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かつての仲間に弔いの花束を

首都高から見えるビルが懐かしい。

まるで世界が動いているかのような速さで私の前からビルが次から次へと

消えては現れを繰り返す。


隣には鼻歌、車内にはムーディなジャズが流れている。


「違ちゃん、車は久々かな?」


「そうですね、、何年かは地下世界で剣や槍を振り回すような世界にいましたから、、」


「ずいぶんと物騒な世界にいたもんだね。。」


「それが六村の復讐だったんだと思います。」


「ふむ。ところで六村はどうして地下世界なんて・・・?」


「復讐ですよ。奥さんが殺されたんです。」


「奥さんも売春に関わっていたということ?」


「そのようですね。まあ・・・・でもよくわからないまま巻き込まれていたみたいですが・・・」


「そう・・・なんだ。奥さんのお腹には子どもがいたみたいで・・・・」


「その子どもがまさかね。」


「私もそれはまさかと思っていました。でも・・・どうして・・・」



六村弥生はこの世に生を受けなかったはずなのだ。

なのに生きていて、スレイブユアセルフの世界の案内役をやらされていた。

でも意識はないまま。



「そろそろ着くね。」

「スレイブユアセルフ社の家宅捜査は・・・・?」


「もう何回もしているけどさ・・・・六村の手がかりはないよ。彼はいったいどこへ行ったのだろうね。」


「それを探すのが山岸さんの仕事では?」



唐突に言葉の凪が訪れた。

しまった。

またやってしまった。



思ったことをストレートに伝えて失敗してきたというのに。




「はは・・・・手厳しいね。だけど、今回実際の被害者の方がこうやって捜査協力してくれるから

心強いよ。」



「私は何も知らないですが・・・・」


「そんなことないさ。実際の地下世界にいた人だからね。」




気が付いたら周りは木々に囲まれている山中にいた。


「ここがスレイブユアセルフ社さ。」


「ずいぶんと小さな建物ですね。」


「実際の開発はまた別会社に委託していたみたいだよ。」


「そっちでは六村の足取りはおえないのですか?」


「そっちの会社はね、本当にただゲームを開発して運営していただけ。六村は隠れ蓑にして

リストに載っている容疑者らの子どもをさらっていた。」


「でもここは・・・・」


「そうだね。地下世界があった、宮城県とは程遠い場所だね。山梨県は道志村。」




ここに六村は会社を設立した。

なぜ?



