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ヨワと同衾

『ヨワただ今。』



『あ、違ちゃんとヨミ、ケイ。もう終わったの?』


『いや、ちょっと疲れたから一晩だけここで休もうってなっただけ。』


『あ、そうなんだ!じゃあ夕飯、用意するね!』


『いや、いい。私とヨミはもう食ったからさ。』


『う、うん。違と2人でごゆっくりー。』



ヨミとケイは寝室へと向かっていってしまった。





『違ちゃんはまだ食べてないの?』



ヨワがじっとこちらを見る。



『ああ、食べてないよ。』


『2人がご飯食べてた時、違ちゃんは何をしてたの?』


『何って、、その、、なんでもいいだろ。』


『・・・まあいいか。すぐ出来るから待ってて。』



ヨワが動くと何かジャラリと音がした。




『・・・ヨワ?』


『なあに?違ちゃん?』



ヨワの瞳を見る。

心なしか輝きがくすんでいるように見えた。














『はい、召しあがれ!』


『いただきます。』



クリームシチューとフランスパンだ。

『・・・・美味しい。』


『でしょ?今日はちょっと鳥さんをたくさん使っているからね。鳥さんや牛さんの命に感謝だよ。』


『感謝・・・ね。』




シチューの暖かさが体の芯に染みる。

寒さが和らいでいくような感覚。



ガツガツと食べた。

『美味い、美味い、、美味い!!』


『あははは、違ちゃん、そんなに急がなくてもシチューやパンは逃げていかないよ?』



そう。

物は逃げていかない。

なんて楽なのだ。


そうだ。

ヨワだって、所詮NPCだ。

だから逃げない。




なんだか目の前が霞む。

今日のシチューは少ししょっぱい。




『違・・・ちゃん?泣いて・・・るの?』


『ああ!美味いなあ!おかわり!』



顔を伏せて、シチューの器だけ差し出す。



『あ、うん。違ちゃん。』


『な、何よ?』


『顔、洗っておいで?』





ジャラリと音を立ててヨワはキッチンへと向かった。

その音に紛れるように私は鼻水をすすった。












『違ちゃん、今日一緒のベッドで寝ようか?』


『え?いや、あの、、』



何これ?

地下世界のNPCは、サービス精神というか察しがすごい。



『2人がいる寝室の方がいい・・・かな?』



手をそっと握ってくる。

ああ、、、心音が高鳴る。

血液が一気に全身に駆け巡る。





『し、しょ、しょうがないわね。』


『ふふ、、懐かしいね。』


『ん?そ、そうだっけ、、へ、へへ。』






ああ。

鼻の下が伸びているに違いない。

でも、ヨワも顔を赤らめて手を頬に当てている。

やっぱり物やサービスはいい。

こうやって不快なものから私を遠ざけて、

快を与えてくれる素晴らしいものだ。








『違ちゃん、ちょっとあっちむいていて。』


『ああうん。』



大きめのベッドが1つ。

衣擦れの音。


ジャラリという金属音が混ざるのは気になる。





『わ、私も着替えよーと、、』



とはいえVRの着替えなんぞ一瞬だ。

寝込みを襲われてもいいよう、トラップを張る。


『えっと、除外はヨワとケイとヨミ、、と。』



トラップは発動対象を選べる。

ヨワとパーティは除外した。





『いいよ、違ちゃん。』


『ああうん。』



振り向く。

ヨワの格好は胸元が緩めのセーターにホットパンツのような格好だ。なんだか、意外と現代っぽい格好だ。




『このパジャマね、お気に入りなんだ。』


『そ、そうなんだ。』



胸元が緩いからか、チラチラと双丘が見える。




ただのNPCだ。

ただのNPC。

生の乙杯ではない。

ふー

ふー。




『違ちゃん?』


『わっ!何!?見てません!見てませんからっ!』


『え?ああっ!ご、ごめんね。ちょっと着古してるから、、ああでも違ちゃんも女の子だから別に大丈夫だよ。』


『あ、ああそうか。』



そう女同士。

何も問題ない。

問題なのは、私が両刀だという事だ。




『じゃあ、おやすみー。』


『ああうん、おやすみ。』



電気が消える。

ヨワの輪郭が月明かりに照らされる。

そのうち目がなれて、ヨワの綺麗な銀髪が反射して私の視界は煌めく。



世界もこんなに煌めいて暖かければいいのに。

初めて組んだパーティ。

やっぱりリアルの人間はダメだ。



私はどうしても自分の正しさばかりを相手に問うてしまう。自分の弱さなんて認めたくなくて。

でも、、初めてだったのだ。



助けて欲しければ声をあげてくれ。

そうしたらサポートすると。



ケイもヨミも己の企みがあってパーティを組んだのは事実だろう。でも、それでもだ。

こんな私と組んでくれて、、、















ふにゅ。


『なっ、、、』


『違ちゃん。辛かったね。話たくなったらいつでも話してね。』


ヨワが胸元に私を抱き寄せた。




『な、なんで、そんなこと、、』


『違ちゃん、今にも泣きだしそうだったから。今日は泣いて、寝て。スッキリしてね。』





月明かりが煌々と輝く。

見上げるとそれは水滴に反射してとても綺麗だった。



そんな輝かしい、月明かりの夜だった。

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