皇女殿下!?
『ヨワあ、ただいまー。』
勢いよくドアを開けるが、返事がない。
キッチンを見る。
火がついていないのを確認する。
いつもなら何かご飯を作っている設定のはずだ。
『様子がおかしいな。』
『なんだろう?』
疲れて寝ているのだろうか。
寝室を開ける。
ーーーいない。
部屋が荒れている様子は見られない。
『馬小屋かしら。』
私がこの世界で、最初に目を覚ました部屋だ。
『ヨワ?』
馬小屋を開ける。
手綱に繋がれているはずの馬がいない。
ヨワが馬に乗って逃げたのであろうか?
『ーーーーお前ら何してる?』
『うん?』
声を掛けてきたのは警邏兵だ。
『いや、この家主に用があって、、、』
『どういう関係だ?』
警邏兵は眉間に皺を寄せて、
こちらを睨むように見る。
『えっとーーー』
『ああ!私らね、この家主に金貸してたんですよ!取り立てに来たらいなくてーーーー』
『へ?』
私が間抜けな声を出すと、ケイが私の尻を叩いた。
『ひゃん!?』
警邏兵は顔を見合わせると含み笑いを浮かべた。
『うん?ああお前らはそういう関係か。しかし、ここのヨワとやらにも困ったもんだ。』
『お前、ヨワ様をそういうと、、』
『あ、、おほん!ヨワ様にも困ったもんだ。』
『ヨワさま?』
『なんだ?お前ら知らないのか。ロックハート総帥の皇女様を。ヨワ=アマリ第一皇女。ロックハート様のお子様だ。』
『へ?』
『全く、免罪符を使うと皇女様とはいえ厳罰に処さねばならないというのに。』
『しかし鎖を体に巻かれているからそんなに遠くにはいけまい。』
思考が追いつかない。
ヨワがロックハートの子ども?
『お前らも皇女様を見かけたらすぐに最寄りの警邏隊に連絡してくれ。』
そう言うと警邏兵は一枚の型紙の紙切れを渡してきた。
『違、、、大丈夫か?』
『ヨワがロックハートの手先?って、、、』
『違、事実を確認しよう。』
『そしたら、、ヨミが死んだのは、、、』
『違!ヨミは生きてる!ゲームだぞ!』
『でも!』
ヨワはこの世界で私を無条件に赦してくれた。
無条件に抱きしめて、
私の弱さを受け入れてくれて。
ゲームだからとか関係ない。
『違!ヨワを探そう!』
『・・・・無理。』
私はログアウトボタンを押した。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
薄暗い部屋。
パソコンモニターだけが、チカチカと私の顔を照らす。
飲みかけのコーラと食べかけのポテチをつまむ。
味がしない。
甘いのに。
しょっぱいのに。
味を感じない。
『なくなったか。』
手をだらりと脱力し、私はそのまま椅子にもたれかかる。
喉が乾く。
『コーラ飲もう、、、、』
力なく立ち上がる。
そのままゾンビのように体を揺らしながら部屋にある冷蔵庫の前に立つ。
『あれ?冷蔵庫、、部屋にあったかな?』
母さんが移動させたのだろうか。
私が一階に降りてこないようにするために。
現実に帰ると味方がいなく、
ただ親にぶら下がるだけの自分がいる。
厄介者なんだろう。
だから、スレイブユアセルフに居場所を求めた。
トップランカーになっても誰も振り向いてくれなかった。
だから地下世界に行った。
ヨワに出会い、ヨミやケイに出会い、居場所ができたような気がした。
でも、それはまぼろし、だった。




