地元での色んな再会(明未の視点)
2029/12/21(土)
この日わたし達は、地元で行なわれる『氷の里クリスマスコンサート』のシークレットゲストとして出る為と、少し早い新年の挨拶をする為に、いつものルートでBerryen共々地元に帰省していた。ママの実家で挨拶を行ない、そこで楽しく心穏やかに一晩を過ごした。翌日会場に行き、サプライズゲストがわたし達だと知った瞬間、出演者、職員共々驚きを隠せなかった。けどそれと同じ位、蘭お姉ちゃん以外全員が驚いた。思わず蘭お姉ちゃんがママに尋ねると。
「あの『Lucas』ってバンドのメンバーの中に、以前ういっちをレ●プしようとした奴が居るんだよ」
「ああ、ママが高校時代に踵落とし喰らわせた相手っすか。じゃあパパと明未クンは何で驚いてるんすか?」
2人がそう話してる所から少し離れた場所で、Lucasのメンバーに、蒼絵お姉ちゃんが腕を組みながら仏頂面でこう切り出す。
「まさかお前らも出演するとは思わなかったぜ、菅平、佳苗、律子」
蒼絵お姉ちゃんの陰に隠れながら、怯えた表情で初おねえちゃんが「ほ、本当ですわ…。」と小声でそう言った。それに対して、菅平さんが
「そりゃこっちの台詞だ!、売れっ子バンドがこんな僻地の小イベントに出るなんて普通思わねえだろ?」
「てか折角こうして共演出来るんだから、仲良くやろうよ?」
と佳苗さんが馴れ馴れしくそう言うと、ざくろお姉ちゃんが。
「何を言っておるのだ!。貴様らがウィッチにした事を、もう忘れたのか?」
「先ずは謝るのが先やろ!」
「ハイハイゴメンゴメン。そんな事よりさ~!」
こんな感じであっちはバッチバチにやり合ってる一方、パパも同じ位驚いていた。それもそうだよ。この『Rice Climb』というバンド名は、直訳すると『米が登る』と言う意味だそうで…。
メンバーは、キーボードが金谷さん。以前わたしを庇ってママが国太と智枝に殴る蹴る等の暴行を受けてた際、家族全員で傍観してた人だからだ。そしてドラムの半田さんとギターの修蔵さんは、以前のわたしの家の玄関の中を国太、晃子と一緒に陣取り何時間も駄弁ってて、わたしが家に帰れない要因となったからだ。
ボーカルの愛理さんはパパと小さい頃からの幼馴染で、修蔵さんと12年前に結婚して、その2人の間に出来た娘の『奈留』ちゃんという、小学5年生の女の子がベース。というメンバー構成になっている。わたし達は上記の事情を、簡潔に蘭お姉ちゃんに事情を説明する横で、愛理さんがこう切り出す。
「久し振りね、桂…。」
「本当に久しぶりだよ。こうして言葉を交わすのは中学の時以来だよ。てかまさか、愛理さん達もバンドを組んで参加するとは思わなかったよ…。てか作詞作曲、アレンジは誰がやってるの?」
「作詞作曲はあたしよ。メインのアレンジは金谷がやってくれたわ」
「凄いね金谷君、正社員やりながらなんて。てか何のDAW使ってるの?」
「『|Fend a Studio』だ、これにした理由は主要DAWでは最も新しく、音も良くて安く、操作し易いからだ」
「後、ギターメーカーと提携してるから、それ系の音作りに強いからでもあるんだぜ!」
修蔵さんがそう言った後、半田さんが「んだぞおめえ!」と同調した後に、奈留ちゃんが戸惑いながらも、わたしにこう切り出す。
「あの、私音楽始めたのは、2年前の明未さん達のライブを観て感動したのがきっかけなんです!」
「有り難う。ていうか、あの時は見苦しいのを見せてしまったね、色んな意味で…。」
「そんな事無いよ!。めいみんはとってもカッコ良かったよ!」
「そうっすよ、見苦しいのは智枝っすよ!」
「智枝さんは、あたし達の代の子達も皆『敵に回さない方が良い』って言ってましたから…。」
「それ、ボクらの代でも言われてたっすよ!」
「流石智枝、悪名高い…。」
こんな感じで色々語り合った後、すかさずBerruenのメンバーが奈留ちゃんに歩み寄り、瑠実お姉ちゃんがこう切り出す。
