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6聖騎士、ディノス・クロフィア

アルファリア教会本部には、

様々な施設が併設されている。



巨大な白亜の建物には、大聖堂、魔法学校、薬学研究所、闘技場、図書館、孤児院。



世界一の大きさを誇る大聖堂では

今日もアルバ教帝による朝のミサが行われていた。



沢山の修道者たちが、

教帝と共に祈りを捧げる大切な時間。



その時間、大聖堂のミサには参加をせず、

庭園の小さな礼拝堂で祈りを捧げる者がいた。



カリンとミオだ。



これからは毎朝一緒に、祈りの時間を迎えようと約束した二人。



朝日に照らされる女神メイデスの像。



ミオにとってはこの時間、この空間が

何物にも代えられない幸福であった。



その様子を隣にいるカリンは

愛おしく見つめ、微笑むのだった。




朝日に照らされなが、シルフィは羽ばたいた。






***






教会のロビーへ続く大階段。



石造りでありながら、細部には装飾があしらわれている。



そしてロビーの床には、全面にモザイク模様が施されている。



初めて教会本部へ足を踏み入れた者は、

必ず圧倒される。



カリンとミオが大階段を降りていると、



取巻きに囲まれた銀髪の青年がいた。

白銀の甲冑に法衣を被っている。

聖騎士である。



肩にかかる髪を結び、

褐色の肌で女性を魅了している。



彼の名はディノス・クロフィア。



ディノスはカリンに気付くと目を輝かせた。



「カリンさまーッ!!!」



取巻きを押しのけ、真っ直ぐに向かって来る。



カリン(げげ…。見つかったわ。)



カリンは小走りで逃げようとする。

が、すぐに捕まった。



ディノス「ご機嫌よう、カリン様。最近は朝のミサに顔を出されないので心配しておりました。」



ディノスは胸に手をあてお辞儀をする。



カリンを見た途端、女性達は軽く会釈をし、その場からいなくなってしまった。



カリン「こんにちは、ディノス様。東部全域での魔獣討伐、ご活躍のほどはよく耳にしていますよ。」



ディノスはカリンの細い手を取り、

優しく握る。



ディノス「あぁ。カリン様。」


「ルクセリア中を探したとしても、これほど美しいくきらめく赤色を私は他に知りません。」


「その吸い込まれるような水色の瞳は、まるで古の聖獣たちがまとっていた神秘のクレイドを思わせる。」




カリンは笑いながらも困っている。

(始まった…。)


…。



殺気を感じた…




ミオだ。




ミオ「聖騎士様であろう御方がカリン様に気安くお手を触れるとは………」



ミオの後ろにメラメラと燃えるものが見える。



カリン(あっ、まずい。)



ディノス「おぉ!これは、これは。最近噂されている、カリン様のお側を離れようとしないお子さまですね。」



ミオ「なッ…!!」



カリン「二人ともやめて下さい。」



カリンは静かに言い放つ。

笑顔だが、目だけは笑っていなかった。



ミオ ディノス 

(ぎくッ)



カリンは軽くため息をつき、

それぞれに手を向けた。



カリン「紹介しますね。この子は現在、私の護衛を担当してもらっているミオよ。」



ディノス「ご、護衛!?こんなに小さい子供が?ご冗談ですよね!?」



カリン「冗談ではございません。実力も確かです。」


「そして、こちらの聖騎士はディノス・クロフィア様。新貴族の方ですが、聖騎士として教会に幅広く貢献して頂いているのよ。」



ミオは不審な表情でこう聞いた。



ミオ「新貴族…なぜ政府の者が教会の聖騎士様になれるのですか…?」



ディノス「その呼び方はよしてくれ、領主様だ。大陸の東側を全てを治めている。」



ミオ「知っております。クロフィア公。現在治めているのは貴方のお兄さまですよね。貴方は領主様の弟というお立場を使って聖騎士様になられたのですか?」



ディノス「なんだと…」



カリンは苦笑いしながら首を横に振った。



「ミオ、違うわよ。確かにクロフィア公と、領内に本部を置く教会は長いお付き合いをさせていただいているわ。」


「でもね、ディノス様は実力で現在の立場にいらっしゃるのよ。」



カリンはディノスへ視線を向ける。



「現在、A級魔法使いよ。」



「A級……!?」



ミオは目を丸くし、驚いた。



カリン(ふふっ。驚いた顔かわいい。)



