7ミオvsディノス
ー砂ぼこりがゆっくりと晴れていく。
ディノスは再び剣を構えたまま動かない。
ミオもまた、その場から一歩も踏み出さない。
互いに相手を分析していた。
カリン(ミオ!凄いわ。A級聖騎士とほぼ互角の規模の魔法じゃない。)
シエナ(よく観察しているわ。戦い慣れている。)
(だけどディノスはああ見えて、バカではないのよ…)
……。
ディノス(土属性か…意外だな。火力ゴリ押しでいくか、岩切剣で徹底的に削いでいくか…。)
ミオ(なかなか隙を見せませんね。戦闘となると先程までとはまるで別人。)
……。
ーそして
ミオの足元に大きな魔法陣が。
ミオ(炎がメインで風がサブって所でしょうか。)
すると大きな火柱が地面から
高く、高く、舞い上がる。
それを見越してミオは既に跳び上がっていた。
ーだが背後には風に乗ったディノスが。
すでに剣を振りかざしている。
ミオ(!!!!!)
ディノス「炎が陽動で、風に乗って斬るのがメインだ。」
(背後は取った。ここは空中。この距離なら間違いなく逃げられない。さぁ防御魔法を…)
ミオの背中に魔法陣が現れるー
ミオ『オキシペタラム』
ディノス(自分の背中に攻撃魔法だと!?)
ガッキーンーーーーー
ミオの背中から
体よりも大きな氷塊が現れた。
しかし、岩をも打ち砕く剣。
そのまま氷塊をー砕く。
ミオは思いっきり吹き飛ばされた。
「ミオーッ!」
カリンは手で口を覆う。
ドッゴーン!!
壁に激突する音が場内に鳴り響くー
シエナ(これ、防御魔法を使っていなければ打撲じゃ済まないわよ…)
ディノス「いいや、まだだ!」
ディノスは激突したミオめがけて
炎の風を突き放つ。
ーすると
炎の中から氷と岩の刃が無数に飛んで来た。
ディノスは飛んでくる刃を避ける。
ディノス「クソっ。やはり、何かしたな。」
炎の中から溶けた氷塊が。
そして中からミオが現れた。
しかし、だいぶフラフラになっている。
カリン「まさか、氷で全身を覆って防御を!?」
シエナ「直接のダメージは回避できたけど、衝撃はそれなりに受けたわね。」
ミオ「はぁ、はぁっ…。」
ディノス「なかなかいい判断だ。氷のまま、炎の攻撃もある程度は防御できたみたいだな。」
ミオ「はぁ…はぁ…この身をもって、アナタの重たい剣を体感しました。はぁ…」
「炎と風を組み合わせるという発想も見事です。」
「はぁ…はぁ…先ほどの私の失言、心より…謝罪…致します。」
「クロフィア家の者ではなく、一人の魔法使いとして。」
「アナタを認めます。ディノス様。」
ディノス !?
ディノスは目を大きく見開く。
(なんなんだよ…お子さまが………。)
ミオは杖を高く上げた。
すると周りに霧がたちこめる。
カリンは倒れそうなミオに駆け寄りたい気持ちをグッとこらえていた。
(ミオ……。)
次第に霧が場内を満たしてゆく。
シエナ(炎を相手に、一体何をするつもり…)
そして気温が急激に下がった。
ミオ「ですが、それでもアナタに負けるつもりは御座いません。」
ディノス「私からも褒めてやろう。A級聖騎士相手に、ここまで耐え忍んだ事を。」
「だがキミの能力は私との相性が最悪のようだ。」
「メイデス様もキミへ引導を渡すだろう。」
霧が晴れていくー。
すると、闘技場全体が大規模な氷の空間になっていた。
氷柱が至る所に伸びている。
カリン「こんな広範囲を氷で覆うなんて…!」
「子どものクレイドの量では普通はこんなこと出来ないわ。」
シエナ「寒いわ…。なんて大きさよ…。」
「とんでもない子ね。だけど属性をまるで理解してないわ。」
「氷で真正面から炎に挑むつもり?普通なら勝負にならないわ。」
ディノスは再び剣を構える。
そしてー
場内にディノスの魔法陣が無数に現れる。
それと同時に、
ミオ 『ラケナリア』
次の瞬間ーディノスの魔法陣から
炎が次々と吹き出してきた。
場内の氷が溶かされていくー
それと同時にミオの魔法が放たれる。
鋭く尖った氷柱が一斉にディノスに襲い掛かる。
ディノス「ふはは、この熱さの中で氷柱を飛ばしても、私の元までは到達出来ないぞ。」
しかし、鋭く尖ったその物体は
形、大きさ、速度を落とすことなく、ディノスを突き刺した。
グサッ、グサッ、グサッ ー!?