「奈留ちゃん、ウチらを誘ってくれて有り難うな。昔からファンやったんやろ?、嬉しいわ」
「アタシもだ、今日対バン出来るの凄え楽しみにしてたんだぜ!」
「瑠実お姉様の言う通りですわ」
「くくく。今宵は忘れられない宴にしてやるぞ!」
「Berryenさん、まさか本当に来てくれるなんて、私、本当に嬉しいです!」
「ごめんね皆、ていうか本当に有り難う。奈留の一方的なお願いを聞いてくれて、桂達も…。」
「ははは、俺達の事は気にしなくて良いよ…。」
「奈留ちゃん、最高のライブにしよう、わたし頑張るから」
「ボクもっす!」
そんなこんなでリハーサルを行ない、Lucasが最初で、他のバンドも順番に演奏、最後にRice Climb、という事になった。その後にシークレットゲストとしてわたし達、そして大トリがBerryen、という順番に決まった。Lucasの時は拍手は漫ろだったが、そこから徐々に拍手が増えて行き、Rice Climbの時は大拍手となり、わたし達とBerryenの時は超大盛り上がりとなった。
ライブ終了後、お客さんからの投票で、最も票を集めたのはRice Climbで、最下位はLucasだった…。ちなみに、わたし達とBerryenは対象外、との事。結果発表終了後、出演者全員で、館内に併設されてるレストランを貸し切って、皆で美味しく楽しみながら打ち上げを行なった、Lucas以外は…。
嫉妬に狂うLucas(桂の視点)
俺はトイレで用を足し、ママ達の所に戻ろうとしたその時、出入り口付近から何やら物騒な声が聞こえて来た。
「嫌、離して!」
「奈留ちゃんの言う通りですわ!」
「うるせえ、いいからこっち来いお前ら!」
彼等の声と共に現れたのはなんと!、Lucasのメンバー全員に無理矢理連れて来られた初と奈留ちゃんだった。思わず俺は。
「う、初!、それに奈留ちゃん迄!。てかお前ら何やってんだ?」
「か、桂さん?」
「桂お兄様!」
「チッ、部外者が居たか。まあいい、こいつをボコボコにしてからこの2人をレ●プする迄だ。ヤルぞ皆!」
「おおよ!。てか俺、前々から初とヤってみたかったんだ!」
「なら俺は、奈留ちゃんに性の悦びを教えてあげようかな?」
「流石ロリコン。あたしがバッチリ撮影してあげるよ」
「そうだね律子。あたしは初達を撮影してるから」
俺は咄嗟に初を庇った、そして初は奈留ちゃんを抱きしめるように庇い出した。そんな俺を男性陣3人が一斉に殴る蹴るの暴行を加えて来て、あっという間にボロボロになった俺を、身長180センチはある成田が俺を羽交い絞めして来た。それを見て菅平がこう言い出す。
「つか何で現役音大生の俺らが最下位なんだよ?、納得行かねえよ!。頭に来たからこいつとヤッて憂さ晴らししてやる!。なあ南部」
「おおよ。つか大丈夫だよ奈留ちゃん、痛いのは最初だけだからね~♪」
こんな感じで、初と奈留ちゃんが毒牙に掛かろうとした正にその時、トイレの出入口から更に声が聞こえた。
「何やってんだお前ら?」
「大丈夫ですか、皆さん!」
「す、座木さん、古田さん…。」
「助けて下さい、彼等がわたくし達を無理矢理男子トイレに連れ込んでレ●プしようとして、桂お兄様がわたくし達を庇って下さって…。」
初がそう言うと、座木さんと古田さんが、あっという間に男性陣3人を倒した。残る佳苗と律子は、観念したようにその場で力無く項垂れ、その後すぐ警察が来て、Lucasのメンバーは連行された…。俺はすぐさま病院へ運ばれて治療を受け、皆が駆け付けてくれた。そんな中明未が、泣いてる奈留ちゃんをそっと優しく抱きしめながらこう切出す。
「良かった、奈留ちゃんがわたし達と同じ目に遭わずに済んで…。」
「ホントそうっすよね…。」
「桂お兄様、身を挺してわたくしを庇って下さり、本当に有り難う御座います」
「いや、俺は何もしてない。あいつらを倒したのは座木さんと古田さんだし…。」
「いいえ、桂お兄様が時間稼ぎをして下さらなければ、お2人が駆け付ける前に操を守り通せませんでしたわ。あびるお姉様と瑠実お姉様がどうして貴方を好きになったか解った気がしますわ」