ミオ「A級はコネや家柄だけで容易に到達できるものではありません。……失礼いたしました。」



カリン「そうよ。領主様の弟さまで、A級魔法使い。それはそれは女性に大人気なのよ。今もたくさんの女性達に囲まれていたでしょ?」



カリンは丁寧に厄介ごとを遠ざける。



しかし、



ディノス「あぁあ、違うッ!」



ディノスは必死に否定する。



「カリン様。あの方たちはただの取巻きです。私が求めているのは、ただ一人。」



そう言って、カリンに近付く。



その間にミオが割って入る。



ミオ「だからといって、カリン様に触れることは許しません。」




ーカッカッカッ。

モザイク模様の床に、靴音が響く。



「あ〜ら、まだ懲りずにカリン様を狙っているのね。ディノス。」



艶のある大人びた声。

振り返ると、

ディノスと同じ聖騎士の格好をした女性。



巻き髪を揺らしながら、こちらへ歩いてきた。



ディノス「教帝になる前に婚姻を済ませなければならない決まりだ。」


「そして、カリン様に相応しい実力と身分を兼ね備えているのは、この私しかいない。」



「そう思わないか、シエナ?」



自信満々な物言いに、女性は呆れたようにため息をついた。



カリン「シエナさん、こんにちは。今日は珍しく、A級の方々に沢山お会いしますね。」



シエナ「こんにちは。カリン様。」



甲冑越しにも分かるほど、整ったボディライン。



シエナ「カリン様の護衛、ハズされちゃったから、わたし達。」



体を屈め、ミオに顔を近付ける。



シエナ「小っちゃなナイト様に、ね。」



色気の圧。



突然距離を詰められたミオは思わず後ずさる。



ミオ「あわわ…。」



カリン(シエナさん、相変わらず距離が近い。ミオが押されてるわ……。)



A級魔法使い、シエナ。



リリアンがスマートな出来る女性なら、



シエナは豊満な出来る女性といった所だ。




シエナ「ふふっ。なら勝負してみたらいいじゃない。」



全員!?!?!?



シエナ「愛しいカリン様の取り合いなら実力で見せつけないと、ってことよ。」



……………。



ディノス「冗談じゃない!お子さまだそ!何故A級であるこの私がー」



シエナ「あら、アナタが思っている以上の強さだと思うけど。この子。」


「カリン様には、常に聖騎士3名以上による護衛部隊が付けられていた。」


「それを1人で受け持つなんて。普通じゃないわ。」


「ね、カリン様。強いんでしょ?この子。」




シエナは髪を揺らしながらカリンに問う。



カリン

(ミオの素晴らしい魔法、確かにもう一度見てみたい。)


(だけど今はもう…私は…)



カリンは冷静に答えた。



カリン「駄目です。シエナさん。ミオは大きな戦闘をせずとも充分に私を護ってくれています。」


「そして今では、護衛以上の想いをミオに抱いております。」



ディノス「ちょちょちょ、何!それ?」



ディノスは戸惑い、

見るからに落ち込み始める。



カリン「ミオは友達です。私の一方的な想いですが。」



ミオの顔が赤く染まる。



カリンも少し照れたように頬を掻く。



シエナ「あらあら、そこまで関係が進んでいたのね。ふふ。」



カリン

「それに現在、対人練習は禁止となっております。」



シエナ「あら、禁止されているのはカリン様だけよ。」


「私たちを差し置いてカレド部隊と戦闘していたから。ねぇ?」



(ぎぐっ!)



