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絆のトレーニングノート After Six:走り出す未来  作者: たまに何かを書く人
第4章 芽吹きの予感、光さす方へ

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第二節 駆け出す冬、並んだ歩幅

一月のある放課後。外では冷たい風が吹く中、水泳部のメンバーは空き教室でストレッチとトレーニングを始めていた。


そのタイミングで、担任であり水泳部顧問でもある西園寺先生が、ジャージ姿のまま軽く手を振って近づいてくる。


「よーし、お前ら〜。今年も市民マラソン大会、エントリーの時期が来たぞー」


ざわめく部員たちを前に、西園寺先生はいつもの気だるげな口調で続ける。


「運動部は原則参加な。水泳部も例年通り出場するぞ。澪、参加者名簿の取りまとめ頼むな。来週末が締切。……以上!」


「はーい!」と、澪がすかさず返事をする。部員たちも頷きながら、ランニング前のストレッチに取りかかっていた。


 


その告知を聞いたとき、リンは去年のことを思い出していた。


まだこの中学に入学する前、さち・ハル・ユキの3人は、所属していたスイミングスクールから団体で出場。一方で、リンは個人エントリーで市民マラソンに参加していた。


「……去年は、個人エントリーだったから、ちょっとだけ孤独に感じたんだよね」


リンがぽつりとつぶやく。その言葉に、さちはふっと微笑みながら応えた。


「今年は、みんな同じ水泳部として一緒に走るから大丈夫だよ」


その言葉に、リンはそっと頷いた。


 


それから、練習メニューの一環としてランニングが加わった。寒空の下、校庭の外周をぐるぐると走る部員たち。


「ハァ……ハァ……長距離って、短距離とは違うね……」


「リズムが大事よ。呼吸と歩幅、その両方を意識して」


ユキが冷静にペースを刻む。まひろは息を弾ませながらも頷いた。


「大丈夫、ついていけてる……!」


「私、持久走少し苦手だけど……でも、嫌いじゃない」


リンは淡々と、それでもまっすぐ前を見据えて走り続ける。


「さち、去年より速くなったよね?」


「うん……走るの、きつくない。前より、自分の足で前に進んでる感じがする」


澪は一歩先で部員たちを引っ張りながら、振り返って笑った。


「いい感じだね、みんな!」


 


──大会前日。


いつものプールサイドのトレーニングスペースに集まった6人は、澪の掛け声で輪を作った。


「明日、いよいよ本番だけど。目標は一つ──全員、走りきること」


「順位より、チーム全員でゴール。それが一番!」


「でも、ちょっとくらい上も狙いたい……よね?」


ユキが控えめに笑い、ハルが拳を握る。


「10位以内入れたら、すごくない!?」


「……うん、やれるだけやろう。走るのは、自由だから」


さちの言葉に、誰もが静かに頷いた。


 


──そして当日。


澄んだ冬空の下、市の陸上競技場には多くの参加者が集まっていた。


「うわー、結構人いるね……」


「去年より多いかも……」


「でも、こういうのも悪くないよね。みんなで走るって」


気温は低いが、日差しは思ったより暖かい。水泳部員たちはウォーミングアップを終え、スタートの合図を待っていた。


参加するのは5キロの部。水泳部全員が揃っての出場だ。


「よーし、みんなで走り切ろう!」


澪の声に、全員が気合を入れる。


 


スタートの合図が響くと、ランナーたちは次々に走り出した。


最初は周囲のペースに流されそうになりながらも、それぞれが自分のリズムを探り始める。


 


2キロ地点。まひろは一定のペースを保ちながら、呼吸を整えていた。隣を走るリンの姿に、言葉はなくとも心強さを感じている。


後ろからは、さちと澪の足音が近づいてきた。


「お、いい感じだね」


「うん、ばっちり!」


仲間の姿が見えるだけで、不思議と足が前に出る気がした。


 


残り1キロ。


先を走っていたハルとユキが、ふと後ろを振り返る。


「……さちたち、来てる!」


ハルとユキのペースに必死に食らいつき、やがて6人の呼吸が合い、足音も揃っていった。


「行こう、みんなで──!」


声をかけたのは、さちだった。


冬の風の中、6人の足音がリズムを刻む。誰かが誰かを引っ張るわけではなく、ただ一緒に、同じゴールを目指して。


 


ゴールが見えてきた。競技場のアーチの先、応援の拍手が耳に届く。


ラストスパート。


誰かが先を急ぐでもなく、誰かが遅れるでもなく、6人はぴたりと並んでゴールを駆け抜けた。


 


「はあっ、はあっ……!」


呼吸を整えながら、さちは隣を見る。全員が、顔を赤らめながらも笑っていた。


「走り切ったね……!」


「うん! みんなで、ね!」


「去年と違って、今年は……すっごく楽しかった!」


リンの言葉に、みんなが頷いた。


ゴールの向こうに、澄んだ冬空が広がっていた。


それぞれの足で──でも、同じ歩幅で。


彼女たちは、今日もまた、一緒に進んでいた。


挿絵(By みてみん)

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