「正に、嫉妬に狂うカス(クルーカス)だね~♪」
「桂お兄様、お礼と致しまして、口づけさせて下さい…。」
と言いながら俺の顔に自分の顔を近づけ、あろう事か全身怪我だらけで、おまけに病具を付けられて身動きの取れない俺に口づけをしようとしている。それを黙って見ているママ、一方で明未が慌てながら。
「だ、駄目だよ初お姉ちゃん!。不倫になるよ?」
「そうっすよ!。それこそ大好きなあびるお姉様を傷付ける事になるっすよ?」
蘭の言葉を聞いたからなのか?、唇では無く頬に口づけをした。頬を赤らめながらこう切り出す。
「これ位良ろしいですわよね?、せめてものお礼として…。」
初がそう言いながら後方に引くと、愛理さんが。
「桂、それに初ちゃん。奈留を全力で庇ってくれて、本当に有り難う。親としてお礼を言わせて貰うわ」
「有り難う御座います、桂さん、初さん。そうだママ、耳貸して」
奈留ちゃんが愛理さんに耳打ちしてる傍で、修蔵君が。
「もうこれからはお前の事をヅラ男とは呼ばねえ、これからは桂と呼ぶ事にすっからさ…。」
修蔵君がそう言い終えると、愛理さんと奈留ちゃんが俺に近付いて、なんと「有り難う」と言いながら愛理さんが俺の右の頬に、奈留ちゃんが左の頬に、それぞれチューして来た。それを見た修蔵君が慌ててこう切り出す。
「なっ!、何やってんだお前ら?」
「桂に、あたし達なりのお礼をしたのよパパ」
「あたし、デジタトゥさんとBerryenさんの事、もっとファンになっちゃったから!」
「前言撤回!、お前やっぱこれからも『ヅラ男』だ!、帰っぞ皆!」
「んだぞおめえ!」
「はいはいパパ…。」
「皆さん音楽活動頑張って下さい!」
「じゃあなヅラ男、しっかり怪我治せよ」
金谷君がそう言ってRice Climb達は病室を後にした…。その直後に現れたのはなんと!、父さんと母さんだった。母さんがこう切り出す。
「桂、あんた大丈夫なの?」
「久し振り、父さん、母さん。てか、命に別状は無い、って医者から言われたよ…。」
「そう、なら安心ね。それより薫ちゃん。あんた高校に行かないって本当なの?」
「『蘭』っす。てか行かないっすよボク」
「何考えてるの?、高校に行きなさい、世間の皆様に対して恥ずかしいでしょ!」
「母さん、病院の中で大声出すな」
「お父さん邪魔しないで!」
「わざわざそんな事言いに来たんすか?、息子の心配しに来たとかじゃなく」
「何言ってるの、命に別状ないんだから何も心配無いでしょ。それより薫ちゃんの将来の方が心配よ。あたしは薫ちゃんの為を想ってーー」
「帰れよ…。」
ママが小声でそう言った。思わず母さんが。
「今何って言ったの?」
「帰れっつったんだよ。病院まで来て息子の心配をするのかと思いきや、『薫、高校行け』だ?。ふざけんのもいい加減にしろ!」
「ちょっと何その言い方、年上に対して。それにあんた達、鶴牧家には顔を出したのにウチには何で来ないのよ?」
「おめえが『二度と来んな』っつったからだろーがよ!、もう忘れたのか?」
「だからって本当に来ない人がどこに居るの?。やっぱり瑠実ちゃんと結婚して欲しかったわ。それにこんな大怪我を何度もするなんて、桂を芸能界に行かせるべきじゃなかっーー」
「もう良い!、2人共帰ってくれ、てか帰れよ!。母さんの顔なんか見たくない!」
「何よ桂、あんた迄そんな言い方!」
「母さん、今日の所はもう帰ろう。桂、怪我しっかり治すんだぞ…。」
こうして、俺の両親は病室を出て行ったのを見て明未が。
「あ、相変わらずだったね、悦子さん…。」
「ごめんな皆…。」
「パパが謝る事無いっすよ…。」
「もし桂兄と結婚してたら、あの人がウチのお母さんになってたんやろな~…。」
「義理の、だがなルミナスよ…。」
「あれも一応、アタシの親戚なんだよな…。」
「そう、3親等だよ、蒼っちの場合」
「あびるお姉様の言う通りですわ…。」
こうして、色んな事があり過ぎた氷の里クリスマスライブは終わった…。