苦笑いをするカリン。



カリン「そ、それは…その。」 



ミオはカリンを守るようにシエナの前に割って入る。



ミオ(カリン様は私を友達と呼んでくれました。

ーだからこそ。)



ミオ「分かりました。ディノス様と手合わせ致しましょう。」



カリン「ミオ!?」



ミオ

「カリン様。お友達という想い、私の心には深く刻んであります。」


「ですが、私はカリン様をお護りする者です。その想いに応えるには、私が私の役目を果たすしかありません。」



「ディノス様、」



ミオはディノスに指を突き立てる。



「私が勝負に勝ったら、今後、カリン様に安易に近付く事をやめて頂きます。」



ディノス「おいおい。いきなり極刑だな。

で、私が勝ったら君はどうするのさ。」



ミオ「カリン様の護衛の任を離れると…アルバ教帝に申し出ます…。」



カリン!?



「待って、待って、ミオ!」



カリンは止めに入る。



「絶対にダメよ!私の想いを受け止めてくれたじゃない!それで充分よ。」


「それに、クロフィア家とはこれからもお付き合いしていくのだし、ディノス様との交流は上手にかわしていけば、別に問題はないのよ。ミオがここまでやる必要はない!」




ディノス「なるほど。かわす事で私情ではなく、クロフィア家と教会の未来を優先なさるのですね。目の前に私がいてもなお冷静であろうとするそのお姿……。」



シエナ(その解釈はヤバいでしょ);



ミオ

「何も心配する事は御座いません。」



「必ず勝ちますから。」



ミオはカリンを安心させるように

ニコリと笑顔をみせた。



カリン(そういう顔、ずるいわ。)










***








訓練用の闘技場。



クレイドで作られた特別仕様の障壁により、ルクセリアで随一の強度を誇る。



真ん中にはミオとディノスの姿が。



ディノス「準備はいいかな…お子さま。」



そう言ってディノスは剣を抜く。



ミオ「はい。よろしくお願いします。」



ミオは杖を持つ。



ディノス「はっ。そんなワンドタイプで私に挑むのか?」



「聖騎士になれなかった、カレドの使う武器で。」



ミオ「ええ。充分です。剣は扱えませんから。」



ディノス「剣を使えてこそ、本物の魔法使いだ。」


「クレイドの魔法変換をそんな棒切れの媒体でやるとは。くくくっ。」





カリンとシエナは端でその様子を見守るのだった。




シエナ「ルールはシンプル。防御魔法を己の全身に展開した方が負けよ。」


「だからといって、大ケガをする前に必ず展開すること。」


「あまりにも危険と判断したら、私の魔法を使って防御させてもらうわ。」



「それでは始め!!」




カリンは心配そうにミオを見る。

だが同時に、ミオの戦う姿を見られることに少しだけ胸が高鳴っていた。




………。



………。




ヒュオー……。




そしてー




ディノスの剣がクラウドで光輝く。

その先から魔法陣が形成されていく。



ミオ(魔法陣が二つ。A級なら別属性を同時展開する事くらい容易いでしょう、やりますね。)



そして荒々しい炎の風が起こり、

勢いよくミオに襲い掛かる。



カリン「ミオ、危ない!!!」



ミオ『アリストロメリア』



ミオの前に巨大な岩の障壁が現れる。



その巨大な岩に炎の風は阻まれた。



ードゴォォン



瞬間、岩を突き抜ける剣。



ディノスは剣で岩を割り、

そのままミオに振り下ろすー



ーがいない。



そして背後から、



「炎の風は陽動。相手が障壁を作り、そこを剣で割り対象者ごと叩き潰す。良く出来た作戦です。」



ディノス「チィーー」



シエナ(ディノスの剣が岩切剣だと見抜いていたの!?)



カリン「なんて大きな岩を!!しかも陽動だと知りながら形成したのね。凄いわ!!」



ディノスは振り返り、

口元がわずかに吊り上がる。



ディノス 「なるほど。本当に強いんだね。」



ミオ 「あなたこそ。」



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