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転落していくフラグが立ちました!

『はあ・・・』



こういう日は気を紛らわしたい。

結局、明けで病院を出たのは18時。




明日からは3連休だ。

オンコールの順番もまわってこない。



『こういう日は静かに飲むに限るわ。』



目の前の歓楽街を見つめる。




『お姉さん!飲んでいきませんか?』


金髪のアシンメトリーの男性。

ホストか。

馬鹿騒ぎしたい気分ではない。



こう、洒落たバーでじんわりと酔っていきたいのだ。





行きつけなんてものは作ってない。

歓楽街をふらふらと歩く。

何者でもない今に恍惚感を覚える。


『いらっしゃい!生ビール半額!』

『今なら5000円ぽっきり!』



あの白きコンクリートの建物とは違い、

活気がある。



何者でもないから何者かになるか自分で決められそうな私にとってのエデン。





ふと立ち止まる。

高そうな1点もののウィスキーをショーウィンドウに飾っている。

木彫りのドア。

スモークガラスで中の様子はわからない。





こんなアダルティな空間こそおあつらえむきでないか。





カランコロン。

ここちの良い来客を知らせる音。




『いらっしゃいませ。』


『1人で。』


『どうぞカウンターへ。』




カウンター席に座る。

『あれ?北川先生?』





座った瞬間。

先生。

嫌なワードだ。






私は今何者でもないのだ。

なんで先生なんて呼ばれないといけないのだ。





柏原拓人。

本来はこの人が働いているはずのシフトを

私が埋めた。




『ああ、、柏原先生』


あれ。

でもこの人あの、糞事務員と今日はデートじゃ。




『お1人ですか?』

『ええ、明けが長引いて、勤務終わりです。』

『ああ、それは大変だ。』

『柏原先生は?』

『ああ、突然ね、シフトが変わったって事務員の子から連絡がありましてね、、今の今までちょっと友人とで歩いてたんですが、、向こうが用があるからって、ここで1人で飲みはじめた感じです。』


彼女から連絡があったのか。

私に気まずいからか、突然のシフト変更という事にしたのだろう。



そんな見えすいた嘘。





『ああ、お邪魔でしたか?』


『いえ、別に。』

『ああならよかった。どうです?良ければご一緒しても?』

『はい、どうぞ。』

『良かった!ここは奢りますよ!』




すらっとしたスタイル。

サラサラとした髪。

程よい塩顔。


ちょっと疲れたのか、酔いは早くまわってきた。


















『先生?大丈夫ですか?』

『ごめんなさい、飲みすぎたみたい。』

『ご自宅はどちらで?』

『えっと、高幡不動です。』

『ああ京王線ですか、乗り過ごしても大変でしょうに。』

『そ、そうですね。』

『そしたら?』



柏原先生は、うずくまる私に顔を近づける。

『少し休んでから帰られた方がいいですね。』



柏原先生は甘いかおりがした。
















『明智くん。そろそろ勤務行かないと。』

『今日は当直ですから大丈夫ですよ。』

『まあ、、コール鳴ったらでいいんだろうけど。』

『先生、まだ先生といたいです。』

『ヨミって呼んで。』



ピロン。

携帯が鳴る。

画面を伏せないと。

『拓人さん』の文字。



『ヨミさん!』


明智くんは子犬のように私に絡みついてくる。

携帯なんか気にしないで、

目の前の子犬と戯れ合う。













『明智くん、そろそろ診察室入るわよ。』

『はい、先生。あの、明けはお暇ですか?』

『明け?ああ、うん、ちょっと用事があるの。』

『そうですか。』



子犬は耳が垂れる。

そんな子犬に口づけをした。

『明後日、当直楽しみにしてるから。』

『は、はい!』




診察室に入る。






『あー、疲れた。』

今日は定時で上がれそうだ。

携帯、携帯、、、


あれ・・・・?



当直室に置きっぱなしだったかな。






当直室を見る。

ないな。





『先生。』


『あら?明智くん。』


『診察室に携帯落ちてましたよ。』


『ああ、ありがとう。』




画面を見る。

あれ?

拓人さんからチャット来てたから通知あるはずなのに。

通知が消えてる。





『先生、お疲れ様でした。』

『明智くん、お疲れ様。』



明智くんは少し私を見つめる。

何か乾いたような目で。



そんなことより、今日は拓人さんと夜勤明けに飲む約束をしている。











思えば私はこの時気づくべきだった。

ここから私は、死んでいくから。

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