姉様
『違、何食べにいきたい?』
私とケイは同じタクシーに乗っていた。
『そうだね。何がいいかな。北川に囚われている間にちょっと痩せてしまったから、、少しお肉食べようかな。』
『お肉かあ。じゃあ、焼肉だね!』
『焼肉いいね。何年ぶりだろ?』
私は引きこもりだった。
焼肉なんて数年単位で食べてない。
『お肉食べるとさ元気でるよね。』
『うん。私らにさ、足りないのは多幸感。』
『そうだね、多幸感必要。』
少し車内が静かになる。
『お客さん?そろそろ着きますが?』
『あ、うん、運転手さんありがとう。』
『どのへんにしますかい?』
『そうね。あ、そこでいいわ。』
賑やかな歓楽街。
上野のアメ横が近い。
『美味い焼肉屋があるんだよね。』
『へえ、、、よく行ってたの?』
『まあ、、この辺は職場が近かったからさ。』
『そうなんだ。』
『お姉さん!お姉さん!どうですかい?イケメンくん、足りてるぅ!?』
客引きか。
参ったな。
こういうのは慣れてない。
『あれえ?ケイさんじゃないですかぁ?おひさっーす!』
『ああ、、あんたか。元気してる?』
『またあ、店来てくださいよ!ケイさんのおかげで店舗増えたんすから!』
『うん、また来るよ。』
長髪の派手なスーツを着た客引きは去っていった。
『ああ。びっくりさせたよね。』
『ああ、いや、うん。』
『アタシね、動画配信した金でね。ちょいと投資みたいなことしててね。風俗や飲食やなんやらかんやら。まあ、ほぼリターンはないけど。』
『そうなんだ。』
『動画配信とかしてるとさ。私の生い立ちに共感する子もいてね。会いに来てくれる子もさ。親から虐待受けたりしてね。でも自分の人生は自分のものだってさ、そういう気概を持ってくれてる子もいるからさ。まあ、たまたま飲食や風俗が多いけど、、、』
『そうなんだ。』
『今日行く焼肉屋もそんな感じ。』
そうこうしていると焼肉屋につく。
『いらっしゃい!ああ!ケイさんじゃないすか!元気ですかい?』
『うん。なんとかやってるよ。』
『ケイさんがいなかった数年間で自分もなんとか店を3つに増やせましたよ!』
『それは良かった!』
『ささ、どうぞ。』
威勢のいい若い男性は私たちを奥座敷へと通す。
『そういや、ミネさん元気ですかい?』
『ああ、、まあ元気よ。』
『ミネさんとも来てくださあい!』
『うん。いずれね。タン塩もらえる?』
『はい!タン塩10人前!』
『じゅ、10人前、、、?』
『たくさん食べたいんでしょ?』
『そうだけども、、』
『お金の心配はいらないわ。店主の奢りみたいだからさ。』
『うん、、ねえケイ?』
『なあに?』
沈黙。
肉を焼くための機器だけがパチパチいっている。
聞いていいのか。
『どうしたの?』
『いや、、、、』
『何よ?今更。死地を共に生き抜いた中じゃない。』
『うん、、、それじゃあ、、、』
私は生唾を飲み込む。
『ミネは今日、どうしてきてないの?』