ディノス「なっ…これは…」
「ーーガラス…だと!?」
ディノスは体勢を崩す。
カリン「精製魔法だわ!!!!!」
カリンは、
リリアンのウェディングドレスを思い出す。
シエナ「あの子ったら、精製魔法も使えたの…!?」
シエナは驚きで目を見開く。
「場内を氷で埋め尽くし、飛んでくる物体を氷柱と思わせたのね…。」
(なんて…なんて…凄い、発想なの!)
ミオの戦いぶりに、シエナは呆れたように笑う。
もはや驚きではない。この少女ならやりかねないと、どこかで納得している自分がいた。
無数のガラスがディノスに突き刺さる。
それでもディノスは体勢を取り直し、
剣に力をこめる。
流血しながらも、歯を食いしばる。
ディノス「防御して……なるものか!」
すると、ディノスの体から突風が吹き、
飛んでくるガラスを蹴散らせた。
ミオ(無数の破片に対して、風を使って防御するとは、上手いです。)
しかし、突風はそのまま竜巻となった。
ゴォォォー
飛んでくる無数のガラスを
次々と抱え込み竜巻は大きくなる。
ミオ「これは………」
大きくなるに連れ、勢いが凄まじくなる。
「まずい!」
ミオは走りだした。
ディノス「いや、精製魔法とは驚いたよ。」
「だが、キミの作り出したこの尖ったガラス。この私が全て使わせて貰うよ。」
ディノスは笑った。
が、もはや必死だった。
大きく成長した竜巻はガラスや氷を全て吸い尽くしていく。
ゴォォォー。
凄まじい勢いだ。
会場に風が吹き荒れ、
カリンとシエナの髪が大きく乱れる。
目も開けていられない。
シルフィ「ピー!ピー!」
ーそして
ディノス『トルネードブラスト!!!』
竜巻の中心から炎が沸き、
激しく爆発した。
ドドーン!!
轟音と共に激しく砂ぼこりが舞う。
無数のガラス片が爆風に乗り、場内を駆け巡る。
ディノス「くくく…、この高温の爆風と集約された鋭いガラス達。」
「氷で防ぐ事はもはや不可能だ…逃げ場は…」
ディノスはハッ!とする。
「カ、カリン様ァ!!!」
砂ぼこりが徐々に晴れていくー
カリンとシエナのもとに駆け寄るディノス。
すると、
そこにはー
カリンとシエナを覆いながら防御魔法が発動されていた。
その中心にミオはいたー。
カリン「…………んっ、一体、これは。」
シエナ「な、何…この防御魔法、三層の膜で展開されている…凄い強度だわ…」
ミオ
「はぁっ…はぁっ…。」
「おケガは御座いませんか?カリン様。」
カリン「ミオ!!」
カリンはミオの姿に衝撃を受ける。
「私たちは無事よ。それよりもミオ、アナタの方が!!」
ミオはキズだらけになりながらも、
ニヤリと笑みを浮かべる。
ミオ「はぁ…はぁ…良かったです。」
シエナ「ちょっとーっ!ディノス!私たちまで巻き込んでるんじゃないわよっ!」
ディノスはわなわなと震えている。
ディノス「カ、カリン様、ご無事で良かった……。」
シエナ「ミオちゃんが私たちを守ってくれたわ。この分厚い防御魔法でね。」
「で、どうするつもりよ?ディノス。」
目の前に展開されている強固な防御魔法を見て
ディノスは剣を下ろす。
そして、ミオを真っ直ぐ見た。
「認めよう。私の負けだ。」
その目は、もはや子どもを見るものではなかった。
「ミオ、君は強い。私も君を認めよう。」
「一流の魔法使いとして。」
ミオは荒い呼吸を繰り返しながら、 ゆっくりと頭を下げる。
二人の間に流れていた敵意は、 いつの間にか消えていた。
あるのは、互いへの敬意だけ。
その光景を見つめながら、 カリンは静かに微笑んだ。




