表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絆のトレーニングノート After Six:走り出す未来  作者: たまに何かを書く人
第3章 翔ける絆、未来へのレーン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/37

第四節 交差する想い、未来へつなぐバトン

十月。空気は少しずつ秋の色を帯び始め、校舎の窓から見える木々も赤や黄色に色づきは

じめていた。

季節が変わっても、プールの中に宿る熱気は薄れることなく、県新人戦へと駒を進めた水

泳部の練習は一層密度を増していた。

放課後。プールサイドでのトレーニングを終えた部員たちは、体育館裏にあるトレーニン

グスペースへと足を運ぶ。

そこには、すっかり恒例となった光景があった。

部長の澪をはじめとする2年生数名、そして1年生チーム・トレノの5人。

誰ひとり手を抜くことなく、自分の課題に向き合いながら体を鍛えていた。

「ユキ、また腕太くなってない?」

「ハルこそ、三角筋のカットが前よりくっきりしてるよ」

「えっ、ほんと!? やったー!」

先輩たちも混ざって、お互いの変化を素直に認め合い、励まし合う空気が自然と広がって

いた。

そのとき──

トレーニングスペースの入り口に、ひとりの人物が姿を見せた。

「瑞希先輩!」

澪が声を弾ませて呼びかける。

そこに現れたのは、夏まで水泳部を引っ張ってきた元部長、瑞希だった。

「お疲れさま! お、みんな頑張ってるね~」

「先輩、戻ってきたんですか?」

「ううん、受験勉強の息抜き。ちょっと体を動かしたくなっちゃってさ。……市の新人戦、

すごかったって聞いたよ。澪、よくまとめてるじゃん」

澪は照れくさそうに笑う。

「いえ、まだまだです。でも、トレノの5人が入ってから、部の空気が変わったんです。み

んな、すごく刺激を受けてて……」

「へぇ、そうなんだ」

瑞希の視線が、さちたちに向けられる。

……ほんとだ。みんな、顔つきも体もすっごく変わったね。なんか、嬉しくなっちゃっ

た」

そして、にっこりと笑って、

「せっかくだし、私も混ぜて? ちょっとスッキリしたくてさ」

「もちろんです!」

「一緒にやりましょう!」

瑞希は輪に加わり、久々に仲間たちと汗を流す。

腹筋、スクワット、腕立て──その動きは現役時代と変わらぬキレを見せていた。

その合間、澪がぽつりと尋ねる。

「先輩、進路って……決まったんですか?」

「うん。スポーツ推薦で、水泳部のある公立高校を受ける予定。成績も残せたし、何より水

泳がやっぱり好きだから」

「先輩なら絶対大丈夫です!」

「推薦がダメでも、水泳ができる高校には行くよ。それくらい、今でも泳ぐのが好きなん

だ」

その言葉に、さちは小さく目を見開く。

私たちも──いずれ進路を決める時が来るんだ

帰り道。夕暮れに染まる校庭を、5人は並んで歩いていた。

「瑞希先輩、かっこよかったね……」

さちがぽつりと呟く。

「でも、わたしたちもまだまだ負けてられないよね?」

ハルが笑いながら言い、ユキが続ける。

「いつか、違う道を選ぶ日が来たとしても……きっと、この絆は消えないよ」

「わたしも、ずっと一緒がいい」

リンがまっすぐに言った。

さちは空を見上げ、決意を込めてうなずいた。

「私、決めた。県新人戦も、その先も……もっと強くなって、みんなと一緒に進んでいきた

い」

──そして迎えた県新人戦当日。

メドレーリレー:背泳ぎ・2年の先輩、平泳ぎ・澪、バタフライ・リン、自由形・さち。

予選から激戦が続く中、彼女たちは息の合った泳ぎで接戦を制し、決勝へと駒を進めた。

決勝レース。スタートから熾烈な争い。

先輩の背泳ぎが食らいつき、澪の平泳ぎがリズムを崩さずキープ。リンのバタフライが一

気に差を縮め──そしてさちが、全力で水をかく。

バトンを、絶対に未来へ

仲間の想いを背に受けた泳ぎは、最後の一掻きまでブレなかった。

──結果。わずか0.3秒差で、3位入賞。

チームは表彰台に立ち、県新人戦でも爪痕を残す結果となった。

個人種目でもそれぞれが健闘した。

ユキは背泳ぎ、ハルは自由形で決勝へ。

惜しくも入賞は逃したが、互いにベストを尽くしたその泳ぎに、悔いはなかった。

まひろも平泳ぎで粘り強く泳ぎ切り、自己ベストを更新。

その背中に、確かな成長が刻まれていた。

大会終盤。選手控え室のベンチに、トレノの5人が並んで腰を下ろしていた。

「次はもっと、上を目指せそうだね」

「うん。私たちなら、きっといける」

「また一緒に、頑張ろうね」

それぞれの言葉に、さちは静かに頷いた。

「ありがとう、みんな。……まだまだ、ここからだよね。いつまでも、同じチームでいられ

るように──私も、もっと頑張る」

この日。

チームトレノの絆は、さらに深まり、そして新たな扉を開いた。

──物語は、次なる舞台へと進んでいく。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