「あんまり意味はないと思うんだよね。たぶん、ここはね・・・・」



山岸警部はドアを開ける。


開けるとそこは何個か部屋があった。

一見するとただの共同住宅のようだ。



「生活感がありますね・・・」


「だろ?そりゃここはね。人さらいをするための人員をここに住まわせていたのだからね。」


「ああ・・・・・」



「全国津々浦々、買春をやった人間はいるわけだからまあなんとなく人気がなくて、

でも車があれば動きやすいこの辺に作ったというわけだ。」


「スレイブユアセルフ社って。。。。。」



「表向きは人材派遣会社ということになっているよ。どうやって費用を捻出していたのだろうって

感じだけど・・・・おそらく人材派遣業を営みながら、派遣先に困った人材を人さらいにあててたんだろうけどね・・・・」



山岸警部は階段をあがる。

ついていく。



2階にはひときわ大きな書斎があった。


「ここにね、、派遣先、まあつまり働き先のリストがあるんだけどどれもこれもまあ実態のないものばかりだよ。

人材派遣業としてもかなり違法なことをやっていたみたいだね。派遣先は調べたところすべてペーパーカンパニーだよ。」


「それは・・・どういう・・・・?」


「人さらいをするにも金がかかる。たださらう対象はかつての犯罪者。だとしたら?」


「脅迫・・・」


「そうだよ。例えば違ちゃんのお父さんも多額の金を支払って君をさらってもらったんだろう。

口止め料だよ。それが人件費になる。」


「よくそんなのでばれなかったですね。。人さらいしている人が暴露してしまえばスレイブユアセルフ社の

実態なんて・・・・」



「そう。そこが大きな疑問なんだ。行方不明者が多数いる。しかもみな、調べるとスレイブユアセルフ社に

派遣登録していたんだ。これはどういうことなんだろうねえ・・・」



「あ・・・・・まさか。」


「うん?何か知っているのかな・・・?」


「六村には護衛兵がいたんです。地下世界では警邏兵と呼ばれてましたが・・・・」


「なるほどね。こういう推理が成り立つね。スレイブユアセルフ社で人さらいをした人材は

さらに多額の金を積まれて、六村の警邏兵として雇われる。」


「ああ・・・・」


「スレイブユアセルフのゲーム自体はヒットコンテンツだからその売り上げを元手にして

地下世界を作り警邏兵を雇っていたのだろうね。」




そういうことか。

ただぶっちゃけどうでもいい。

ただ山岸さんにとってはそういうところも捜査対象なのだろう。


「うーん、そしたら地下世界を調べたら白骨死体とか大量に出てきそうだなあ・・・・・」


「あの!!六村の娘・・・・六村弥生はどうして生きていたんですか??」


「そうそれも君に捜査を依頼した理由にある。供述によると六村の奥さんとお腹の子供は死んでいるはずだ。

でも生きている。これはどういうことなんだろうねえ・・・これもまた仮説だけどね。お腹の子供は

死にかけて出てきたんじゃないかと思ってね。」


「死にかけて・・・・・」


「そう。六村弥生は植物人間状態だ。だけどなんとかVRゲーム上では意識を保てていた。

植物人間というか。。。。生まれてくるときに何か障害を負った可能性がある。さて・・・・

障害を負ったとしてもなんとか一命をとりとめながら今日まで生きている。これはどういうことか?」


「・・・・・なんででしょう。」


「キミらのスレイブユアセルフの中で医療従事者とかそういう人はいなかったかい?」


「医療従事者・・・・そんな人は・・・・」


いないはずだ。




「ふむ。。。。では君らもその事実を知らないのかもしれないね。もう1つ質問をするね。

君はケイだけが仲間だったかい?」


「それは・・・・どういう??」


「いやね。。。地下世界を捜査しているんだけどね・・・・お墓を見つけたんだよ。」


「お墓・・・・・・あ!!!」


「思い当たることがあるのかな??」



「あります・・・・私らには仲間がいました。」


「ほう・・・・名前は・・・・」


「名前は北川・・・・北川ヨミ。」


「北川ヨミ。。。ふむ・・・・・ああ・・・これか!!!見てくれよ。たぶんこれだ!」




そこにはヨミがいた。

ただし、白衣を着て、ある病院の医師として名前が連ねてある。

「北川会病院の医師。現在は診療科を担当していない。」


「これは・・・どういう・・・?」


「彼女はどういう最後を・・・・_?」




私は山岸さんに話をした。

心をえぐられるような話で目元が揺れながら、手でそれをぬぐい話をした。


山岸さんはそれをただ黙ってうなずいて話を聞いてくれた。




「そうかい。そうかい。それはつらかったね。」


「はい・・・・ようやく私の罪が・・・・」


「うーん、確かに手をかけたのは君だが・・・・君に罪はないよ。おそらく。」


「え?」


「まああまりこういう事例がないけど。知らず知らずのうちに現実にいて殺しをさせられていたんだろう?

私も仕事だからね。一応上には報告するけど・・・・司法取引をしたとかなんとかで罪には問われないと

思うよ。」


「いえ・・・・罪になるならそれでいいんです。あれは確かに・・・・私は仲間に手をかけてしまったのですから。」


「でもありがとう。その告白で一つの捜査の糸口をつかんだ。えーっともしもし・・・山岸です。

ええ・・・・そうです。はい。そうです。ええ北川会病院に家宅捜査を・・・・」



警察に電話をしているのだろう。

しかし、たいして説明をしていないのに、ずいぶんと段取りというか話が早い。



「北川会病院の家宅捜査が決まったよ。これから東京に戻って明日の朝だ。

違ちゃんも同行するかい?」



私はどうしたら・・・・・

ヨミも売られた身とはいえ娘さんを殺してしまったのだ。


「大丈夫。君の身の安全は保障する。それも真実を知るのは怖いかい?」


「いえ・・・・行きます。私もこの事件の被害者ですから・・・・全貌を知りたいです。」


「うん。頼もしいね。君に頼んでよかったよ。」



私に頼んだ。

そうか。

私はこの世界でも役に立っているのかもしれない。


つい何年か前まではただの引きこもりゲーマーが

今や事件の解決の糸口になっているのだ。




まだこの世界も腐っていないのかもしれない。


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