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1カリン・フェナード

ー白く、白く、

ーどこまでも真っ白な世界


そこに青髪の少女と赤髪の少女がいる。


赤髪の少女、カリンが話しだす。

「孤児院の訪問は元気を貰える。公務なら子供と過ごす時間が一番好きだわ私!」


青髪の少女「あなたはいつも元気よ」

と小さく微笑んだ。


儚げで哀しい顔をする青髪の少女。

いつの頃からだったか、少女とカリンはこうして一緒にいた。


そして白い世界に光がさす。

青い少女が薄っすらと消えていくー











「ん………」



朝だった。窓から青い鳥が声を鳴らす。

カリン「おはよう、シルフィ。」


カリンは体を起こし、窓から外を眺める。

巨大な白亜の教会が朝日に照らされている。


カリン「あの子また元気がなかったな…」


いつも起きた時は青髪の彼女の事を覚えている。


しかし徐々に忘れてしまう。


今も既に顔が消えかけて思い出せない。


カリン「………」


「よし、今日も始めよう!」




カリン・フェナード。現在17才。

赤い髪、水色の瞳。

女神メイデス様を信仰するアルファリア教会、その次期教帝になる予定の彼女。

今は教帝になる為に必要な活動をし学んでいく最中であった。


教会の教えを学び諭す事。

各国の要人達を覚え、時には会食にも参加する。

各地の教会支部の視察に孤児院訪問。

教帝の代理ではあるが時々謁見もやるように。



そして彼女の肩にはいつも青い鳥がいた。

名はシルフィ。

物心ついた時からずっと一緒にいる。

シルフィはカリンの言葉がわかる。

いつも側にいてくれる存在で、心強かった。





***




夕刻。

忙しくしてるカリンにとって、唯一の楽しみがあった。


教会本部にある訓練用の闘技場。


クレイドで作られた特別仕様の壁と天井。


そこにカリンと男の姿があった。


ヴォルトの仮面を被るその姿は、見るからに不気味で怪しい。


カリンは腰からヌンチャクを取り出した。

「行くわよッ!」


するとヌンチャクの鎖が赤いクレイドで長く長く伸び始めた。

そして先からクレイドによる赤い鎌が現れた。


とっさに魔法で防御を展開する男。

「…クッ…なんて勢いだよ…」


鎌を地面に刺し、高く跳ぶカリン。華奢な体を生かし、素早い身のこなし。


男は魔法で細かい氷を作り、尖らせると跳んでいるカリンに向けて飛ばす。


カリン「おぉっとぉー」

すぐさま鎖を短くしヌンチャクを回収。


今度はヌンチャクから鋭い剣の形をした赤いクレイドが。


ヌンチャクが鎌から双剣になった。


飛んでくる鋭い氷を跳ね返しながら地面に降り立つカリン。着地した勢いで男に向かって跳びはじめた。


男「双剣になったな……ならば、」


男は剣を構える。


勢いよく迫るカリン。


剣が交わるその時!!!






「対人戦闘練習は禁止となりました。」

「即刻中断するように。」


キリッとした女性の声。

二人は手を止め振り返る。


アシメショートの女性がこちらへやってくる。


カリンは息を切らしながら問いかける。

「なんでよ、リリアン。禁止って。」


リリアン

「アルバ様の決定です。」

「それに本来、カリン様と対人戦闘練習が出来るのは休暇前の聖騎士のみのはず。なぜカレド部隊の者と行っているのです?」


カリン「聖騎士は私との戦闘で手を抜くわ。次の教帝だからだと思うけど、少し腰が引けてるのがわかるもの。本当はすごく強いはずなのに…。」


リリアン「だからって暗躍、隠密部隊であるカレドの者を練習相手にしてはなりません。彼らは素性や技を安易に表に出してはならないのです。」

そして鋭い目で男を睨みつける。


男「怖ぇえー……俺処分すか?カリン様どうにかして下さいよ。」


カリン「処分なんかさせないわ。この者がカレド部隊の者だとは知らなかったんだから。」


リリアン、男(いやいや、無理がありすぎる;)


