お姉様、大好き!
『ヨワ、、、』
『・・・何?ケイ。』
『ご飯は自分でなんとかするからさ、少し体休めたら?』
『ううん、ダメなの。労働だから。』
『そうか。大丈夫か?』
『私は大丈夫。ケイは?』
『うむ。実は結構疲れた。仮説があたってしまったからな。』
『仮説?』
シチューがコトコト煮込まれる音だけが
空間を彩る。
『そう。私はね、なんとなくここは現実なんじゃないかなって思ってね。ここに来たのもそれを探りたくて来た。』
『そうなんだ。ケイってすごいね。死ぬかもしれないのにさ。』
『決死だよ。だって私のお姉様の墓場がここにあるかもしれないからさ。』
『姉、、、お姉さん、スレイブユアセルフで、、、』
『そう。このゲームをやっていて。親に売り飛ばされた。私もそんな感じ。』
『・・・・・っ。聞いてもいいのかしら?』
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『お姉様!お姉様!見てくださいまし!テストで90点取れましたの!』
『あら!ケイすごいじゃない!』
お姉様は紫髪でいつもハーフアップで、全身紫のワンピースに身を包んでいた。
とてもスタイルもよく、憧れだった。
『お姉様、遊びましょ?お庭の花が綺麗よ!』
『そっかあ。』
ピンクのコスモスが咲いたお庭。
『おい!ケイまた!90点だったのか!この出来損ないがっ!!』
お姉様の部屋の襖があいて、あいつはやってきた。
『い、痛い!お父様!痛い!ごめんなさい!』
『ダメだ。100点を取らない奴はダメだ。地下室に行くぞ。』
『嫌あっ!』
『お父様。』
『なんだ?ミネ。』
お姉様に向ける視線は、鼻を伸ばしただらしない顔になる。
『私が、、代わりにお相手し、、しますから。ケイは離してくださいまし。』
『ふ、ふん。そうか。ケイ!次は100点取るんだぞ?ミネ、さあこっちにおいで。』
お姉様はこちらを一瞥もくれず、唇を噛みついて行く。
お姉様のいない部屋。
気がつけば、太陽は沈み月明かりだけが
部屋を照らしていた。
『お姉様!』
『ああ、ケイ戻ったわ。』
お姉様は何やら、戸棚を漁る。
『お姉様?』
『無いわ。』
『え?』
『はあ。明日学校休まないと、、、』
『お姉様明日は、全校集会で生徒会長のスピーチがあるのでは、、、?』
『副生徒会長に任せるわ。誰でもできるもの。』
『お姉様。今日も私がお背中流しますわ。』
『いい。今日は1人で入るわ。』
『そうですか。お姉様がそうおっしゃるなら。』
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『であるからにして、我が生徒会において次の決まりを順守すべきと思います。特に不順異性交遊は許されないものであり、、、』
『ケイちゃん。』
『なあに?』
『お姉ちゃん、今日休みなの?』
『うん、おやすみ。』
『そーなんだ。』
『病院行くって言ってた。』
『具合悪いんだ。』
『うん。』
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『ケイちゃん!大変。』
『なあに?』
『掲示板にお姉さんが!』
『え?』
掲示板に向かう。
『生徒会長スクープ!産婦人科から単独で出てきた!相手は誰か?』
『これ、、ケイちゃんのお姉ちゃんだよね?』
『うん。』
『誰としたんだろ、、、』
『知らない。』
『でも産婦人科から出てくるって。』
『知らない。』
『うん、そうだよね。ごめんね。』
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『ミネ!この恥知らずが!産婦人科は使用人に行かせろと言っただろ!来い!わからせてやる!家名に泥を塗りおって!!』
『お父様、、ごめんなさい。』
お姉様はまた、地下室に連れてかれた。
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『お姉様。おかえりなさい。』
『うん、ただ今。』
戸棚を漁る。
錠剤を取り出した。
『あ、、、』
薬の袋が落ちる。
産婦人科で処方されたものだ。
『ねえ、ケイ。』
『お姉様なんですか?』
『私が、生徒会長でなくなったとしたらどうする?』
『お姉様はお姉様です。私の愛するお姉様に変わりはありません。』
『そう。では、高校生でもなんでもなくなったら?』
『お姉様はどんな形をしていても、私の愛するお姉様です。』
『ふふ。嬉しい、、、』
『ああ、お姉様、、』
『今日は一緒に寝て。』
『お、ねえ、、さま。』
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『お姉様。今日も近くのパン屋から、パンの耳を仕入れてきましたの。』
『ふふ、、、砂糖で絡めると美味しいわね。』
『砂糖は、、、もうありませんの。』
『まあ、砂糖なんか無い方がこの子にはいいかもね。』
『おい!ミネ!貴様!また、ネットゲームで課金しおって!来い!』
『はい、お父様。』
『お姉様、、、』
お姉様のお腹は大きくなっていた。
そして、その日を境にお姉様のお姿は見えなくなっていた。
誰もいなくなったお姉様の部屋に残されたパソコンを見ると、『スレイブユアセルフ』という名前のゲームだけがそこにはあった。
お姉様はいない。
お姉様はランカーだった。
ログイン履歴はいなくなる前日。
『おい!ケイ!ああ!ムカムカする!地下室に来い!!』
『はい、お父様。』
私もお姉様と同じように家名を汚せば何かわかるかもしれない。
お父様がお姉様を厄介払いしたように。
『待っててね。お姉様。』
部屋を出る直前、見えたのは力強く咲き続けるコスモスだった。