愛理のこれ迄の人生(愛理の視点)
2003/3/29(土)PM4:30
あたし旧姓、藤井愛理は、小学校に入る数日前、あたしはテレビでやっていたヒット曲を、幼馴染の桂の前で披露した後、こう言い出す。
「桂、あたし将来プロの歌手になってレコード会社からスカウトされて、沢山の人を幸せにするんだ!」
「凄~い愛理ちゃん!、頑張ってね、応援してるから!。俺今ハマってるアニメ、奇妙奇天烈百科事典と、始動戦士カンタムSEET!。面白くてカッコ良いし、プラモデル欲しいな~、ストライキ、イーデス、ジュエル、バストー、ブリッコ。牛ゴリラは良い人なのか悪い人なのかよく解んないや…。」
「桂は相変わらずだね~♪」
こんな感じで桂は当時やってたアニメについて熱く語っていた。しかしそれから程なくして、音楽業界が色んな意味で過酷な世界だという事を幼いながらも理解し、歌手の夢を早々に断念した。更にあたしと桂ではスペックに差があり過ぎて、あたしの友達と一緒に居ても浮いてる事に本人も徐々に気付いて行き、いつの間にか桂とはあまり遊ばなくなっていった…。
2010/7/26(月)PM1:00
それから坂沼中学校に入学後、あたしはバスケ部に入り、2年の時に3年に混ざってスタメンに選ばれた。同じような感じでスタメンになった男子、『榎森一太』と意気投合し、お互い勉強を教え合う内に、いつの間にか恋仲になり、夏休みに入ってすぐ、お互いに初めての…。
ちなみに余談だけど、同じ米登市内の『永遠中学校』で、鮫妻国太君も、同じく2年でスタメンになり、頭角を現していた。
2012/5/6(日)
一太とはそのまま交際し、地元の進学校、坂沼高校に無事合格し、2人共バスケ部に入った。桂もバスケ部に入った事を友人から聞いた時は驚いたし、それとなく様子を見ると、やはり虐められていた。そんな環境で3年間やり切れるか心配だった。まして性格が悪いと言われてる国太君と一緒だから尚更…。
2013/6月
そこから更に約1年後、一太が1コ下の女子の家から出る所を偶然見かけ、問い詰めたらなんと、浮気していたと白状し、そのまま別れた…。そのショックのせいか、1学期末テストの成績は2番で、主席にはなれなかった…。
2016/6月
それからすぐ位に、同学年バスケ部でハイスペックの『逢田茂義』に慰められて意気投合し、交際する事になり、お互いに無事大学にも合格したが、大学2年の時、一太同様に後輩の女子と浮気してる事を知り、別れた…。
2018/11月
それからすぐ位に、1コ上のハイスペック大学生『佐渡慶吾』に慰められて意気投合し、交際する事になり、佐渡は無事大手企業に就職出来て、あたしも就活の為に仙台に来ていた時、ホテルから出て来た佐渡と知らない女性を見掛けて問い詰めると、やはり浮気していたので、そのまま別れた…。
その約1ヶ月後、大学最後の冬休みに同じ中学の同級生だった修蔵と再会し、佐渡が浮気していた事を話すと、優しく慰められて意気投合し、交際する事になった。それから更に約2ヶ月後、妊娠している事を知り、内定を得ていた仙台市内の大手企業の入社を辞退し、既に正社員として会社の信頼を得ていて、結構良いお給料を頂いてる修蔵と結婚し、同年9月24日に奈留が、その2年後の10月4日に繁が生まれた。
2028/12月
子育てが一段落してから数年後、幼い頃から勉強や部活に支障をきたさない範囲で嗜んでいた歌、ギター、作詞作曲を、又少しずつやり出した。修蔵ことパパも、中学時代からバスケ部や仕事の傍らギターを弾いており、手先が元々器用な為、セミプロ級に上手かった。
折角だからバンドを組みたいと言うと、ドラマーとしてパパの紹介でクラブメイトだった半田と、キーボーディスとして、同じくクラブメイトで例のパンデミック中にDAWにハマって編曲も出来るようになっていた金谷と、丁度明未ちゃんに触発されて音楽を始めたい、と想っていた奈留にベースを勧め、この5人で地元愛を歌ったギターポップバンドのRice Climbを結成した。
