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この世界がある理由

そんな日々が続いた。

死ぬことすら許されない絶望。




喉が渇いた。

お腹が空いた。


こんな感覚は久しぶりだ。




時間の感覚はない。

しかし体の感覚では久々だ。




『全く、食事をやりに来ない?』


どういう事だろうか。





扉が開く。

そこにはいつものオールバックで

険しい表情のロックハートはいない。




『我が愛娘、、、いや、、その幻想を押し付けてしまったのだな。』



手枷と轡が外れる。


バサリと衣服が投げられる。

『着なさい。』


『は、へ?』


私は衣服を着る。


『この地下世界を作った理由を聞いてほしい、、』





今更こんな仕打ちをしてきた男の話など、聞く義理はあるのだろうか。



『ヨワ、、あなたを死なせたくなかった、、これは私のエゴでしかない。あなたは、、それほど眩しかったのだ。そうだな、、、あの温かな日々を思いださせてくれるくらいに、、、』







ポツリポツリとロックハートは語り始めた。














ロックハートなんて名前は、何というかスレイブユアセルフの世界観に合わせただけだった。





六村 心。

それが私の名前だ。



あれは、私がまだ海外で新興国の貧しい人々の支援をしていた時の話だ。




『ひどい生活だな、、、』

『ああ、なんとかしなくてはならない。』


いわゆるスラム。

寝どこは埃だらけの毛布。

足りない水と食事。


竹で組まれた粗末な小屋が立ち並ぶ地域。



内戦を終えたが、復興の目処がたたず、

強盗、窃盗、恐喝、殺人が絶たない地域だったか。




『ここで一旗揚げて、雇用を生み出そう。』

『ああ、、、』


俺は当時、金田という仕事のパートナーとこの地域に来た。


クラウドファンディングで集めた資金を元にアパレルの会社を作り、日本に売る。



金田は日本ではネットワークを作っており、販路はなんとかなりそうだった。




後は生産と品質管理。


ここが俺の仕事だ。

簡単な作業所を作り、現地の人間を雇った。


そこで出会ったのが、、




『ココロー!サンプル、できたよ!』


『ああ、ミーナ!さすがだ!』



淡い桃色の髪に、大きなサファイアの瞳。

目鼻立ちは整っていて、この作業場一の美女。

俺のパートナーだ。



『ミーナ、あんまりこん詰めるなよ、、もうすぐさ、、』


『ココロ、わかってる。』


『ああ。』


ミーナのお腹を撫でる。

新たな命を授かっていた。











『六村。このままだと資金がショートする。』


『え?』



金田とこの国で一番高い飲食店で食事をしていた時にそんなことを言われた。




『少し捌けなくなってきている。だからさ、新たにボランティアツアーとして工場で働くってのを旅行代理店と組んだんだよな。』


『ああ、、いいんじゃないか!今の国の現実も知ってもらえれば、、』


『よし、早速だが、来週から大学生が来ることになっている。』


『仕事が早いな。』













『これから1週間お世話になります!』




真面目そうな大学生らだ。

聞くと海外ボランティアサークルだそうだ。



俺は大学生らに満足してもらえるよう説明に励んだ。














『ココロ、、、少し相談があるの。』


『ミーナ?どうした?こんな時間に。』




ツアー客のスケジュール確認を深夜にしていた時だ。



『うん、なんかツアー客がね、その女性従業員に身体接触が多いんだって、、みんな怖がってる。』


『そうか。俺から注意しとくよ。』


ミーナの顔を見ることなく返事をした。

ミーナの顔を見ておけば事態は深刻なことに気づけたのかもしれない。




それより、俺はリピート客を増やす為のボランティアツアーの企画で頭がいっぱいだった。


そのくらい衣服の生産だけじゃ資金が回らなくなっていたのだ。










だけど、

それが悲劇への序章だった。

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