カリン「ならリリアン相手してよ。」


リリアン「私は薬学専門です。それに今はアルバ教帝の秘書。」


カリン「本当は魔法使えるくせに。強いの知ってるもん。」


ため息を吐くリリアン。


リリアン「いずれにしろ、教帝がカリン様への対人戦闘練習を禁止に致しましたので、ここでの戦闘自体が禁止となります。」


カリン「そんな。唯一の楽しみだったのに。」


リリアン「それから、アルバ教帝がカリン様をお呼びです。意見があるのなら是非そこで述べると良いでしょう。」


ハッ!?とするカリン。

カリン(お祖父様からの呼び出し…!?何か公務で粗相をしたっけ…それとも、最近教本を読んでない事がバレてしまっているのかも…)


歩き出すリリアン。

「参りましょう。カリン様。」



男「えーっと、俺は非番なんだ。これで帰っていいんだよな?」


リリアン「カリン様に落ち度があるのなら処分は下せません。どうぞお帰り下さい。」


カリン(さすがリリアン。話がわかる〜)


男「カリン様、あなたは戦闘向きだ。公務なんて勿体ないっすよ。」


リリアンが男を鋭く睨みつける。


が、


男はその場で消えていった。


カリンは複雑な表情でいた。






***






教帝の部屋の前。


カリンはそわそわしていた。

(ぅう…対人戦闘練習の件かな…それとも公務の事か、教本のことなのか…)


現アルファリア教帝、アルバの執務室。


リリアンが扉を開けると大きな部屋が広がる。


豪華だがシンプルな装飾。仕事をする上で最低限な装いを施された作りの部屋。


真ん中の机に赤茶色の髪に長い髭を生やした老人が書き物をしている。


アルバ教帝だった。


カリン「参りました、お祖父様。」


アルバ「対人戦闘練習の件はリリアンから聞いたな」


暗い表情をするカリン。


カリン「私は教帝になるにあたって必要な活動を最優先に日々を過ごしております。そのような中で、対人戦闘練習はスポーツと同じで私にとっての息抜きの場であります。」


黙って聞くアルバ。


カリン「それからお祖父様を含め私達フェナード家は高いクレイドを持っています。これだけ戦闘に特化しているのに、それを世界の最前線で生かさないのは勿体ない。」


リリアン(教帝になることを受け入れ、その為に日々を過ごされていても、これがカリン様の本音なのね。)



アルバは少し考え込んでから話し始める。

「そうか…」


アルバ「カリン、お前は強い。それは知っているぞ。クレイドも人並み以上。戦闘センスも良く、先を読む頭もある。」


カリンは褒められた事に動揺し照れる。

(お祖父様が私の戦闘を褒めてくれた。嬉しい。だけど教帝には相応しくないからやめさせるつもりなんだろうな…)


アルバ「だからお前にしか頼めない任務があるんじゃよ。」


リリアンが目を見開き、驚く。


カリンの顔がほころぶ。

「任務!?公務ではなく任務!?それはつまり教会本部を出て、外で活動する事をお許し頂けるという事でしょうか?」


「お褒め頂けたということは…つまり戦闘に携わることを許可頂けたということでしょうか?」


笑顔を見せウズウズするカリン。



ところが次の瞬間、顔が固まる。






アルバ「レイノルド•フェナードを強制的に連行させる事が教議会で決定された。見つけ次第、直ちに拘束し本部に連行するように。」



カリン「え……」






ーレイノルド・フェナード

カリンの父親。アルバの息子である。

本来、次期教帝になるはずの男であった。

10年前、教会本部でカリンが何者かに襲われる事件があった。

その事件の直後に失踪した。



カリンは動揺し声を震わせる。

「だって父さんはあの事件のせいで…犯人達を追っていなくなったんじゃ…」


カリンの脳裏に蘇る。



ー青髪の青年が血に染まり、その優しい腕に抱かれていた自分の姿を。



アルバ「教議会ではレイノルドがその事件の首謀者と結論付けた。現に最重要機密のクレイドがなくなっている。」


カリン!?