2030/11/30(土)PM7:00
それから約2年後、今年も地元主催の『氷の里クリスマスライブ』が開催される事が話題に上がると、奈留がこう言い出す。
「ねえ、折角だからRice Climbとして出ようよ!」
「そうね、奈留もだいぶベース上手くなったし」
「そう言えばシークレットゲストに、メジャーアーティストが2組出るらしいよ?」
繁がそう言うと、奈留が目を輝かせて、こう言い出す。
「もしかして、デジタトゥとBerryenかなパパ?」
「そんな訳無いだろ?、こんな僻地の小さなイベントなんかに」
「特にデジタトゥは、地元で何度も危険な目に遭ってるから絶対出ないよ」
「それに、あの2組に出演依頼するとなると、相当高額な出演料を払わなきゃいけなくなるわ。そんな事したら氷の里ホールが潰れちゃうわ…。」
2030/12/1(日)PM12:00
「ママ、あたし夕べ、デジタトゥとBerryenのレコード会社に『出演して下さい』って言う趣旨のメールを送ったんだ!」
昼食時、奈留のその言葉に家族全員、青天の霹靂の如く驚いた。不意に繁がこう切り出す。
「何考えてんだよ姉ちゃん!、あの2組が出る訳無いだろ?」
「まして今回のイベントは原則ボランティアだから尚更よ!」
「ここに半田が居たら『んだぞおめえ!』って言われるぞ!」
「解んないよ、もしかしたら出てくれるかも知れないじゃん?」
「まあヅラ男は大のお人好しだから有り得るかも知れないけど、Berryenはどうかな…。」
「例え桂達が出たいと言っても、事務所側が猛反対するわよ。過去に地元で何度も危ない目に遭ってる訳だし、そういう訳だから諦めなさい…。」
そして氷の里クリスマスライブに出演し、デジタトゥとBerryenがシークレットゲストとして出演した事に驚かされたのと、まさか奈留がレ●プされそうになるという色々あったライブとなった…。翌日、昼食後に知らない電話番号から電話が掛かって来たので留守電を聞いたらなんと?、フォビドゥンレコードの秘書の桜庭さんという人からだったので、検索して調べたら本当にその会社からだったので、掛け直し、桜庭さんに繋いで頂いた。
「突然申し訳御座いません。先日のライブ動画を拝見させて頂き、社長が皆さんに大変興味をと関心を示されまして、是非とも皆さんとお話をさせて頂きたいそうなのですが、そちらにお伺いしても良ろしいでしょうか?。後、桂さんとあびるさんと桂亜さんをお連れしても大丈夫でしょうか?、急なお話で大変恐縮なのですが…。」
あまりにも急な申し出だったので、一瞬頭が真っ白になったが、すぐに冷静になり、翌週の日曜日は、丁度メンバー全員が予定が無かったので了承する旨を伝え、通話を終えた。あたしはすぐさま、他のメンバーにこの件を伝えると全員乗り気でOKし、当日に備えた。
2030/12/29(日)AM11:00
当日、半田と金谷が駆け付けてくれて、定刻約5分前に森田社長、桜庭さん、桂、あびるちゃん、桂亜ちゃん、そして何故か?、カオスミュージックの社長と秘書も同行して来た。全員揃って名刺と高級そうな菓子折りを渡しつつ、本題に移った。先ず、森田社長がこう切り出す。
「先週のライブ、とても素晴らしかったですよ皆さん。楽曲、パフォーマンス、共に申し分無い、充分プロレベルだ。特に奈留ちゃんはまだ小学5年生なのに、あんなに上手いなんて驚いたよ。単刀直入に言わせて貰います。是非とも、うちで一緒に頑張ってみませんか?」
「社長は皆さんに宣伝費1億円以上掛けてメジャーデビューさせる予定で、それだけの価値が皆さんにはある、と仰ってましたが…。」
思わぬ申し出に、金谷さんが驚きながら。
「それって、僕達がメジャーデビュー、って事ですか?」
「ホント?、凄いよママ達!」
「ママ、行こうぜメジャーへ!」
「んだぞおめえ!」
「凄いじゃないですか皆さん?。あーしらもBerryenもこっちから売り込み掛けたのに、会社側からスカウトされるなんて!」
