ん? ちょっと、体動かしたくなってさ。はは……」


ユキは首をかしげながらも、それ以上は何も聞かずに自分のベッドへ。


部屋の中には、少しだけ不思議な空気が流れていた。


 


──そして、物語は静かに、2月10日へと向かっていく。


挿絵(By みてみん)

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