「父さんがあの事件の首謀者!?」


動揺するカリンを見て、リリアンが声を上げた。


「アルバ様、流石にそれはあんまりです。レイノルド様が娘のカリン様を襲ったと!?それにレイノルド様の連行をカリン様にさせるおつもりですか?」


アルバ「フェナードの強さはお前もわかっておろう?対抗出来るのはカリンしかおらん。」


10年前の記憶に震えるカリン。


傍へより寄り添うリリアン。


リリアン「あの事件はカリン様にとってとても辛い記憶です。ルノーさんを亡くし、父親まで行方不明になったのです。一番辛い時に側にいて欲しかったはずなのに」


アルバ「なら消えた理由を直接レイノルドに聞いてみる気はないか?」



カリンが顔を上げる。



アルバ「カリン、教議会が何と言おうと、たとえ最重要機密のクレイドをあの馬鹿が盗んでいたとしても、わしはレイノルドを、息子を信じている。あやつは意味の無い事はしない男だと。」


切ない顔をするカリン。

ー優しくて頼もしくてひょうきんな父の顔が浮かぶ。


アルバ「レイノルドの真相が分かれば10年前の真相も恐らくわかる…とワシは思う。」


カリンの頭に考えが巡る。

教会本部に侵入し、自分を襲った者

機密クレイドの喪失

そしてカリンを守り亡くなったルノー。


それと同時に、カリンは鋭い目付きになる。

(教帝に必要な活動を最優先にと諭してきたお祖父様が私を父さんの元へ赴かせるなんて。それだけ父さんを信じているから…それとも別の理由があるから?)


アルバは続ける。

「真相次第ではあるが、レイノルドが無実なら教会は不問にできる。」


カリンの心の中でまとまるものがあった。

震えも治まった。


カリン「10年前の真実…。私はずっと背けてきた。幼く力も無かったし、それに……大好きな人達がいなくなって悲しかったから。」


「教本を開ければメイデス様が寄り添ってくれた。そしてお祖父様からは教帝になる道を頂き、世界を照らす目標や夢が出来た。」


「………だけど、父さんに会いたい。」


リリアンは静かに見守る。


カリン「お祖父様、私行きます。」


決意が固まった。


カリン「ー父さんには聞きたい事がありすぎるわ。それに父さんと手合わせ出来るなんて……もうないと思っていたから。」


アルバは優しく微笑んだ。

「頼もしい返事が聞けて安心した。」



しかしリリアンが口を挟む

「お二人は本気なのですか?カリン様の気持ちは尊重します。ですが実際は危険です。」


アルバ「わしはな、カリンには教帝になる前に世界をもっと知る機会を与えたかった。」


リリアン「?」


カリン「世界?視察で世界中の支部に顔をだしてるわ。外交で出向く事もあるわ。」


アルバ「教会の施設や要人との会食だけで世界を知り得ていると本気で思っているのか?」


アルバは続ける

「見聞を広げよということじゃ。外交や謁見はもちろん、信仰と道徳の指導者になるということは世界を知らないと務まらない。」



カリン(………)

ごもっともだった。



アルバ「そして世界を周る過程で、己の目で見た人々を己の正義で守る事となろうものなら……交戦も咎めない。」


カリンは目を見開く。

(お祖父様が戦闘を許可している。やはり何か理由が…。)


アルバ「勿論、お前が教会の教えに背かないと信じているからじゃよ。」

優しく微笑むアルバ。


その言葉を聞きニッと笑みを浮かべるカリン。


アルバ「リリアン。わしの考えをわかって頂けただろうか?そしてこの子は強い。危険なら己で対処できる。」


呆れた顔のリリアン。

「ですが護衛は必要です。まさか一人で行かせるおつもりではないですよね。」

「隠密のカレド部隊の方が捜索には適しています。しかしカリン様は教帝に連なるお方。聖騎士のトップチームが適任かと。」





アルバ「護衛はこちらで用意してある。」





目を見開く二人。


カリン「えっ!?」


リリアン「早すぎです。」



アルバ「早くカリンに会いたがっていたからの。いずれ行動を共にさせようと画策していたのじゃよ。良い折じゃ。」









すると、部屋の奥から小柄で愛らしい少女が姿を現した。


栗色の髪の毛を後ろでひとつに編み込み、品のいいお辞儀をする。


「ミオと申します。カリン様、お側でお使えできること、この上ない喜びで御座います。」


アルバ「カリン、お前の護衛を務めるミオだ。」




キョトンとするカリン。

ー子供!?

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