「俺達はやり方が特殊だけどな、瑠実達も…。」
メジャーデビュー。その甘美な響きに皆すっかり舞い上がる中、あたしも舞い上がりそうになるのを何とかグッと堪えて、こう切り返す。
「ちなみに、どのような方法で私達を売り出して行くつもりですか?。先ずはそれを教えて頂かないと何とも…。」
「先日の事件が報道されてから、来年元旦に発売されるデジタトゥとBerryenの新曲のMVに絶賛と同情のコメントが溢れ返り、再生数も鰻登りです。と同時にネット上で、初と一緒に襲われそうになった奈留ちゃんにも興味が向けられ、特定しようとする輩も出始めている」
「いずれ特定されるならいっそ、今回の盛り上がりに便乗して記者会見を開き、奈留さんに被害者ぶって泣きながら世間に同情を求める。そして愛理さんにも『母親として彼等を許せない』という旨で世の奥様方の共感を得てCDを買って貰う、という作戦を社長はお考えです」
「つまり、奈留ちゃんが目的で俺達はおまけ、という事ですか?。納得行きませんよ!」
「それにそんな事をしたら益々危ない目に遭い兼ねません、奈留も繁も」
「俺の愛娘の奈留が、又あんな目に遭うなんて絶対反対だ!」
「んだぞおめえ!」
「それに理由は他にもあります。金谷も、半田も、そしてうちの旦那も正社員として働いてて、安定した収入を得て仕事にも慣れています。私達4人共もう34です、それを捨てて不安定な音楽業界に入るには、デメリットがあまりにも大き過ぎるからです。私達、今の暮らしに特に大きな不満は無いです。それにその作戦、多分上手く行かないかと思います」
「貴女、社長が一生懸命考えた作戦を!」
「落ち着くんだ桜庭…。なぜそう想うか、お聞かせ願えますか?」
「明未ちゃんが強●された事件、そして桂と瑠実ちゃんのスキャンダル。この2大インパクトに世間がすっかり慣れてしまった中、その作戦で奈留に同じ事をさせても、恐らく世間は『なんだ未遂かよ…。』てなるかと思います。そしてメジャーに行かない最大の理由、それは…。」
あたしは一呼吸置いて、そっと語り出す。
「芸能界に入るという事は私達、デジタトゥの後輩になる訳ですよね?。つまり桂に、さん付けして敬語を使わなくてはいけなくなる訳ですよね?。そんなの嫌です、例え公の場だけであっても…。」
愛理さんのあまりにもぶっ飛んだ理由に、金谷さん、半田さん、修蔵さんが口を揃えて「うん、確かに!」と言った。思わずパパが。
「えっ!、そんなに嫌?、公の場だけでも?」
「当たり前だ!、嫌に決まってんだろ!」
「んだぞおめえ!」
「国太なら速攻でブチギレてるぞ!」
「その光景、鮮明に想像出来ますよ…。」
とあびるちゃんが言う中、今度は宮本社長がこう切り出す。
「では我が社はどうですか?。契約金として、皆さん一人一人に1千万円を最初にお支払いしますよ?」
「なあママ、やっぱ行こうぜメジャーに」
「それに、ヅラ男も何だかんだ言ってもう2年やれてる訳だから、俺らならもっと上手くやれると思うぞ?」
「んだぞおめえ!」
「ママ、あたしなら大丈夫だよ、繁の事も守るし。それにこんなチャンス、もう来ないかも知れないよ?」
「お金の問題じゃないのよ奈留。あたしは自分で創った歌いたい世界観のを歌って、それを聴いて貰って喜んでもらえたら、それで充分幸せなの。プロになったら好きなように曲を作れなくなるわ。あたしはそっち系のプレッシャーには、どうやら弱いみたいだし…。それに売れなくなったら簡単に切り捨てられる世界よ、芸能界は。何より貴方達が又ああいう目に遭うかと想うと、不安で胸が張り裂けそうになるからよ。そういう訳なので、今回のお話はお見送りさせて頂きます…。」
丁重にお断りするあたし達に対して非常に残念がる社長達の中、あびるちゃんが不意にこう切り出す。
「そうだパパ!。折角だから昨日出来た新曲を、今ここに居る皆に聴いて貰ったら?、丁度社長も居るし」
「でも、録音データ持ってないぞ?、楽器も…。」
「愛理さん、アコギ貸して下さい。パパに今この場で弾き語りして貰いますから」
