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絆のトレーニングノート After Six:走り出す未来  作者: たまに何かを書く人
第4章 芽吹きの予感、光さす方へ

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第一節 始まりの鐘、願いの空へ


元日──。

日付が変わって間もない深夜。澄んだ冬の空に星が浮かび、冷たい空気が街を包んでいた。


白い息を吐きながら、神社の前に5人の姿があった。さち、ハル、ユキ、リン、まひろ。そこへ、自転車を止めて駆けつけてきたのは、水泳部の部長・澪だった。


「ごめん、ちょっと遅れた!」


「大丈夫ですよ。私たちも今ちょうど着いたところなので」


「寒い〜。でも、やっぱり新年って感じがするね」


「うん、そうだね」


並んで鳥居をくぐり、静かな境内へと向かう。

薄暗い中、焚き火の明かりが揺れ、参拝に訪れた人たちの話し声が静かに響いていた。


6人は手を合わせ、心を込めて一礼する。


(今年も、みんなで頑張れますように──)


お参りを終えたあと、さちは手をこすりながらぽつりとつぶやいた。


「……いよいよ、また一年が始まるんだね」


「うん。去年はいろんなことがあったけど……今年はもっと頑張れたらいいな」


「私はもっと泳ぎが上手くなれますようにってお願いした」

「私は怪我しませんように……あと、筋肉のバランスが整いますようにって」


リンが真顔で答えると、全員がくすっと笑った。


「私は、練習のとき声を出す勇気が出ますようにって……」とまひろ。


「私は……秘密」


ユキが口元に指を当てて微笑む。


「えーっ、なんで秘密なの〜!」


「言ったら叶わなくなるって、言うでしょ?」


「それ、おみくじじゃない?」


「……ってことで、引こうか。おみくじ!」


全員で並び、おみくじを引いてそれぞれの紙を広げる。


「中吉!悪くない!」


「私は……大吉!」


「小吉……微妙?」


「でも書いてあることは結構良さげじゃん?」


笑いながら読み進める中、ユキがじっとおみくじを見つめていた。


「……“思わぬ出会いにより、心揺れることがあるでしょう”……?」


「それ、恋愛運のとこでしょ?」


「“静かに待つが吉”って書いてある」


「えっ、えっ、ユキに恋愛フラグ来てるってこと!?」


「……ふふ、どうだろうね」


少しだけ頬を赤らめて笑うユキ。その表情に、全員が微妙にざわついた。


「これは……波乱の年になるかも?」


「これは年内に進展ありと見た!」


「さち、どう思う?」


「えっ、えっと……ユキが誰かと……? でも、なんか、ちょっと楽しみかも」


冷たい空気の中、笑い声が弾ける。

彼女たちは、それぞれの願いと少しの期待を胸に、新しい年の始まりをかみしめていた。


──


そして、冬休みが終わり、3学期が始まった。


年が明けてからの最初のホームルーム。

西園寺先生は、いつも通り気だるげな表情で話しながらも、どこか新年らしい熱を帯びていた。


「配布物は後ろに回して〜、あと、廊下の掲示も見とけよー。部活の予定とか出てるからなー。……ってことで、3学期の、はじまりはじまり〜」


クラスのざわめきの中、さちはふと窓の外を見た。

まだ雪の残るグラウンド。その向こうには、再び走り出す毎日が待っている。


──


放課後、水泳部のトレーニングが再開されていた。

まだ下校時間が繰り上がっていることもあり、この時期は主に筋力と体力強化が中心のメニューだ。


トレーニング後、澪が全員に声をかけた。


「よし、せっかくだから、今年の目標……一言ずつ言ってみようか!」


まずはハルが、軽くストレッチをしながら口を開く。


「私は……やっぱりリレーで勝ちたい! あと、今年こそ背泳ぎでユキに勝つ!」


「ふふ、それなら私は、誰にも負けない泳ぎを目指すよ」


「私は……もっとフォームをきれいにしたい。速さよりも、まずは丁寧に」


まひろは小さくうなずいて、「練習のときに、自信を持って声を出せるように……がんばる」と静かに語った。


リンは「今年も筋肉に正直に生きます!」と真顔で言い、みんなが笑い出す。


最後にさちは、少し考えてから口を開いた。


「私は……誰かに追いつくとかじゃなくて、自分がちゃんと前を向いていけるようにしたい。今年も、全力で」


その言葉に、澪がやさしく頷く。


「うん、いい目標だね。じゃあ、私も言おうかな。今年は……もっと、後輩と一緒に走りたい。先輩だからじゃなくて、仲間として」


部室に差し込む冬の光が、ほんのりと6人の顔を照らしていた。


新しい年が、また始まった。

彼女たちはそれぞれの目標を胸に、春へ向かって、静かに走り出していた。


挿絵(By みてみん)

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