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死に戻り令嬢は自由のために剣を取るが、魔王になるはずの男が過保護  作者: ru


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3/5

3.


 10歳になった。


 私が剣術を習い始めて3年目に入ろうとしていた。


 母もあまりうるさくない。まあ、女の子がやることについては「前回」で履修済みだ。母はあまりの出来の良さに驚いている。


 父はたまに、特別に稽古をつけてくれる。

 だが父も忙しい立場なので、私も普段は少年達にまざって訓練している。



 私は本気で騎士になる道を探していた。

 王宮騎士団は男性のみであるが、父上もいる。女ではダメとハッキリ言われているわけでもない。

 前例は無くても、実力をつければ、道は開けるかもしれない。


 そんな訳で、地味な基礎練を誰よりも真面目に、時間をたくさんかけて行った。私は一度大人を経験した身である。それが一番、実力がつく事だと知っていた。


 前の私が、地道に淑女たるために頑張っていた時間が、全て、体力作りと剣術の訓練の時間となった。


 その努力の結果。

 私は早々に、少年たちを相手に負ける事は無くなった。




 さて今日もいつもの訓練。


 小休憩中、木陰で集まっていた。


「みて、みて! ようやくできるようになったんだ!」

「わ! すごい!」


 アルの人差し指の爪先に、小さな火が揺れている。

 魔法だ。炎の魔術の基礎だ。

 私が覗き込むと、アルは得意げに胸を張った。


「父上が、このくらいはできるようにならないと、あとは継がせられないというから」


 魔術を使える人間は少ない。

 魔力は親から子に受け継がれることが多く、家業になっている家も少なくない。


 小さな炎を囲んでわいわいと騒いでいると、


「そんな事は家でやれよ。今は関係ないだろ」


 と、トムが面白くなさそうに鼻を鳴らした。


「ああ、ごめんね、出来ないのに面白く無いよねー」


 アルは挑発する。いつもは体の大きいトムにやられっぱなしなのだ。優位に立てて嬉しいのかもしれない。


「なんだと」


 二人の間に険悪な空気が流れる。

 魔力は生まれ持ってのものだ。……持たざる者の心境は複雑だ。


 どう止めようかと思っていると、向こうで教官が立ち上がったのが見えた。


「集合だ。行こ」


 皆で一斉に駆けだす。アルとトムもパッと振り返って走り出した。険悪なムードは消えた。

 教官は怖いのだ。くだらない喧嘩で怒られたくはない。


 教官の元へは私が一番についた。私は足も速い。


「稽古に入る前に、話がある」


 教官の銅鑼のような声。大きな教官の陰から、よく知った人が現れた。


「あ、父上」

「ここでは師匠と呼びなさい」

「はい、師匠」

 

 慌てて言い直すと満足そうに頷く。珍しいな、父上がいるなんて。


 このクラスは基礎のクラスだ。7歳から15歳までの子供が、身体作りを中心に剣術を習っている。


 上のクラスになると、騎士団への登竜門にもなっているから貴族も増えるが、このクラスは平民や兵士の子が中心だ。


 そんな少年のクラスに、道場主である父上が顔を出すことなど滅多にない。


 父上は家で見せるよりもずいぶん厳しい顔をして、私たちを見まわした。


「この中で一番腕が立つものは?」


「はい!」


 私は元気よく手を上げた。まっすぐ天をつく様に。


 このクラスで一番強いのは私なのだ。その証拠にほら、誰も何も言わない。


 しかし父上は、一瞬苦い顔をした。


「……他は」


 皆、ざわざわと顔を見合わせる。

 トムが皆につっつかれて手を上げた。気まずそうだ。私には勝てないからな。


「よし、二人手合わせしてみろ」


 そう言われて、トムは一瞬嫌そうな顔をしたが、断れるわけもない。

 私とトムは教官から木剣を受けとり、向かい合って一礼する。


「始め!」


 がんっと木剣がぶつかり、びりりと手が痺れた。

 トムは乱暴で、力が強い。真っ向から受け続けるのは悪手だ。


 二度三度打ち合う。

 隙を見せてやったら、そこにまんまと踏み込んできたので、手元を目掛けて木剣を払う。


「いでっ!!」


 ──カラン


 彼の剣は、あっけなく地面に落ちた。


「……参りました」


 トムは歳の割には思い切りも良いし、強いと思うが、正直なところ、物足りない。

 もっと、共に切磋琢磨できるような……ライバルが欲しいところだな。


「リーゼの勝ちか。……まさか本当に、こんなに強くなるとはなあ」


「私は騎士になるのです。こんなところで負けていられません」


 娘が強くなっていつも喜んでくれるのに、今日はどうも顔色が冴えない。


 父上は伸びてきた口ひげをちょいちょいとつまんで、小さくため息をついた。


「……しかたない、リーゼに頼むか。今度預かることになった、貴族のご子息が来ているのだが、お前、稽古をつけてやってくれないか」


「私が?」


「我儘で……大人の言うことを聞かん。平民に混じって、基礎訓練は嫌だと言って聞かない。

 ……鼻っぱしらを折ってやってほしい」


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