「ふざけるな!。ママのアコギに、ヅラ男の汚い手で触らせられる訳ねえだろ!」
「んだぞおめえ!」
「ええ?、貸してあげようよママ。それにもうあたし達、ほっぺにチューしちゃってるし」
「そうね、良いわよ。それに丁度、明日ギターメンテナンスしようと想ってた所だから…。」
「社長、良いですよね?」
「ああ、構わんぞ」
「何か凄い事になって来たな…。」
金谷がそう言う中、あたしはギターケースからアコギを出して桂に渡し、桂の即興弾き語りライブ兼、新曲お披露目会が急遽開催される事になった。耳にスッと入るメロディーに合う文字や言葉のお陰ですっかり聴き入ってしまった、他の皆も同じ感じだった。桂が曲を一通り歌い終え、こう切り出す。
「えっ!、この曲そんなに良かった?。それとも逆?」
「いや、曲は良かったんだけど、それより驚いたのが…。あんたがギター弾きながら歌える事の方に驚いたのよ、歌も普通に上手いし…。」
「えっ!、そこ~?」
「当たり前だ!、あの超不器用なヅラ男がギター弾き語り出来るなんて誰も思わねえよ!」
「んだぞおめえ!」
「だな。バスケ部時代も、3年間最後迄続けた割りにドリブル下手だったし」
「で、でも!、曲は凄く良いですよ。メロディーも凄くキャッチーで詞がとても心に響いて来て、あたしとても感動しました!」
「有り難う、奈留ちゃん。これでも最初はシンガーソングライター目指してたけど、俺そっちは向いてなかったみたいだし。てかごめんね、気ィ遣わせて…。」
「い、いえ、その代わりじゃないですけど…。」
奈留が桂に歩み寄ると、不意に両手の平を上に向けながら、こう切り出す。
「お金ちょーだいっ!、1万円」
「なっ!、何でそうなるの?」
「そりゃ良いや奈留、丁度もうすぐお正月だし。つかヅラ男、俺達にもくれよ?」
「んだぞおめえ!」
「だな、お前今沢山稼いでるだろ?」
「皆、そういう事言わないの!。桂が困ってるでしょ?」
「そんなにお金が欲しいなら、是非とも我が社からデビューしてみてはいかがでしょうか?」
「桜庭の言う通りです、そうすれば1万円どころじゃない額が入って来ますよ皆さん」
「でなければ、我が社と契約すれば、その場で皆さんに1千万円お支払いしますよ?」
「そしたら奈留ちゃん、美味しいお菓子や可愛い洋服い~っぱい買えるわよ~?」
「奈留を物で釣らないで下さい!、ていうかメジャーになんか絶対行きません!」
「そうですか、残念です。もし興味を持たれましたら、その時はご連絡下さい、我々はこれで失礼致します…。」
そう言って彼等6人は帰って行った。彼等を見送った後、パパがこう切り出す。
「ママ、本当に良かったのか?。俺達、ママが本気で行きたいなら会社辞めても良いんだぞ」
「んだぞおめえ…。」
「それは駄目よ絶対!。それに芸能界は裏で、ヤ●ザやもっと危ない人達と繋がってる、という噂もあるみたいだし、もし奈留と繁が彼等に狙われたら、庇い切れないわ。あたし達が半端な気持ちで足を突っ込んで良い世界じゃないわ…。」
「だな、Berryenは本気で音楽で生きたいと想ってる連中みたいだし、ヅラ男達が必死なのは、そうするしか生きられないからだろうし…。」
「金谷さん…。解ったよママ。あたしこれから、中学、高校で学校生活と両立しながらベースを練習して、それでもメジャーに行きたい気持ちが変わらなかったら、音楽業界を目指しても良い?」
「解ったわ奈留、その時はあたし達も応援するから…。」
こうして今回の騒動は、これで本当に幕を閉じた…。
ここ迄読んで下さり有り難う御座います、感謝御礼申し上げます。当初は26時間TVで99kmを完走して、その影響でCDがバカ売れして、そのご褒美に都立競技場でのライブを行なう所で終わる予定でしたが、色々話が浮かんでしまったので、もう少しだけ頑張って書きました。もし面白ければ★5つ、つまらなければ★1つを遠慮無く付けて頂けるととても有り難いです、宜しくお願い致します。




