2.
「どうしても、やるの?」
「どうしても、やるの!」
お母様は、ついに大きな溜息をついた。
お父様は、そんな私たちを面白そうに見ていた。
「──わかりました」
「!?」
「ただし、お父様の目の届く、道場の中だけよ。お外に行く時はきちんとしなさい。それにマナーやお勉強も疎かにしてはだめよ。あと……」
「わかりました! リーゼロッテは良い子でいますから!」
私は嬉しくなってお母様に抱き着いた。
「良かったなあ、リーゼ」
「あなたも! 怪我なんてさせたら承知しませんからね!?」
「はっはっは、怪我なんてしないほど、強く鍛えてやるさ」
「あなたねえ……」
嬉しそうなお父様に不安そうなお母様。
「お母様、お父様、ありがとう!!」
よかった、これで、計画を実行できるわ!!
+
あの後、ベッドの中で木剣に縋りつきながら、私は一生けんめい考えた。
思い出したこと……これからの事を思い出すというのも変な感じだけど。
一番に浮かぶのは、恐ろしい、大きい、男の人。
私は、彼の大魔法の贄として殺された。
その前……私は国で一番美しくて、王子様の婚約者だった。
でも、王子様は、運命のお相手を見つけて……私は、その人を殺そうとしたとして、追放された。
……なんでかしら、よく思い出せないわ。
気づいたら東の森の城にいたの。
あの男は、お父様に恩があるから、私を助けたと言ってたわ。
……本当は、魔法を使う道具に丁度良いと思ってたのでしょうけど。
このままもう一度、同じ事になるのかしら。私にはどうしようもないのかしら。
──そんなの嫌。
いい子にしてたのに。
お父様とお母様のために、お家のために、王子様のために、女の子らしく美しく淑やかにしていたのに。
結局、死んだのよ。道具として。
だったら、好きに、自由に生きたいわ。
そう思って、ぐっと木剣を抱きしめる腕に力を入れる。
信念に従って生きる、絵本の騎士さまのように……
「騎士」
私はベッドの脇机に置かれているお気に入りの絵本に手を伸ばした。
剣を抱えたままベッドに座り込んでパラパラとめくる。
──王様から、悪魔を倒して欲しいと頼まれ、騎士は愛馬と共に向かう。
悪魔の恐ろしい金色の目、大きな剣。
その、悪魔と対決する場面で思わず手が止まった。
何度も読んだはずなのに、ごくりと唾を飲み込んでページをめくる。
死闘の末悪魔を倒した騎士は攫われた姫を助けて王様の元へ戻る。
このお姫様は、騎士に助けてもらえたのだ。でも騎士が来なかったら、やっぱり殺されていたのかしら。
「私は、私を助けたいわ」
私はもう一度、ぎゅっと剣を抱きしめた。
+
「ありがとう、お母様! 私、りっぱな騎士になります!!」
「えっ!!??」
「騎士!?
あっはっはは! いいじゃないか! 王宮騎士団に席を用意できるよう、お父様も頑張るよ!」
そう言うと、お母様は目を丸くし、お父様は大笑いした。
……失礼ね。
とにかく、こうして私は、女の子なのに剣に打ち込むようになったのだ。




