私と小屋とクリームシチュー
『弥生様。次の市民です。』
『わかったわ。通しなさい。』
全身ローブの怪しげな市民が現れた。
『ローブを取りなさい。』
『・・・・。』
『聞こえないのかしら?取りなさい。』
何も反応がない。
右手を上げる。
モンスター落としの合図。
いつぶりだろうか。
モンスターになる市民。
こちらの指示に従わない市民は裁くしかないのだ。
警邏兵が取り囲む。
ローブの市民に触れようとした瞬間。
『な、なんだ!この煙は!』
『誰か!なんとかなさいな!』
煙は審判室を埋め尽くす。
何かが近づいてくる。
ローブの市民。
『ヨワ、迎えに来たよ。』
ヨワ?
私は弥生だ。
人違いだ。
しかしーーーー
『懐かしい。』
そんな感覚に襲われた。
目が覚めると見知らぬ場所にいた。
天井は木目。
丸太で作ったような部屋に、少し動くと軋むベッド。
『何の匂いかしら、、、、?』
何かを煮込むような匂い。
小麦粉が焼けるような匂い。
『何だろう?懐かしい。』
ベッドから起き上がる。
半開きのドアをゆっくり開ける。
黒髪のハーフアップの後ろ姿。
鍋を見下ろしながらかき混ぜる。
その隣ではオーブンだろうか?
パンが焼かれているのが見える。
『お目覚めかな?』
『あなたは?』
『私?私はタガエ。あなたのお世話をすることにしたわ。』
『は?私を誰だかわかってる?』
『うん。わかってる。』
『だったら、、、お父様が許さないわ!こんな誘拐なんて、、、、』
『お父様ね。』
『何が目的?あなたモンスターか何か?』
『目的かあ。』
ハーフアップの女は髪を下ろす。
『私はね、またあなたと過ごしたいから、、あなたをさらったの。』
『は?いいから、、警邏兵が直に来るわよ!!』
『警邏兵ね。』
女はシチューを皿に入れる。
『そんなところで立ってないで、、、ご飯、、、食べ、、、よ?』
『?あなた何なの?わかったわ!今になって怖くなったのね!はは!今なら許してあげるわ!』
シチューがゴトっと置かれる。
『ごめん、、、さ、、先食べてて、、、、』
女は出て行く。
『いったい何なのよ、、、』
席に座る。
シチューの横にあるスプーンをとり、シチューを口に運ぶ。
『懐かしい、、、、』
いつだろうか、決して豪華じゃないのに。
こんなに美味しいシチューを食べたのは。
台所を見る。
『クリームシチュー。』
そうかかれたカラフルな箱が置かれていた。
見たことのない箱だった。




