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絆のトレーニングノート After Six:走り出す未来  作者: たまに何かを書く人
第3章 翔ける絆、未来へのレーン

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22/22

第一節 つながる熱、選ばれし泳者たち

夏が過ぎ、秋風が校舎をかすめるようになった。

朝の教室に入ると、制服の袖を少しだけ引き伸ばす生徒たちの姿が目立ちはじめる。二学

期が始まってから数週間。賑やかだった体育祭の余韻が薄れつつあり、水泳部には新たな

目標が掲げられていた。

──新人戦。

三年生の引退後、初の公式戦。

そして、トレノの五人にとっては、中学に入って初めての「本番」でもあった。

放課後。プールサイドには、水泳部員たちが整列していた。前に立つのは、部長の澪と顧

問の西園寺。風に揺れる水面の音と、遠くから聞こえる部活動の掛け声が、夏から秋への

季節の移ろいを感じさせていた。

「それでは、新人戦に向けたエントリーと選考について、詳しく話します」

澪が一歩前に出て、真剣な表情で口を開いた。

「まず、今日から三日間、全員の個人メドレーを計測します。そのスプリットタイムをもと

に、各自の得意種目を確認し、出場種目を決定します」

部員たちが静かにうなずく。

「さらに──このチームから、メドレーリレーに出場する4人を選出します。2年生6人と

1年生5人、合計11人の中から選びます」

一瞬、緊張が走った。

さちはそっと隣を見る。ハル、ユキ、リン、まひろ。仲間たちの表情には、不安よりも強

い意志が宿っていた。

「3年生が引退してから、これが新体制での初陣だ」

横から、西園寺が落ち着いた声で続ける。

「1年生にとってはデビュー戦になる。けれど、気負いすぎるな。やってきたことを信じ

て、それぞれがベストを尽くすんだ」

「はいっ!」

全員の声が、夕空に力強く響いた。

その日の練習では、慣らし泳ぎの後、すぐにタイム測定が始まった。

50メートル自由形──

まずはリンが水面を切るように飛び込み、体をしならせて泳ぐ。続いて、さち、ハル、ユ

キ、まひろ。次々と水をかく音がプールに響いた。

それぞれの種目──背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形。

個人メドレー形式でスプリットタイムが記録されていく。

部員たちは、自分の番が終わるとすぐにタイム表とにらめっこし、仲間の泳ぎに目を向け

ていた。

練習の最後。部長の澪が再び全員を集めた。

「今日の記録と、これまでの実績をもとに、明日、出場種目とリレーメンバーを発表しま

す。みんな、おつかれさまでした!」

「ありがとうございました!」

その後、トレーニングスペースには自然とトレノの5人が集まっていた。

「はあ……泳ぎきった~!」

さちが腹筋マットに寝転び、息を吐く。

「でも、けっこう良いタイムだったと思うよ? 自由形の前半、かなりスピード乗ってた

し」

ハルがマットを敷きながら言い、ユキも小さくうなずいた。

「今日のさちは、フォームが崩れてなかった。特に後半のキック、いつもより伸びてた」

「まひろも速かったよ。平泳ぎのキック、すごく静かで水面を切ってた」

リンの言葉に、まひろが照れながら微笑む。

……うん。自分でも、ちょっとだけ自信もてたかも」

そのとき、トレーニングスペースの端に澪がやってきた。

「お疲れさま、みんな」

「澪先輩!」

澪は、少しだけ頬を緩めながら言った。

……ありがとう。トレノのみんなが毎日がんばってくれるから、他の部員たちも変わって

きてる。最近では、塾帰りに家で筋トレしてるって話も聞くし、部活後に軽く体幹トレを

してから帰る先輩もいるの」

「ほんとに?」

ユキが目を丸くする。

「うん。『少しでも強くなりたい』って。こういう空気を作ってくれたのは、間違いなくみ

んなのおかげ。本当にありがとう」

言葉を交わす中で、5人は顔を見合わせた。

……なんか、照れるね」

さちがぽそりとつぶやく。

「でも、嬉しいよ。ちゃんと伝わってたって」

「これが……“広がってる” ってことなんだね」

まひろが小さく言い、それにハルが笑いながら拳を差し出す。

「よし、今日もやろう! いつも通り、全力で!」

「おーっ!」

こうして、筋トレの号令がかかる。

掛け声が響き、夕陽が差し込むなかで5人と澪の身体は静かに、そして力強く動いていた。

彼女たちの背には──つながる想いと、広がる未来へのレーンが、確かに刻まれはじめて

いた。


挿絵(By みてみん)

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