第十節 走り抜けた、その先に
夏休みが明け、校内ににぎわいが戻ってきた。
久しぶりの教室には、少し日焼けした顔、たくましくなった腕、そしてどこか自信を帯び
たまなざし──夏を越えた仲間たちの変化が広がっていた。
2学期が始まってまもなく、体育祭が迫っていた。
「さて、来たる体育祭の種目を伝える。よく見とけー」
理科の授業中、クラス担任でもある西園寺が気怠そうに言いながら、資料をめくる。その
表情はいつも通りだが、目だけはどこか真剣だった。
「全員参加の徒競走に、クラス対抗の三十人三十一脚、大縄跳び、そしてリレー。希望者参
加の持久走に、ソーラン節と組体操。……あと、運動部対抗リレーもあるからな」
教室がざわめく中、さちは自然と身を乗り出していた。
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休み時間。
廊下の一角に、さち、ハル、ユキ、リン、まひろが集まっていた。
「持久走、わたし出るよ。長距離得意だから」
まひろが自信ありげに言うと、さちがうなずく。
「私も出てみようかな。リレーも出たいし……団体種目も面白そうだしね」
「ユキはソーラン節でしょ? 小学校の時も出てたじゃん」とハル。
「うん。あと、今年は組体操にも挑戦しようと思ってる。ハルもでしょ?」
「もちろん。目立つやつは、やっとかないと!」
「私は大縄かな。ジャンプ力、前より上がってる気がする!」
リンが腕を上げて笑う。
5人それぞれが、自分の挑戦を選び、想いを交わしていった。
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放課後の水泳部。
部長の澪が部員を集めて話す。
「運動部対抗リレーについて、顧問の先生から連絡がありました。1・2年生それぞれ3人
ずつ代表を選んで出場することになりました」
「メンバーは、明日の放課後に50メートル走のタイムを測って決めるそうです。みんな、
がんばってね!」
澪の声に、部員たちは真剣な表情でうなずいた。
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翌日、タイム測定。
結果──1年生の代表に選ばれたのは、さち、リン、まひろの3人。
2年生は、澪ともうひとりの先輩、そしてハル。
ハルとユキは同じ1年生だが、ハルは先輩枠として2年生チームに入ることになった。
「やったね、さち! わたしたち、リレーメンバーだよ!」
「うん、がんばろうね!」
拳を合わせるように喜びを分かち合う5人。
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週末の午後。
リンの家のトレーニングルームで、いつものように筋トレに励むチーム・トレノの面々。
「さすがに、もうこのメニュー慣れてきたね」
「でも、筋肉は嘘つかない。やったぶんだけ強くなるからね」
腕立て、体幹、ジャンプトレーニング……4月より明らかに鍛えられた体を、自然に見せ合
い、言葉でたたえ合う。
「さちの背中、すごくなってきたね。フォームも安定してる」
「まひろも肩周りに筋肉ついてきた! 平泳ぎに効いてると思う」
変化を認め合うそのやり取りが、次のステップへ進む力になっていた。
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そして迎えた、体育祭当日。
少し秋の風を感じる晴天のもと、グラウンドには歓声が響いていた。
徒競走、大縄跳び、ソーラン節──どの種目にも、全力の笑顔と声援があふれていた。
クラス一丸となって取り組むなか、いよいよ最終種目・運動部対抗リレー。
女子の部。陸上部、卓球部、テニス部、バレー部、バスケ部、そして水泳部。
ピストルの音とともに、走者が一斉にスタートを切る。
さちは、緊張しながらも呼吸を整え、集中して走った。
隣には陸上部。やはり速い。
だが、水泳部も食らいついていく。3位でバトンをつなぐ。
さちからまひろ、まひろからリンへ──1年生の3人がつないだバトンは、2年生チーム枠
のハルへと渡った。
「いけーっ、ハルー!!」
観客席から響く声援。
ハルは爆発的なスピードで差を縮め、次の先輩につなぐ。
そして最後はアンカー・澪。
直線で鋭く加速し、テニス部を抜き去って──
フィニッシュラインへ。
「やったあああ!!」
水泳部は見事、堂々の2位でゴールした。
さちたちトレノのメンバーと、2年生の先輩たちが肩を組み、喜びを分かち合う。
「最高のリレーだった!」
「がんばってきたかい、あったね!」
「
……うん、楽しかった!」
照りつける太陽の下で交わされた笑顔。それは、仲間とともに積み重ねてきた日々の証だ
った。
次の目標は新人戦。
仲間とともに、また新たな挑戦が始まる──。




