表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/96

父の独白

父も母も厳格な公務員だ。


ただ今となっては、母はただ仕事を斡旋し、身分証明やまあなんだかんだ必要な時の保証人だ。



父は。




『なあ、違ちゃん。いいのか?』


『ええ構いません。』



そう、気にかけてくれるのは父の元部下の田山さんだ。





『何も、わざわざ君がやるケースではないよ。』


『わかってます。カウンセラーの規則からも外れると思いますが、、、これは決めたことなので。』




田山さんは公務員を辞したあと、

カウンセラー派遣の会社を立ち上げた。


私は母はあてにならなかったので、田山さんに無理を言った。





『引小森警視の御息女だから、、、まあ、違ちゃんとも付き合いは長いから無理いったけど、頼むよ?カウンセラーとして向き合って欲しい。』


『はい。お金もたんまりもらってますから。その辺はご安心を。』




父と向き合う。

父の罪と向き合う。

父と向き合えれば、捜査協力する。




元警視の実子が、スレイブユアセルフ事件の被害者なのだ。




そういった司法取引のような形で田山さんには無理いってもらった。





『違ちゃん、終わったら、少し休みなよ?うちのカウンセリングルームでカウンセリング受けてもいいからさ。』



『田山さん、お気遣いありがとうございます。』


『じゃあ、扉を開けて。』


『はいーーーー』





私はドアノブに手をかけた。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

『・・・・っ。』


『こんにちは、引小森さん。私、カウンセラーの引小森 違と申します。』


『・・・・。』



父は顔を顰めた。

刑務官にクレームの1つでも入れると思ったが、そこは勘付いたようだ。



『司法取引に応じたか、、、、』


『本日は、引小森さんの困り事や悩み事をお聞きしたいと思ってます。』


『なんでもいいんだな?』


『はい、なんでもお話しください。』



『はあ・・・・。』




私は顔がこわばっていたのだろうか。

父は一瞬、顔に手を当てたがこちらを見据えた。







『そうだな、、、出来の悪い娘の話でもしようか。』


『娘さんの話ですか。どんな娘さんなのですか?』


『娘はな、、、長年の不妊治療の末に生まれた待望の子どもだった。』


『不妊治療されてたんですね。』



知らなかった。




『だからな、生まれた日はとても、、感慨深いものがあった。』


『感慨深かったんですね。』



『そうだ。ただな、この娘がな。どうも人付き合いが苦手なようで、たびたび問題を起こしていた。』


『そうなんですね。』


『そうだ。その度に妻は学校に出向き、家では私が説教を垂れていた。娘の悩みに気づくことなくな。』


『娘さんも悩んでたんですね。』


ペンを握る力が少し強くなる。



『ただな、、、あまりにも多いから、、疲れてしまった。そんな時だ。海外出張に行ってな。』


『そうなんですね。それから?』




声は震えてないだろうか。



『部下がーーー売春行為に手を染めた。』



『部下が、、』



『そうだ。相手は腹の大きな妊婦だったと言っててな。』



『・・・・。ああそうなんですね。』


『部下はな、私に縋りついた。日本には腹の大きな妻と生まれてくる子どもがいる。今捕まるわけにはいかない。』


『・・・・ああ。』


『だから、、、』


『だから?』


『私は自暴自棄だったのかな。子どもは問題ばかり。妻はヒステリックになっていく。そんな家庭を望んだわけではない。だとしたら、、これから幸せになる彼の応援をしようとな。』



『自分を犠牲に、、、され、、、たんですね。』



喉の奥から吐き出したくなった言葉を引っ込める。


私は今カウンセラーだ。




『なんでこんな話をしたのだろうな。実刑が決まっていて、よもや何も残されてない私のことをすこしでも知って欲しいからかな。』




『ち、ちなみに今その部下は、、、、』


『そんなことを、カウンセラーの君に話す義理はない。誰にも話すつもりはないがな。いいのだ。私は結局、自分で引き受けた罪を娘になすりつけた。まあ、、厄介払いだな。私が、、冤罪だろうともはやウチは家族としては崩壊しているからな。』




ノックが聞こえる。


『カウンセリング終了です。』


『は、はい。わかりました。』



私はペン先をしまい、立ち上がった。



『本日はありがとうございました。』


『ふん。』




父は視線を合わせることなく去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