キミも私も人殺し
『あなた、ヨワでしょ?』
ピンク髪の妖精は肩をすくめて、ため息をつく。
『ヨワか、、、お父様があたしの代わりに娘と呼んでる女ね。残念だけど、私はヨワじゃないわ。』
『・・・・っ。』
『私は六村弥生。ロックハートの娘だったもの。』
『だったもの?』
『うん。ロックハートの娘ちゃんは実はもう死んでるの。』
『え、、、』
『私はロックハートの娘ちゃんの記憶をもとに作ったAIよ。』
『な、な、』
『今どきのAIはすごいよね。ディープランニングがすごいわ。お父様の記憶だけで、全て察してさ。』
『・・・・。』
『あら?なんでそんな悲しそうな顔なのかしら?ああ、娘なのになんでこんなところでこんな格好させられてるかって?ふふ、、それがヨワの存在のせいよ。』
弥生は拳を握りしめる。
『やっぱりね、、AIじゃダメみたい。人間らしさが足りない。お父様が語った私は、理想の娘すぎてね。弥生の良いところもダメなところもお父様は愛していてね。』
そう語る弥生は涙ぐんでいる。
『私のことよりも、私に似ているヨワを可愛がっている。』
『は?ヨワだってNPCじゃ、、、』
『はは、、、あなたおめでたいのね。まあいいわ。確かめなさいな。この世界がどう成り立っているか。』
弥生は涙を指で拭う。
『ヨワは完璧じゃないわ。その方が娘としてかわいい。お父様はそう思った、、、それだけよ。』
これもまたイベントなのか。
しかし、なんだろうか。
ロックハートの娘を名乗るAI。
ヨワは完璧じゃない。
この世界の秘密。
そんな久々のログインで。
私は自分自身が
人殺し
であることを知りたくもなかった。
ゲームでは、よく人が死ぬ。
クリアする為の障害として、敵を配置しその障害が死ぬことで先に進むことができるからだ。
ゲームだから、いいのか。
ゲームのキャラクターにもし、感情があったり、大切な家族がいたとしたら?
もし、あなたと対立していてもやむに止まれない理由で対立しているとしたら?
そのことを知っても剣で首を刎ねることはできるのか?
私は部屋で震えていた。
このゲームパットがもし、殺戮兵器の遠隔操作をするコントローラーだとしたら。
私は握り続けられるだろうか?
『嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!!』
私はゲームパットを放り投げた。
『違、聞くんだ!君は悪くない!!これは殺人に、、、当たらない!』
仲間の声が聞こえる。
『そ、そういうことじゃ、、、ないわよ、、だってだって今まで、あああ!!今だって!!!』
そう、私は知ってしまった。
剣を突き立てた相手が、、本当に私が救いたかった人。
その人は私を死んだ魚のようは目で、
恨むように
呪うように
『な、なんで、、わ、、わたし、、よ。た、、がえ・・・。』
死んだ。
ゲームだとしたらよかった。
ただのゲームだったらよかった。
罪に問われるとかではない。
虫ケラを潰すように、、
『死ねえ!』と言いながら、
殺した後は道具を落としてないか、掠奪し
『経験値がたまった。』と嬉々としながら、
真実を知らなかったらよかったのに。
『うえっ!うぇぇぇっ!!!』
赤く染まった手を吐瀉物で見えなくしたかった。
もう戻れない。
人を殺した。
人を殺したという自覚がないまま。
それでも、ゲームパットを握り続けなければならない。
でなければ、今度は私が向こう側に行くことになるから。




